2025年度決算・84兆2,226億円で6年連続の過去最高
こんなに取っているのに、まだ取るの?
答えは84兆円の「中身」と「行き先」にありました。
2025年度の国の税収は84兆2,226億円。6年連続の過去最高で、法人税はバブル期の記録を36年ぶりに更新しました(財務省・2026年7月3日発表)。
それなのに、負担増は止まりません。2026年4月からは防衛特別法人税・たばこ税の見直し・子ども・子育て支援金の徴収が始まり、2027年1月からは所得税額に1%を上乗せする防衛特別所得税が始まります。「こんなに取っているのに、なぜまだ取るのか」。この記事では、財務省の公表資料をもとに、税収が増えた「中身」と、増えた分の「行き先」を数えて、この疑問に答えます。
税収が増えた中身は「物価・円安・利益」
まず、84兆円はどうやって増えたのかです。2019年度の当初予算の税収は62兆4,950億円でしたから、およそ7年で約21兆円増えました。増えた主役は3つです。
- 消費税:税率は10%のまま変わっていないのに、税収は18.4兆円から26.0兆円へ。物価が上がれば、同じ買い物でも消費税額は自動的に増えます。
- 法人税:6年で約2倍。円安による輸出企業の採算改善と企業利益の拡大が押し上げ、36年ぶりにバブル期の記録を超えました。
- 所得税:賃上げと社会保険料の適用拡大で給与総額が増え、税収も増加。
つまり税収増の少なくない部分は、景気の実感を伴う「豊かになった分」ではなく、物価と円安で名目の金額が膨らんだ分です。あなたがスーパーで多く払った消費税も、この84兆円の中に入っています。
増えた21兆円の行き先——使う前に消えていた
次に行き先です。2019年度と2026年度の当初予算を並べると、増えた税収がどこへ行ったかが見えます。
| 歳出項目 | 2019年度 | 2026年度 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 国債費(借金の返済と利払い) | 23兆5,082億円 | 31兆2,758億円 | +7.8兆円 |
| 社会保障 | 34兆593億円 | 39兆559億円 | +5.0兆円 |
| 地方交付税 | 15兆9,850億円 | 20兆8,778億円 | +4.9兆円 |
| 防衛関係費 | 5兆2,574億円 | 8兆9,843億円 | +3.7兆円 |
この4項目だけで+21.4兆円。7年間で増えた税収21兆円は、金利・高齢化・地方・防衛で「使う前に」行き先が決まっていたことになります。新しいサービスや減税に回る前に、既存の請求書が先に膨らんでいる——これが「過去最高なのに足りない」の正体です。
国の予算を1万円に縮めてみる
2026年度当初予算(歳出122兆3,092億円)を1万円に縮めると、行き先はこうなります。
1万円に縮めた国の予算(2026年度・比例換算)
- 社会保障:3,190円
- 借金の返済と利払い(国債費):2,560円
- 地方への仕送り(地方交付税):1,710円
- 防衛:730円/公共事業:500円/文教・科学:490円
- そして歳入側では、2,420円が新しい借金(公債金29兆5,840億円)
1万円のうち2,560円を昔の借金の返済と利息に充てながら、2,420円の新しい借金をしている構図です。国債残高は2026年度末に1,145兆円に達する見通しで、金利上昇により利払い費は2026年度の13.0兆円から2029年度には21.6兆円へ増えると試算されています(財務省・後年度影響試算)。利払い費は、税収より速いペースで増えます。これが「税収が増えても増税の話が止まらない」最大の理由です。
「税の名前がない増税」が増えている
もうひとつの答えは、負担増の形です。2026〜2027年に始まる負担増を並べると、「増税」と呼ばれないものが目立ちます。
| 名前 | 内容 | 開始 |
|---|---|---|
| 子ども・子育て支援金 | 医療保険料に上乗せ(被用者0.23%・労使折半、2028年度に平均月450円程度へ) | 2026年4月 |
| 防衛特別法人税 | (基準法人税額−500万円)×4% | 2026年4月 |
| たばこ税の見直し | 加熱式の見直し(2026年4月)、2027〜2029年に各4月1本0.5円ずつ引き上げ | 2026年4月〜 |
| 防衛特別所得税 | 所得税額に1%上乗せ。復興特別所得税は2047年まで延長 | 2027年1月 |
「支援金」「特別税」「延長」——正面から「増税します」と言わない形の負担増が中心です。給与明細や納税通知の行が1つずつ増えていくため、家計からは全体像が見えにくくなっています。国民負担率(税+社会保障の対所得比)は2026年度見通しで45.7%。稼ぎのほぼ半分が、名前の違う「取られるお金」になっています。
一方で2027年4月からは、食料品の消費税を2年間1%に下げる減税(給付と合わせ年約5兆円規模)が始まる予定です。ただしその財源の手当てが必要になる以上、この5兆円も長い目で見ればどこかの負担として戻ってくる可能性が高い——これが取材で見えた率直な構図です。
よくある質問
Q. 税収が過去最高なら、減税できるのではないですか?
A. 単純にはできない構造です。増えた税収21兆円を上回るペースで、国債費・社会保障・地方交付税・防衛費が増えています。さらに毎年約30兆円の新規国債に依存したままなので、「余っているお金」はそもそも存在しません。減税を行う場合は、別の負担増か歳出削減か、さらなる借金のどれかで埋めることになります。
Q. 法人税が過去最高なら、企業がもっと払えばいいのでは?
A. 2026年4月から実際に防衛特別法人税という形で上乗せが始まります。ただし法人税収は景気と為替に大きく左右されるため、円高や景気後退で一気に減る不安定な財源でもあります。バブル期の記録を36年ぶりに超えた今の水準を「恒久的な財源」として当てにするのは危険、というのが財政当局の立場です。
Q. 国民負担率45.7%は世界的に高いのですか?
A. ヨーロッパの高福祉国(フランス・北欧など)は5〜6割台でさらに高く、アメリカは3割台で低め、日本はその中間です。問題は水準そのものより、日本では給付の多くが高齢者向けに偏り、現役世代が「払った実感に対して戻りが見えにくい」構造にあると言われます。
Q. 利払い費はなぜ急に増えるのですか?
A. 日銀の利上げで新しく発行・借り換えする国債の金利が上がっているためです。国債残高1,145兆円は毎年少しずつ借り換えられており、低金利時代に発行した国債が高い金利の国債に置き換わるたびに利払いが増えます。2026年度予算では想定金利3%が設定され、利払い費は2029年度に21.6兆円へ達する試算です。
Q. 食料品の消費税1%はいつからですか?
A. 政府方針では2027年4月から2年間、食料品(軽減税率対象品目)の消費税率を1%に引き下げる予定です(2026年7月30日表明・8月5日閣議決定)。給付とあわせて年約5兆円規模の家計支援になりますが、期限付きの措置であり、実施の詳細は今後の法改正で確定します。
まとめ
税収84兆円・6年連続過去最高の中身は、物価・円安・企業利益で名目額が膨らんだ分が大きく、家計の実感を伴う「豊かさ」とはずれがあります。そして増えた21兆円は、国債費+7.8兆円・社会保障+5.0兆円・地方交付税+4.9兆円・防衛+3.7兆円と、使う前に行き先が決まっていました。
さらに利払い費は税収より速く増え、負担増は「支援金」「特別税」「延長」という税の名前がない形で続きます。ニュースで「税収過去最高」の見出しを見たら、「中身は何で増えたのか」「行き先はどこか」をセットで見る——それがこの国の財政ニュースの正しい読み方です。
数字は財務省「税収に関する資料」「令和8年度予算のポイント」「後年度歳出・歳入への影響試算」、こども家庭庁資料、税制改正大綱など2026年8月時点の公表資料に基づきます。「1万円に縮めた予算」は当初予算の計数を比例換算し端数処理したものです。特定の政党・政策を支持または批判する記事ではありません。


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