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英国が「3日分の備え」を呼びかけ、なぜ?水は1人9L、日本や欧州と比較
英国政府が10月22日、家庭に「3日分の備え」を呼びかける新しいキャンペーン「Be Ready(備えよう)」を始めました。「英国民に備蓄を求めた」と海外でも報じられましたが、政府の発表は特定の脅威を名指ししたものではなく、嵐や山火事などで電気・水道・通信が止まる場面を想定した平時の防災の呼びかけです。英国のチェックリストの中身を日本・EU・ドイツ・スウェーデン・オランダの推奨と並べ、家族4人なら水と食料がどれだけ必要かを計算しました。
この記事の結論
- 英国政府は10月22日、3年がかりのキャンペーンの第1段階として、家庭に3日分の水・食料・明かり・現金などの備えを勧める新しい案内を公表しました。発表文が挙げた背景は昨冬の嵐と今夏の山火事で、フランス・アイルランド・オランダと同じ「3日分」にそろえたと説明しています。
- 水の目安は1人1日3リットル(飲み水)。3日分で1人9L、家族4人なら36L(2Lペットボトル18本)です。日本の「1人1日3L・最低3日分」と同じ基準です。
- ただし日本は大規模災害に備えて「1週間分」が望ましいとしており、4人家族なら水は84L。ドイツは10日分、スウェーデンは少なくとも1週間を求めていて、英国やEUの「72時間」は欧州の中では最低ラインにあたります。
- 英国政府の2026年の調査では、1人1日3Lで計算して3日分以上の水を持つ家庭はわずか4%。今回の呼びかけは、この差を埋めるためのものと位置づけられます。

英国政府は何を呼びかけた?「Be Ready」キャンペーンの中身
英国政府の内閣府(Cabinet Office)は2026年10月22日、「家庭は緊急時に備えて小さく簡単な一歩を」と題した発表を出し、新しい案内サイト「Be Ready」を公開しました。発表者は治安担当相(Security Minister)のダン・ジャービス氏です。
発表によると、これは3年間にわたるキャンペーンの第1段階です。嵐などの悪天候で電気・水道・電話・インターネットが一時的に止まったとき、各家庭が自力で過ごせるよう、事前にできる簡単な行動を勧めています。サイトのトップには「悪天候からサイバー攻撃まで、緊急事態は頼りにしているサービスを止めることがある」とあり、3日分の備えがあれば、支援が本当に必要な人に届くまでの間をしのげるという考え方が示されています。
「戦争に備えて備蓄せよ」という話ではない
海外メディアでは「英国民に食料と水の備蓄を求めた」と大きく報じられましたが、政府の発表文が背景として挙げたのは昨冬の嵐と今夏の山火事で、特定の国や攻撃を名指しした記述はありません。発表文は、3日分という目安がフランス・アイルランド・オランダでも使われていること、欧州の国々ではこうした案内が「日常の一部」になっていて英国もそれにそろえることを強調しています。
また、新しい内容がすべて新規というわけでもありません。発表文には、政府は2024年5月から家庭向けの備えの案内を出しており、今回は旧「Prepare」サイトを新しいメッセージとデザインで更新したもので、助言の多くは変わっていないと書かれています。慈善団体や企業など500以上の団体が発信に協力し、今後はSNSやラジオ広告で、小さな子どもがいる家庭や高齢者に重点的に届けるとしています。
- 2024年5月英国政府が家庭向けの備えの案内(旧「Prepare」サイト)の公開を始める今回の発表文によると、政府は2024年5月から家庭向けの防災アドバイスを公表してきました。
- 2025年3月26日EUが「備えの連合(Preparedness Union)戦略」を発表市民に最低72時間分の必需品を備えるよう促すことを盛り込みました。
- 2026年2月27日〜5月11日英国政府が国民1万791人に備えの調査3日分の水を持つ家庭は、計算上4%にとどまりました(8月19日公表)。
- 2026年10月22日「Be Ready」キャンペーンを開始旧「Prepare」サイトを新しいメッセージとデザインで更新。3年間のキャンペーンの第1段階と位置づけました。
お金のかからない備えも重視
発表文は、無料でできる行動として「優先サービス登録(Priority Services Register)」への登録を挙げています。電気・ガス・水道の会社が、停電や断水のときに支援が必要な利用者を把握するための制度です。日本でいえば、自治体の「避難行動要支援者名簿」に近い役割を、ライフラインの事業者側が担う仕組みといえます。
英国の「3日分チェックリスト」に入っている9分類
Be Readyサイトとチェックリスト(PDF)に載っている項目を、当サイトで日本語に整理しました。
| 分類 | 英国政府が挙げる中身 |
|---|---|
| 水 | 3日分のボトル入りの水。飲み水として1人1日3リットル。調理や洗い物にはさらに必要 |
| 食料 | 常温で日持ちし、冷蔵も調理も要らない食品を3日分(肉・魚・野菜の缶詰、ドライフルーツ、ナッツなど)。ふだん食べている物を選ぶ |
| 衛生 | 手指消毒液、ウェットティッシュ、衛生用品・トイレ用品 |
| 明かりと暖 | 懐中電灯と予備の電池(ろうそくより安全)、毛布・寝袋・暖かい服 |
| 通信と情報 | 電池式・手回し式のFMラジオ(よく聞く局の周波数を書き留める)、充電済みのモバイルバッテリー |
| お金と書類 | 現金(硬貨と紙幣を混ぜて)とカード、身分証や重要書類のコピー、連絡先と常用薬・服用量のメモ |
| 医療と健康 | 救急セット(防水ばんそうこう、包帯、体温計、消毒液など)、常用薬と医療用品 |
| 赤ちゃん用品 | 粉ではなく液体(そのまま飲める)ミルクが望ましい(安全にお湯を沸かせないことがあるため)、おむつとおしり拭き |
| ペット用品 | ペットフードとボトル入りの水 |
出典:英国政府「Be Ready」サイトの「Be ready for emergencies」とBe Ready Checklist(英語版)を当サイトが要約・翻訳。
日本の防災リストと比べて目を引くのは、現金を「硬貨と紙幣を混ぜて」持つこと、FMラジオの周波数を紙に書いておくこと、赤ちゃんのミルクは液体を勧めることです。キャッシュレス決済が広く普及した英国でも、停電でカード払いやATMが使えなくなる場面を想定しています。
「一度にそろえなくていい」が基本
チェックリストは始め方として、①まず家にある物を確認する、②家族に必要な物(薬、ミルク、ペットフードなど)を書き出す、③ふだんの買い物のついでに少しずつ買い足して出費を分散する、④半年ごとに賞味期限を確認して入れ替える、⑤近所の人と連絡先を交換し、停電のときに助け合えることを話しておく――の5つを挙げています。余裕がある人は、備えられない人に物を譲ったり、書類のコピーを手伝ったりすることも勧めています。
薬については、処方薬が切れないよう必要になる5営業日前までに処方の再発行を頼むよう呼びかけています。
日本・EU・ドイツ・スウェーデンと比較:「3日分」は最低ライン
各国・地域の政府機関が公表している家庭の備えの目安を、当サイトで一次資料から並べました。
| 国・地域 | 備える期間 | 水の目安 | 一次資料 |
|---|---|---|---|
| 英国 | 3日分 | 1人1日3L(飲み水) | Be Ready(2026年10月) |
| 日本 | 最低3日分、大規模災害は1週間分が望ましい | 1人1日3L | 首相官邸「ご家庭での備え」 |
| EU | 最低72時間 | (数量の定めなし) | 欧州委員会(2025年3月) |
| オランダ | 72時間 | 1人1日3L | denkvooruit.nl |
| ドイツ | できれば10日分(3日分でも大きな助け) | 1人1日2L(うち0.5Lは調理用) | BBK「危機と災害への備え」 |
| スウェーデン | 少なくとも1週間(7日) | (このページに数量の記載なし) | MCF「1週間に備える」 |
出典:各国・地域の政府機関の公式ページ・冊子(表内リンク)を当サイトが2026年10月25日に確認。フランスとアイルランドが「3日分」を使っていることは英国政府の発表文による。
水の基準は英国・日本・オランダが1人1日3リットルでそろっています。ドイツは1人1日2リットルと少なめですが、その代わり期間はできれば10日と長く、ドイツ連邦市民保護・災害援助庁(BBK)の冊子は「少なくとも3日分の蓄えでも大きな助けになる」と段階的に増やすことを勧めています。
スウェーデンの民間防衛庁(MCF、旧MSB)は、社会の助けがなくても少なくとも1週間自力で暮らせることを「家庭の備え」と定義しています。北欧やドイツは戦争や大規模な停電も含めた備えを前面に出しており、英国やEUの「72時間」は欧州の中では最低限の目安という位置づけです。
日本は「1週間分」が望ましいとされる
日本の首相官邸の「災害に対するご家庭での備え」は、飲料水を3日分(1人1日3リットルが目安)、非常食も3日分を例に挙げたうえで、大規模災害のときは「1週間分」の備蓄が望ましいとしています。さらに、飲み水とは別に、トイレを流すなどの生活用水も必要だと注意しています。農林水産省の「家庭備蓄ポータル」も、ふだんの食品を多めに買って使った分を買い足す「ローリングストック」などのやり方を紹介しています。
つまり英国の新しい基準は、日本の「最低3日分」とほぼ同じです。地震や台風が多い日本の方が、「1週間」という一段長い目安を持っている点が違いといえます。
家族4人なら水36L・36食:3日分の量を計算
各国の目安をもとに、1人と4人家族で必要な飲み水の量を当サイトで計算しました。
| 目安 | 1人 | 4人家族 | 4人分の本数 |
|---|---|---|---|
| 英国・日本の最低ライン(3L×3日) | 9L | 36L | 2Lボトル18本 |
| 日本の「1週間分」(3L×7日) | 21L | 84L | 2Lボトル42本 |
| ドイツの3日分(2L×3日) | 6L | 24L | 2Lボトル12本 |
| ドイツの10日分(2L×10日) | 20L | 80L | 2Lボトル40本 |
当サイトの計算。ドイツBBKの冊子にある3人家族の例(3日で18L、10日で60L)と同じ計算方法であることを確認しました。生活用水は含みません。
英国の目安どおり4人家族で3日分をそろえると、飲み水だけで36リットル。2Lペットボトル6本入りの箱なら3箱で、重さはおよそ36kgになります。日本の「1週間分」なら84L、7箱が必要です。
食料は、1日3食とすると4人×3日で36食分です。英国のチェックリストは「冷蔵も調理も要らない物」を挙げているので、停電でガスや電子レンジが使えない状況でもそのまま食べられる缶詰やナッツ、レトルトなどを中心に考えると現実的です。
飲み水と生活用水は別
英国のチェックリストも日本の首相官邸の案内も、1人1日3リットルは飲み水の目安で、調理や洗い物、トイレには別に水が必要だとしています。日本では、風呂の水をためておく、ポリタンクに水道水を入れておくといった方法が紹介されています。
英国の家庭はどこまで備えている?政府調査で水は4%
英国政府は毎年、国民の防災意識の調査を行っています。2026年2月27日〜5月11日に18歳以上の1万791人にオンラインで聞いた「UK Public Survey of Risk Perception, Resilience and Preparedness 2026」(8月19日公表)から、家庭の備えに関する数字を抜き出しました。
| 項目 | 回答者の割合 | チェックリストとの関係 |
|---|---|---|
| 3日分以上の水がある(1人1日3Lで計算) | 4% | 水 |
| 水が1日分にも満たない(同) | 82% | 水 |
| 家にあるボトル入りの水が1L未満 | 35% | 水 |
| 調理不要の食料が約3日分ある | 60% | 食料 |
| 常温保存の食料が7日分以上ある | 25% | 食料 |
| 現金(1人10ポンド以上)がある | 60% | お金 |
| モバイルバッテリーがある | 54% | 通信と情報 |
| 電池式・手回し式などのFMラジオがある | 23% | 通信と情報 |
出典:英国政府(内閣府)UK Public Survey of Risk Perception, Resilience and Preparedness 2026 Headline findings。水の日数は、回答した水の量と世帯人数から調査側が1人1日3Lで算出した値。
「3日分ほどの水がある」と自分で答えた人は37%いましたが、実際に家にある水の量と家族の人数から計算し直すと、3日分以上を持つ家庭は4%、82%は1日分にも届きませんでした。食料は比較的そろっていて、調理不要の食料が3日分ほどある人は60%です。
電気・ガス・水道がそろって止まった場合に何日しのげるかという質問では、「1日以下」が25%(2025年の32%から低下)、「2〜3日」が41%、「6日以上」は12%でした。自分の家庭は「おおむね・完全に備えている」と答えた人は13%にとどまります。
水が特に足りていないことが数字ではっきりしており、今回のキャンペーンがまず水と日持ちする食料を挙げているのは、この調査結果とも合っています。
日本の家庭で今からできること
英国の呼びかけは、日本の防災の考え方とほぼ同じです。台風や地震の多い日本では、次の点を確認しておくと英国の基準も日本の基準も満たせます。
- 飲み水:1人1日3L×最低3日(4人家族で36L)。できれば1週間分(84L)
- 食料:ふだん食べている物を多めに買い、使った分を買い足すローリングストックで3日〜1週間分
- 明かり・情報:懐中電灯と予備電池、充電済みのモバイルバッテリー、電池式ラジオ
- 現金:停電でキャッシュレス決済が止まったときのため、小銭を含めて少し手元に
- 薬と書類:常用薬の予備、お薬手帳や保険証などの写し、家族の連絡先のメモ
- 点検:英国は半年ごとの見直しを勧めています。日本でも防災の日(9月1日)などに合わせて年1〜2回確認すると習慣にしやすくなります
慌てて買い込む必要はありません
英国政府自身が「一度にそろえる必要はない」「ふだんの買い物で少しずつ」と強調しています。日本でも、災害の直後に買い占めが起きると本当に必要な人に物が届かなくなります。平時に少しずつ整えておくことが、今回の呼びかけの趣旨です。
英国の3日分の備えについてよくある質問
Q. 英国政府はなぜ3日分の備えを呼びかけたのですか?
A. 2026年10月22日の英国政府の発表は、昨冬の嵐や今夏の山火事などで電気・水道・通信が止まる事態を背景に挙げています。3日分の備えがあれば、緊急サービスが支援の必要な人を優先できるという考え方です。特定の国や攻撃を名指しした記述はありません。
Q. 英国の備えのリストには何が入っていますか?
A. 水(1人1日3Lを3日分)、冷蔵・調理不要の食料3日分、衛生用品、懐中電灯と電池、毛布や暖かい服、FMラジオ、モバイルバッテリー、現金とカード、書類のコピー、救急セットと常用薬、赤ちゃん用品、ペット用品の9分類です。
Q. 3日分の水は何リットル必要ですか?
A. 英国も日本も飲み水は1人1日3リットルが目安で、3日分なら1人9L、4人家族で36L(2Lペットボトル18本)です。調理やトイレの水は別に必要です。
Q. 日本の備蓄の目安は何日分ですか?
A. 首相官邸の案内では、飲料水と非常食を最低3日分、大規模災害に備えては1週間分が望ましいとしています。1週間分の水は1人21L、4人家族で84Lです。
Q. ほかの国はどのくらい備えるよう勧めていますか?
A. EUとオランダは72時間、ドイツはできれば10日分(水は1人1日2L)、スウェーデンは少なくとも1週間です。英国によると、フランスとアイルランドも3日分を目安にしています。
あわせて読みたい
出典・参考資料
- 英国政府(Cabinet Office):Households encouraged to take small, simple steps to stay prepared in an emergency(2026年10月22日)、Be Ready – Be ready for emergencies、Be Ready Checklist(PDF)
- 英国政府(Cabinet Office):UK Public Survey of Risk Perception, Resilience and Preparedness 2026: Headline findings(2026年8月19日)
- 欧州委員会:EU Preparedness Union Strategy(2025年3月26日)
- 首相官邸:災害に対するご家庭での備え/農林水産省:家庭備蓄ポータル
- ドイツ連邦市民保護・災害援助庁(BBK):Vorsorgen für Krisen und Katastrophen(PDF)
- スウェーデン民間防衛庁(MCF):Hemberedskap – preppa för en vecka/オランダ政府:Stel je noodpakket samen(denkvooruit.nl)
各国の比較表と、水の量・本数・食数の計算は、各資料をもとに当サイトが作成したものです。外国語資料は当サイトが要約・翻訳しました。内容は2026年10月25日時点の情報です。写真:American Red Cross(FEMA)(パブリックドメイン)。アイキャッチはこの写真をトリミングし文字を加えています。


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