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コトドリのものまねはなぜ本物そっくり?チェーンソー音まで再現する理由
結論
- コトドリ(英名Superb lyrebird)は、オーストラリア固有の鳥です。森の鳥の声をつなげて歌い、人のそばで暮らす個体はチェーンソーやカメラのシャッター音、車のアラーム、子どもの泣き声までまねることが記録されています。
- 2012年の研究では、コトドリがまねたハイイロモズツグミの歌を本物のハイイロモズツグミに聞かせると、本物の歌と同じように強く反応しました。まねされた当の鳥でさえ聞き分けられなかったのです。
- なぜそこまで正確なのか。研究者はメスへの求愛と結びつけて説明しています。2021年の研究では、オスが交尾の最中などに複数種の鳥が騒ぐ「警戒の大合唱」と羽音まで再現し、メスを引き留めている可能性が示されました。
Forbes JAPANとCurrent Biologyの抄録による。
コトドリとはどんな鳥?
コトドリ(学名Menura novaehollandiae)は、オーストラリア南東部の森にすむ鳥です。オスの尾羽が竪琴(たてごと=リラ)の形に見えることから、英語では「lyrebird」と呼ばれます。オスは地面に舞台のような場所をつくり、歌と踊りでメスに求愛します。
Forbes JAPANは、コトドリが数十年にわたって「動物界で最もものまねが上手い種」と呼ばれてきたと紹介しています。シラヒゲドリの笛のような声、ワライカワセミの「笑い声」など、森の音がひと続きの歌の中に入っています(Forbes JAPAN)。
近縁のアルバートコトドリも
同じコトドリ属のアルバートコトドリ(Menura alberti)もものまねをします。2024年の研究では、オスが踊りの舞台のつる草をリズムに合わせて揺らすことが報告され(The American Naturalist)、2025年にはメスも巣作りの最中などにものまねをすることが初めて録音で示されました(Ecology and Evolution)。
どれくらい本物そっくり?2012年の「専門家をだます」実験
2012年に学術誌『Animal Behaviour』に載った論文は、タイトルからして「Fooling the experts(専門家をだます)」です(Dalziell & Magrath, 2012)。研究チームは、コトドリがまねたハイイロモズツグミの歌を、2つの方法で調べました。
| 方法 | 結果 |
|---|---|
| ①本物のハイイロモズツグミに聞かせる | コトドリのものまねに、本物の歌と同じように強く反応。聞き分けられなかった |
| ②音の構造を分析する | 構造も複雑さも本物に驚くほど似ていた |
| 違っていた点 | コトドリは同じ音を繰り返す回数が少なかった |
研究者は、繰り返しを省くことを「トレードオフ」と考えています。1種類を細部まで完璧に写すより、少しずつ省いてまねできる種類を増やす方向に進化した、という見方です(Forbes JAPANの紹介による)。
チェーンソーや赤ちゃんの声もまねる?人工の音の記録
コトドリのレパートリーは、自然の音だけではありません。記録されている人工の音には、次のようなものがあります。
- チェーンソーの音
- カメラのシャッター音
- 車のアラーム、エンジン音
- 子どもの泣き声、人の話し声の断片
ただし「人の近くにいる個体」がほとんど
こうした例は、飼育されている個体や、人がよく訪れる場所にすむ個体がほとんどです。人工の音が何度も聞こえる環境なら、それも学習の材料になります。コトドリは自然の音と人工の音を区別せず、身の回りにある音を何でも取り込む、とForbes JAPANは説明しています。
ものまねの土台は、鳥の発声器官「鳴管(めいかん)」を細かく制御する筋肉と、音を記憶して再現する能力です。コトドリは生まれつきの声だけに頼らず、聞いて覚え、練習して歌を身につける鳥の仲間です。
なぜここまでまねる?メスを引き留める「音の錯覚」
答えの手がかりは求愛にあります。主な研究を年代順に並べると、ものまねが「ただの飾り」ではないことが見えてきます。
| 年 | わかったこと |
|---|---|
| 2013年 | オスは4種類の歌をうたい分け、歌ごとに決まった踊りを合わせる。踊らずに歌うこともあり、踊りは自分の意思で組み合わせている(Current Biology) |
| 2021年 | オスは複数種の鳥が天敵を追い払おうと騒ぐ「警戒の大合唱」を一羽で再現し、小鳥の羽ばたきの音までまねる。再生実験で、ほかの鳥もだまされた(Current Biology) |
| 2021年 | この音を出すのは、メスが舞台から出ていこうとしたときと、コトドリの長い交尾の最中だけだった |
| 2022年 | 求愛の歌の一部(「Dソング」)の80%近くに、3種の鳥の警戒声が入っていた。まねされたのは、コトドリと一緒に餌を探すことが多い種だった(Forbes JAPANの紹介による) |
2021年の研究チームは、オスがメスに「危険が迫っている」と思わせて、求愛や交尾を途中でやめさせないためにまねている可能性を示しました。だまされまいとするメスの聞き分ける力と、オスのまねの正確さが、互いに磨き合う「軍拡競争」になっているという見方です。歌の美しさをメスが好むから歌が複雑になった、というダーウィン以来の説明とは別の道筋です。
まねする相手は「ありそうな場面」
2022年の研究で、まねされた鳥が「その森に一番多い種」でも「めったにいない種」でもなく、実際に天敵を追い払う群れにいそうな種だった点は重要です。オスは思いつきで音を並べるのではなく、森で本当に起きそうな場面を音で組み立てている、と考えられています。
ものまねする動物はほかにもいる
声のものまね(音声模倣)は、人間以外では限られた動物しかできない能力です。研究で確かめられた例を並べました。
| 動物 | まねる音 | どこがすごいか |
|---|---|---|
| コトドリ(鳥) | 森の鳥の歌、チェーンソーなどの人工音 | まねされた鳥も聞き分けられない(2012年) |
| アジアゾウ「コシック」 | 韓国語の言葉 | 韓国語の話者がそのまま聞き取れる。鼻を口に入れて声の響きを変える(2012年、Current Biology) |
| シャチ | 仲間の新しい鳴き声、人の言葉の音 | 試した音すべてを聞き分けられる形でまね、多くは10回以内、3つは1回目で成功(2018年、英王立協会紀要) |
| オウム・キュウカンチョウ | 人の言葉 | ゾウの論文でも、種を越えたものまねの代表例として挙げられている |
| マネシツグミ | ほかの鳥の声 | 同上 |
中でもコトドリが特別なのは、まねの正確さと種類の多さを両立し、それを求愛の場面に合わせて使い分けている点です。ゾウやシャチの例が人と暮らす特定の個体で確かめられたものなのに対し、コトドリは野生の個体が日常的にものまねを歌に組み込んでいます。周りの音から学ぶため、歌はすむ場所の音を映し、文化のように変わっていくとForbes JAPANは指摘しています。
コトドリのものまねのよくある質問
Q. コトドリはどこにいる鳥ですか。
A. オーストラリアの固有種で、南東部の森にすんでいます。学名はMenura novaehollandiae、英名はSuperb lyrebirdです。オスの尾羽が竪琴(リラ)の形に見えることが名前の由来です。
Q. コトドリは本当にチェーンソーの音をまねますか。
A. チェーンソーやカメラのシャッター音、車のアラーム、子どもの泣き声などをまねた記録があります。ただし多くは飼育下や人がよく訪れる場所の個体で、身の回りで何度も聞こえる音を覚えたものです。
Q. コトドリのものまねはどのくらい正確ですか。
A. 2012年の研究では、コトドリがまねたハイイロモズツグミの歌を本物のハイイロモズツグミに聞かせると、本物と同じように強く反応しました。音の分析でも構造がほぼ同じで、違いは繰り返しの回数が少ないことでした。
Q. コトドリはなぜものまねをするのですか。
A. 求愛と深く結びついていると考えられています。2021年の研究では、オスが複数の鳥が騒ぐ警戒の声と羽音を再現し、メスが立ち去ろうとしたときや交尾の最中だけに出していました。メスを引き留めるための「音の錯覚」という見方があります。
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出典・参考資料
- Forbes JAPAN:動物界最強の「ものまね王」コトドリがチェーンソーや赤ちゃんの声を再現する理由(2026年11月7日、Scott Travers)
- Dalziell & Magrath (2012) Fooling the experts: accurate vocal mimicry in the song of the superb lyrebird. Animal Behaviour 83
- Dalziell et al. (2013) Dance choreography is coordinated with song repertoire in a complex avian display. Current Biology 23
- Dalziell et al. (2021) Male lyrebirds create a complex acoustic illusion of a mobbing flock during courtship and copulation. Current Biology 31
- Stoeger et al. (2012) An Asian elephant imitates human speech. Current Biology 22
- Abramson et al. (2018) Imitation of novel conspecific and human speech sounds in the killer whale. Proc. R. Soc. B 285
- Backhouse et al. (2024) Performative Manipulation of the Environment by Displaying Albert’s Lyrebirds. The American Naturalist 204
- Backhouse et al. (2025) Vocal Mimicry… in Female Albert’s Lyrebirds. Ecology and Evolution 15
論文の内容は各論文の抄録とForbes JAPANの紹介に基づきます。アイキャッチ写真はコトドリ(オーストラリア)です。写真:Dominic Sherony/Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)。明るさ調整・文字入れあり。
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