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ラットはチョコを食べて「おいしい」と鳴く?40kHz逆U字の声とは
結論
- 福井大学などの研究チームが、ラットがチョコレートを食べている最中に、人には聞こえない超音波で特別な声を出していることを突き止めました。声の高さは約40kHzで、鳴いている途中で一度上がってから下がる「逆U字型」です。
- AI(機械学習)で鳴き声を分類すると、「チョコを待っている間の声」と「食べている最中の声」を約8割の精度で見分けられました。快感に関わるオピオイドの働きを薬で抑えると、この声は減りました。
- 鳴き声の意味を直接確かめたわけではありませんが、チームは「おいしい」という体験と結びついた声である可能性を示したとしています。ペットフードの満足度の評価などへの応用が期待されています。
論文(eNeuro、2026年)と大学の発表から。人が聞こえる音の上限は約20kHz。
ラットの鳴き声は3種類|22kHz・50kHz・新しい40kHz
ラットの声の多くは人の耳には届きません。人が聞き取れる音の上限は約20kHzで、ラットはそれより高い超音波で鳴きます。これまでわかっていた声と、今回見つかった声を並べると次のようになります(大学の発表資料)。
| 声の高さ | どんなときに出る? | 考えられている気持ち |
|---|---|---|
| 22kHz帯 | 恐怖や不快を感じたとき | ネガティブ(いやだ・こわい) |
| 50kHz帯 | 仲間と遊ぶとき、人にくすぐられたとき、おいしい物を期待しているとき | ポジティブ(うれしい・楽しい) |
| 40kHz帯・逆U字型(今回) | チョコを食べている最中 | 「おいしい」と結びついている可能性 |
福井大学ほか「ラットはチョコを食べながら「おいしい」と鳴いていた」(2026年9月7日)。
50kHz帯の声が「ごちそうを待っているとき」に増えることは知られていました。ところが、実際に食べている最中の声はほとんど調べられていませんでした。今回の研究はそこに注目したものです。
どんな実験?チョコを待つ10分と食べる10分
論文(eNeuro)によると、実験の流れは次のとおりです。
- 生後8週のオスのラットを2匹1組で飼い、ケージごと防音箱に入れて超音波マイクで録音しました。
- 最初の10分間はチョコなし(待っている時間)、次の10分間はミルクチョコレート(M&M’s)を約20g入れて食べさせ、それぞれの声を記録しました。
- 録音した声は、AIで超音波の鳴き声を自動検出するソフト「DeepSqueak」で拾い出し、声の長さ・高さ・高さの変化・大きさなど11項目を数値にしました。
- その数値をもとに、機械学習の一つであるロジスティック回帰で「待っている間の声」と「食べている最中の声」を分類しました。
実験全体で使ったラットは80匹(学習用20匹、確認用44匹、通常の餌との比較16匹)です。オス同士の組だけにしたのは、求愛行動やメスの周期の影響を避けるためと説明されています。
結果|AIは8割の精度で「食べている声」を見分けた
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 集めた声の数 | 待っている間 5,893回/食べている最中 2,016回(チョコを出した3回分の合計) |
| AIの分類の精度 | AUC 0.78、正解率 82.5%(ラベルをでたらめにすると AUC 0.51) |
| 「食べている声」と判定された代表例 | 平らな形(フラット)62%、逆U字型18% |
| オピオイドを抑える薬(ナロキソン) | チョコを食べても逆U字型の声が減った |
| 普通の餌(ペレット)との比較 | フラット型は同じくらい出たが、逆U字型はチョコのほうが多かった |
論文(eNeuro, 2026, DOI 10.1523/ENEURO.0356-25.2026)から当サイトが要約。
ポイントは最後の2つです。平らな形の40kHzの声は普通の餌でもチョコでも同じくらい出たので、「食べる動作」に伴う声と考えられます。一方、逆U字型はチョコのときに多く、しかも快感に関わるオピオイドの働きを抑える薬(ナロキソン)を注射すると減りました。そのため、単に噛む音や食べる動作ではなく、「おいしい」という快の体験と結びついている可能性がある、というのがチームの解釈です。
「おいしい」と言っていると証明されたわけではない
発表資料も論文も「可能性を示した」という書き方です。ラットに気持ちを聞くことはできないため、声と行動・薬の効き方の関係から推測しています。また実験はオスの2匹組だけで行われています。
何の役に立つ?ペットフードから食欲の病気まで
動物が「おいしい」と感じているかを客観的に測るのは、これまで簡単ではありませんでした。従来は口の動きを訓練した観察者が細かく見る方法などが使われてきました。
- ペットフード:チームの村田航志・福井大助教は、満足度の高いペットフードの開発に役立つ可能性があると話しています(共同通信)。
- 食欲の病気の研究:過食や拒食、味覚・嗅覚障害で食事の楽しみが失われるしくみの解明や、治療法の開発につながると期待されています。
- ほかの動物の声:機械学習で鳴き声を分類する手法は、ほかの動物やほかの場面の声にも応用できるとしています。
発表までの流れ
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2026年7月17日 | 論文が米国の神経科学誌「eNeuro」にオンライン掲載 |
| 2026年9月7日 | 福井大学・名古屋大学・奈良県立医科大学が研究成果を発表 |
| 2026年11月7日 | 共同通信が報道し、話題に |
ラットの鳴き声研究のよくある質問
Q. ラットは「おいしい」と鳴くのですか。
A. 福井大学などの研究で、ラットがチョコレートを食べている最中に約40kHzの「逆U字型」の超音波の声を多く出すことがわかりました。快感に関わるオピオイドを抑える薬で減ったため、「おいしい」という体験と結びついている可能性があるとされています。
Q. ラットの鳴き声は人に聞こえますか。
A. 今回の声は聞こえません。人が聞き取れる音の上限は約20kHzで、ラットの22kHz帯・50kHz帯・40kHz帯の声はいずれも超音波です。
Q. AIは何をしたのですか。
A. 録音した声を自動で検出し、長さや高さなど11項目を数値にして、待っている間の声と食べている最中の声を分類しました。正解率は82.5%でした。
Q. この研究は何に役立ちますか。
A. 動物の食の満足度を声から客観的に測る方法につながる可能性があり、ペットフードの開発や、過食・拒食などの病気のしくみの研究への応用が期待されています。
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出典・参考資料
- 福井大学・名古屋大学・奈良県立医科大学:ラットはチョコを食べながら「おいしい」と鳴いていた(2026年9月7日、PDF)
- Murata K, et al. A Subtype of Ultrasonic Vocalizations during Palatable Food Consumption in Rats Identified by Machine Learning-Assisted Classification. eNeuro, 2026(PMC)
- 共同通信:ラットも「おいしい」と鳴く? AIで鳴き声を分類、福井大(2026年11月7日)
アイキャッチ写真は飼育されているドブネズミ(ペットのラット)です。研究に使われた個体ではありません。写真:Dezidor/Wikimedia Commons(CC BY 3.0)。明るさ調整・文字入れあり。
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