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チベット地震M7.0はなぜ起きた?高原のM6.5以上は77年で43回
中国チベット自治区の那曲(ナクチュ)市で、10月22日夜(日本時間23時33分ごろ)にマグニチュード(M)7.0の地震が起きました。国営メディアによると16人が死亡、46人がけが(23日朝時点)。なぜチベットではこれほど大きな地震が起きるのか。米国地質調査所(USGS)の地震カタログから、チベット高原とその周りで1950年以降に起きたM6.5以上の地震を全部数え、2025年1月のティンリ(定日)地震とも比べます。
この記事の結論
- 中国地震台網の正式測定では、震源はチベット自治区那曲市巴青(バチェン)県、北緯32.40度・東経93.79度、深さ10km、M7.0。USGSはMw7.0・深さ18kmとしています。
- 中国国営テレビによると死者16人、負傷者46人(FNN、23日朝)。これに先立ち新華社は、23日未明時点で負傷者32人(重傷11人・軽傷21人)と伝えていました。那曲市の発表として、少なくとも339棟の家屋が倒壊したと伝えられています(AP通信)。
- USGSの地震カタログで、北緯27〜38度・東経78〜104度(チベット高原とヒマラヤ・青海・四川西部などの周縁)を数えると、1950年以降のM6.5以上は今回を含めて43回。平均すると約1.8年に1回です。M7以上は14回でした。
- 今回はUSGSの解析で「正断層」型。高原が自分の重みで東西に広がる動きで起きたタイプで、2025年1月のティンリ地震(M7.1)と同じ仲間です。ただし強い揺れ(改正メルカリ震度階級VII以上)を受けたと推計される人口は、ティンリ地震の約6分の1でした。
- 気象庁によると日本への津波の心配はありません。10月23日朝の時点で、日本人が被害にあったという情報は確認できませんでした。

チベット自治区のM7.0地震、何が起きたのか
まず、公式発表と報道で確認できたことを整理します。発生時刻は現地(北京時間)の10月22日午後10時33分、日本時間では同日午後11時33分ごろです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発生時刻 | 2026年10月22日 22時33分(現地)=23時33分ごろ(日本時間) |
| 震源(中国地震台網) | 西藏那曲市巴青県、北緯32.40度・東経93.79度、深さ10km、M7.0(正式測定) |
| 震源(USGS) | 那曲の東北東191km、深さ18km、Mw7.0(イベントページ) |
| 震央の周り | 震央5km以内の平均標高は約4,864m。巴青県の中心部まで59km、那曲市まで194km、ラサまで399km(中国地震台網の自動配信を伝えた捜狐の記事) |
| 被害(報道) | 死者16人、負傷者46人=中国国営テレビ(FNN、23日朝)。新華社の23日未明時点は負傷者32人(重傷11人・軽傷21人、ABC)。家屋の倒壊は少なくとも339棟=那曲市(AP通信) |
| 中国政府の対応 | 国務院抗震救災指揮部弁公室と応急管理部が国家地震災害「四級」の応急対応を始め、作業チームを派遣(捜狐) |
| 日本への影響 | 気象庁が23日0時6分に「遠地地震に関する情報」を発表。この地震による津波の心配はありません |
負傷者の内訳(重傷・軽傷)は、新華社が23日午前2時25分(現地)時点として伝えた32人分の数字です(ABC)。その後、国営テレビは負傷者を46人と伝えています。被害の数字は今後変わる可能性があります。
AP通信によると、救助にあたる警察や消防が、家を失った人のためのテントを設営しています。中国国営中央テレビ(CCTV)は、この地域で過去5年で最大の地震だと伝えました。捜狐の記事は、中国で今年最大の地震で、前回のM7級は2024年1月23日の新疆ウイグル自治区烏什(ウシ)県のM7.1だとしています。
震源の深さが「10km」と「18km」で違う理由
中国地震台網は10km、USGSは18kmとしています。USGSの18kmは、広い周波数帯の地震波(P波)の形をモデルで計算して決めた値です。震源の深さは観測点の配置や計算方法で数kmから十数kmずれることがよくあり、どちらかが間違いというわけではありません。どちらにしても、地殻の中の浅い地震であることは共通しています。
余震も続いている
USGSのカタログでは、本震から約9時間半(日本時間23日午前9時すぎ)までに、震央から150km以内でM4.3〜5.2の地震が7回記録されています。中国地震台網も、本震の26分後にM3.9、その後もM3級を相次いで観測しています。USGSは、強い揺れを伴う余震が起こりうるとしています。
なぜチベットで大地震が起きるのか|今回は「正断層」
チベット高原は、USGSが「世界で最も高い高原」と説明する場所です。その成り立ちには、インド大陸を乗せたプレートがユーラシア大陸に北からぶつかり続けていることが関わっています。USGSの解説によると、インド・プレートがユーラシアの下にもぐり込むように衝突し、ヒマラヤ山脈とチベット高原を押し上げてきました。
押されているのに「引っ張られて」壊れた
意外なのは、今回の地震が「押し合い」ではなく「引っ張り」で起きたことです。USGSの解析(モーメントテンソル解)では、断層が上下にずれ落ちる正断層型でした。
USGSはその理由を、高原が高くなりすぎたことで説明しています。高く積み上がった地殻は自分の重さで横へ広がろうとし、チベット高原はいま東西方向に伸びています。USGSはこれを、瓶から垂らしたはちみつが平らに広がる様子にたとえています。高原の内部では、この東西の伸びを横ずれ断層と正断層が受け持っており、今回の地震もその動きと合っています。
断層の大きさ
USGSによると、今回のような規模の正断層地震は、長さ約50km・幅約20kmほどの断層面がずれて起きるのが一般的です。地図上では1つの点で示されますが、実際には数十kmにわたって断層がずれたことになります。
同じ地域で昔から大地震
USGSは、1900年以降にチベット高原とその周縁でM7.0以上の地震が29回起きたとしています。今回の震央から300km以内に絞ると、USGSのカタログには1951年のM7.7(今回の震央から約280km)、1952年のM7.4(約282km)、2010年のM6.9(約273km)がありました。2010年の地震は青海省玉樹(ぎょくじゅ)で大きな被害を出した地震で、USGSは死者2,500人超としています。
チベット高原の大地震を77年分数えると43回
「チベットは地震が多い」と言われますが、実際にどれくらいなのか。USGSの地震カタログ(ComCat)から、北緯27〜38度・東経78〜104度の範囲で1950年1月1日以降に起きたM6.5以上の地震を取り出しました。この範囲にはチベット自治区のほか、青海省、四川省西部、ネパール・インド北部のヒマラヤも含まれます。
| 年代 | M6.5以上の回数 | 目安 |
|---|---|---|
| 1950年代 | 6回 | |
| 1960年代 | 5回 | |
| 1970年代 | 5回 | |
| 1980年代 | 3回 | |
| 1990年代 | 6回 | |
| 2000年代 | 4回 | |
| 2010年代 | 9回 | |
| 2020年代(〜2026年10月) | 5回 |
出典:USGS ComCat(2026年10月23日に当ブログが取得・集計)。範囲は北緯27〜38度・東経78〜104度の長方形で、地形としての「チベット高原」の境界とは完全には一致しません。同じ日の余震も別の1回として数えています。
合計は今回を含めて43回。1950〜2026年の77年で割ると、約1.8年に1回のペースでM6.5以上が起きている計算です。M7以上に限ると14回で、2000年以降だけで8回ありました。最も多かったのは2010年代の9回で、2015年のネパール・ゴルカ地震(M7.8)と、その後の大きな余震などが重なっています。
死者が多かった地震は?
同じ43回について、米国海洋大気庁(NOAA)の有意地震データベースの死者数を発生日で結び付けました。死者100人以上は15回、全体の約35%でした。上位は次のとおりです。
| 発生 | M | 死者(NOAA) | 場所(NOAAの表記を和訳) |
|---|---|---|---|
| 2008年5月12日 | 7.9 | 87,652人 | 中国・四川省(四川大地震) |
| 2015年4月25日 | 7.8 | 8,957人 | ネパール・カトマンズ周辺(ゴルカ地震) |
| 2010年4月13日 | 6.9 | 2,968人 | 中国・青海省 玉樹 |
| 1991年10月19日 | 6.8 | 2,000人 | インド・ウッタラーカシー周辺 |
| 1950年8月15日 | 8.6 | 1,530人 | インド・中国(アッサム・チベット地震) |
| 1996年2月3日 | 6.6 | 322人 | 中国・雲南省 麗江 |
出典:USGS ComCat(M)、NOAA NCEI Significant Earthquake Database(死者数)を当ブログで結合。Mは USGS の値。死者数は資料によって異なり、1950年のアッサム・チベット地震はUSGSの解説では4,000人超とされています。
死者が多いのは、四川盆地の縁やネパールの都市部など、人が多く住む場所の近くで起きた地震です。逆に、M7.8の2001年青海省南部の地震や、M7.5の1997年チベット西部の地震は、NOAAのデータに死者の記録がありません。USGSも「この地域は人口が少ないため、大地震の影響は断層が人の住む場所にどれだけ近いかで大きく変わる」としています。
2025年1月のティンリ地震と比べると
チベットでは2025年1月7日にも、シガツェ市ティンリ(定日)県で大地震が起きています。今回の震央からは西南西へ約740km。どちらも正断層型で規模もほぼ同じですが、被害の数字には大きな差があります。USGSのPAGER(被害推計)のデータで並べました。
| 項目 | 今回(2026年10月) | ティンリ(2025年1月) |
|---|---|---|
| M(USGS) | Mw7.0 | Mw7.1 |
| M(中国地震台網) | 7.0 | 6.8 |
| 深さ(USGS) | 18km | 10km |
| 断層の型 | 正断層 | 正断層 |
| 最大の揺れ(推計) | 改正メルカリ震度 VIII | 改正メルカリ震度 IX |
| 震度VII以上の揺れを受けた人口(推計) | 約6,348人 | 約37,641人 |
| 震度VI以上の揺れを受けた人口(推計) | 約48,221人 | 約99,126人 |
| USGSの警報レベル | オレンジ(経済)/黄(死者) | 赤 |
| 死者(中国の発表・報道) | 16人(23日未明) | 126人(AP) |
出典:USGS イベントページ(us6000u43g、us6000pi9w)のPAGER人口暴露データを当ブログで合計。改正メルカリ震度は日本の震度とは別の尺度です。ティンリ地震の死者・Mの中国側の値はAP通信(2025年1月7日)による。
地震の大きさを表す「地震モーメント」で比べると、ティンリ地震は今回の約1.4倍。それ以上に違うのが、強い揺れを受けた人の数です。改正メルカリ震度VII以上の人口は、ティンリが約37,641人だったのに対し、今回は約6,348人と約6分の1でした。震央の近くが標高4,800m級の人の少ない土地だったことが、数字の差に表れています。
USGSの被害推計は「死者1〜100人」が中心
PAGERは、揺れの分布と建物の弱さから死者数の幅を確率で示します。今回は「1〜10人」が32%、「10〜100人」が37%、「100〜1,000人」が16%でした。USGSは、この地域の住まいの多くが日干しれんがや、泥でつないだ補強のないれんが造りで、揺れに弱いとしています。今後、山あいの集落の被害がわかるにつれて数字が変わる可能性があります。
日本への影響は?津波・日本人の被害・震度との違い
津波の心配はない
気象庁は10月23日0時6分に「遠地地震に関する情報」を出し、震源をチベット自治区(中国)、M7.0としたうえで「この地震による津波の心配はありません」と発表しました。震源は海から遠い内陸なので、津波を起こす地震ではありません。
日本人の被害は確認されていない
10月23日朝の時点で、外務省の海外安全ホームページ(中国)に今回の地震に関する新しい注意喚起は見当たらず、日本人が被害にあったという報道も確認できませんでした。外務省はチベット自治区に「レベル1:十分注意してください」の危険情報を出しています(地震ではなく治安面の理由によるもの)。チベット自治区は在中国日本国大使館(北京)の管轄です。現地に家族や知人がいる場合は、大使館の邦人援護窓口が相談先になります。
「震度6弱相当」は目安にとどまる
USGSは、震央付近の最大の揺れを改正メルカリ震度階級で「VIII」と推計しました。ウェザーニュースは、厳密な比較はできないとしたうえで、日本の震度に換算すると5強〜6弱程度に相当すると伝えています。
注意したいのは、日本の震度と改正メルカリ震度は別の物差しだということです。気象庁の震度は全国の震度計で地面の揺れを機械的に測って0〜7の10段階で決めますが、改正メルカリ震度は人の感じ方や建物の被害の程度などから決める12段階の尺度です。今回の「VIII」は観測値ではなく、USGSが計算した推計値でもあります。
現地に行く予定がある人へ
被災地では救助活動が続き、余震も起きています。近くチベット方面を訪れる予定がある人は、外務省の海外安全ホームページや旅行会社で最新の状況を確認してください。外務省の「たびレジ」に登録しておくと、現地の安全情報がメールで届きます。
今回の地震と周辺の大地震の流れ
- 1951年11月M7.7(那曲の西南西)今回の震央から約280km。USGSのカタログに記録
- 2010年4月青海省玉樹でM6.9今回の震央から約270km。USGSによると死者2,500人超
- 2025年1月7日ティンリ地震 M7.1シガツェ市ティンリ県。死者126人(AP)
- 10月22日 22時33分巴青県でM7.0(現地時間)日本時間23時33分。中国地震台網・USGSともM7.0
- 10月23日 0時6分気象庁が遠地地震情報日本への津波の心配なしと発表
- 10月23日 未明死者16人・負傷32人新華社。倒壊家屋は少なくとも339棟(AP)
- 10月23日 朝負傷者46人に中国国営テレビ(FNN)
地震の報道(X)
ロイターとCBSニュースは10月22日(現地時間)、中国チベット自治区でマグニチュード7の地震が起き、死者が出ていると伝えました。
Earthquake of magnitude 7 strikes China's Tibet https://t.co/xRoXtPyP9D https://t.co/xRoXtPyP9D
— Reuters (@Reuters) October 22, 2026
More than a dozen people were killed when a magnitude 7.0 earthquake hit China's Tibet on Thursday evening local time, according to local officials. Security cameras captured crowds running out of buildings as the tremors began. pic.twitter.com/9prKSArbqB
— CBS News (@CBSNews) October 22, 2026
チベット地震のよくある質問
Q. チベットの地震はいつ、どこで起きましたか?
A. 現地時間の2026年10月22日午後10時33分(日本時間23時33分ごろ)、中国チベット自治区那曲市巴青県で起きました。中国地震台網の測定でM7.0、深さ10km。USGSはMw7.0、深さ18kmとしています。
Q. 被害はどれくらいですか?
A. 中国国営テレビによると、死者16人、負傷者46人(10月23日朝時点。新華社の23日未明時点では負傷者32人)。AP通信は那曲市の発表として、少なくとも339棟の家屋が倒壊したと伝えています。数字は今後変わる可能性があります。
Q. なぜチベットでは大きな地震が多いのですか?
A. インド・プレートがユーラシアに衝突し続けているためです。今回の地震は、押し上げられて高くなった高原が自分の重さで東西に広がる動きによる「正断層」型だったとUSGSは解析しています。
Q. チベット周辺で大きな地震はどれくらい起きていますか?
A. USGSのカタログで北緯27〜38度・東経78〜104度を数えると、1950年以降のM6.5以上は今回を含めて43回、約1.8年に1回のペースです。M7以上は14回でした。
Q. 日本に津波は来ますか?
A. 来ません。気象庁は10月23日0時6分に、この地震による津波の心配はないと発表しました。震源は内陸です。
Q. 日本人の被害はありますか?
A. 10月23日朝の時点で、日本人が被害にあったという情報は確認できませんでした。チベット自治区は在中国日本国大使館(北京)の管轄です。
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出典・参考資料
- USGS:M 7.0 – 191 km ENE of Nagqu, China(us6000u43g)/PAGER/2025 Southern Tibetan Plateau Earthquake(us6000pi9w)/地震カタログ ComCat
- NOAA NCEI:Significant Earthquake Database
- 中国地震台網の正式測定(光明網の転載)/捜狐(震央距離・応急対応)
- 気象庁:遠地地震に関する情報(2026年10月23日0時6分)/震度について
- 外務省:海外安全ホームページ 中国
- 報道:NBC News(AP通信、2026年10月22日)、ABC News(新華社引用、10月23日)、NHK(10月23日)、共同通信(10月23日)、ウェザーニュース(10月22日)、PBS(AP通信、2025年1月7日)
数値は2026年10月23日時点(日本時間)で公表されていたものです。年代別の回数、死者数の結合、ティンリ地震との比較は、上記の公開データをもとに当ブログが集計しました。写真:Bernt Rostad「Na Qu railway station」(CC BY 2.0)、アイキャッチ:罗布泊「中国西藏那曲」(Wikimedia Commons、CC BY 3.0、明るさ調整・文字入れ)。


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