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モンゴル草原火災はなぜ?日系企業の車が原因か、焼失は東京の2.4倍
モンゴル東部ドルノド県のヌムルグ厳重保護区で10月8日に起きた草原火災は、16日朝に消し止められるまでに約52.9万ヘクタールを焼きました。現地メディアは、日本企業の子会社にあたる現地の通信会社(以下、日系企業)の一行が乗った車両から火が出たと伝えています。何が起きたのか、なぜここまで広がったのかを、モンゴル国家統計局の火災統計と、米航空宇宙局(NASA)の衛星データを当サイトで集計して整理します。
この記事の結論
- 10月8日、モンゴル東部ドルノド県ハルハゴル郡のヌムルグ厳重保護区で草原火災が発生。16日朝に完全に消し止められました。
- モンゴル環境・気候変動省によると焼失面積は52万8,765.5ヘクタール。東京都の約2.4倍、千葉県より広い面積です。うち46.9万ヘクタールは保護区の中で、保護区の79.8%が焼けました。
- 現地メディアは、日系企業の一行の車の底に枯れ草が絡まって火が出たと報道。会社は「通信網整備の現地調査中に車両から出火した」と説明しています。一方、釣りや狩猟が目的だったとする報道もあり、原因と経緯は警察が捜査中です。
- 当サイトの集計では、モンゴルの森林・草原火災は2016〜2025年で、10月が4月に次いで多い月(全体の約16%)でした。ドルノド県を含む東部3県で全国の約46%を占めます。
- 今回の1件の焼失面積は、2018〜2020年の各年の全国の合計を上回り、日本の2024年の林野火災すべて(1,073ヘクタール)の約493倍にあたります。
東京都との比較は、焼失面積を国土地理院の全国都道府県市区町村別面積調(令和8年7月1日時点、東京都2,199.94km²)で割った当サイトの計算です。
【追記 10月21日18時】KDDIが謝罪のコメント
テレビ朝日(ANN)は10月21日、KDDIが今回の火災について謝罪したと報じました。KDDIは「当社グループ会社であるモビコムの活動に関連して火災が発生し、モンゴルの自然環境に多大な影響を与えたことを、極めて重く受け止めております」とコメントし、保護区に入った目的は4Gネットワークの通信試験だったと説明しています。
本文で「日系企業」としてきた会社は、KDDIのグループ会社でモンゴルの通信大手「モビコム」です。一方で、釣りや狩猟を計画していたとするモンゴルメディアの報道もあり、目的と責任の範囲はモンゴル当局の捜査の結論を待つ必要があります。
モンゴルの草原火災で何が起きたのか
モンゴルのニュースサイトikon.mn(10月12日)、中国国営の新華社(10月20日)、日本のオルタナ(10月21日)などの報道をもとに、10月21日時点で分かっていることをまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発生 | 2026年10月8日(木)。最初の通報は現地時間11時55分(日本時間12時55分) |
| 場所 | モンゴル東部ドルノド県ハルハゴル郡のヌムルグ厳重保護区。中国との国境に近い。通報地点は県中心部から南東に485km、郡中心部から南東に125km(ikon.mn) |
| 鎮火 | 12日未明に延焼をほぼ止め、16日朝に完全に消し止めた |
| 焼失面積 | 52万8,765.5ha。うち保護区内が46万8,965.7haで、保護区の79.8%(環境・気候変動省) |
| 消火態勢 | モンゴル側は3県から60チーム・606人・機材100台。中国側も国境沿いに3,400人余りを配置(新華社) |
| 人や家畜 | 保護区は居住地から90km以上離れ、家畜はほとんどいないと副首相が説明。人的被害は報じられていない |
| 原因 | 日系企業の一行の車両から出火したと報道。会社も車両からの出火を認める声明。警察が捜査中で、公式の結論は出ていない |
ヌムルグ厳重保護区は、モンゴル東部で最も自然が保たれた地域の一つとされ、立ち入りが厳しく制限されています。新華社によると、出火地点は保護区の中でも特に制限の強い中核区域でした。オルタナは、沼地や峠、丘陵が多く車での通行が難しい地域だと伝えています。
出火から鎮火までの流れ
- 10月7日国境の検問所で通信回線の開通式オルタナがモンゴルメディアの報道として紹介したところでは、日系企業の幹部らは国会議員とともに、ハルハゴル郡の検問所に引いた光ファイバー回線の開通式に参加しました。
- 10月8日11時55分に最初の通報保護区の中核区域で出火。強い風で一気に燃え広がりました(新華社)。
- 10月12日延焼をほぼ止める・会社が声明ikon.mnによると12日0時55分(現地時間)に火の勢いを抑え込み、完全に消すための作業に移りました。この時点でモンゴル側109人・車18台、中国側58人・機材14台が国境沿いで活動していました。同日、会社が声明を出しています。
- 10月14日副首相が政府庁舎で説明緊急事態担当の副首相が「消火に多額の費用がかかっている」「責任のある者が特定されれば賠償することになる」と述べました(ikon.mn)。
- 10月16日朝に完全鎮火出火から8日目の朝に消し止められました(新華社)。
- 10月20日焼失面積を発表環境・気候変動省が52万8,765.5ヘクタールと発表したと、現地メディアと新華社が伝えました。日本では同日、共同通信がモンゴル国営モンツァメ通信の報道などとして伝えています。
草原火災の原因は日系企業の車?分かっていること
原因については、会社の説明と現地メディアの報道に食い違いがあります。警察が捜査中で、公式の結論はまだ出ていません(新華社 10月18日)。
| 論点 | 会社の説明 | 現地メディアなどの報道 |
|---|---|---|
| 出火のしかた | 車両から出火し、草原火災になった | 車の底に絡まった大量の枯れ草に火がついた |
| 立ち入りの目的 | 通信網を広げる可能性の調査と、現地の地形の確認 | 狩猟や、絶滅危惧種アムールイトウの釣りが目的だったとの報道も |
| 一行の規模 | 言及なし | 車5台・13人(新華社がEguur Newsを引用) |
| 立ち入った日 | 言及なし | 新華社(日本語版)は7日、オルタナは開通式の翌日(8日)と紹介 |
会社の声明は、ikon.mnによると「国境警備隊の拠点を4G回線につなぎ、国境検問所に光ファイバーを引いた工事の引き渡しに参加したあと、さらに通信網を広げられるか調べ、地形を確認していたところ、車両から火が出た」という内容です。新華社(10月18日)は、運転していたのは日本人だったと伝えています(現地メディアの報道として)。
これに対し、緊急事態担当の副首相は10月14日の説明で「この国境警備隊の拠点に光ファイバーを引く話は聞いたことがない。100kmもケーブルを引くのは経済的に成り立たない」と述べ、保護区に入る業務上の必要があったのか調べる考えを示しました。法務・内務相は、関わった人と国境検問所の管理部門の関係者に責任を取らせ、国の損失を賠償させると表明しています。
「とされる」と書く理由
車両から火が出たことは会社も認めていますが、なぜ保護区の中核区域にいたのか、許可はどう出たのか、目的は何だったのかは、報道ごとに内容が異なります。オルタナは、国境警備隊の司令官の許可で立ち入ったとする現地報道を紹介しています。どこに責任があるかは、警察の捜査結果を待つ必要があります。
オルタナによると、現地のテレビ局は会社の最高経営責任者がモンゴル国民に謝罪し、捜査結果と法令に基づいて損害を賠償する考えを示した映像を報じています。新華社によると、モンゴルの刑法は、特別保護区での無許可の狩猟や捕獲を禁じており、森林・草原火災を引き起こした場合も、故意か過失か、被害の大きさによって刑事罰の対象になり得るとしています。
モンゴルの草原火災は秋にも多い?統計で見る
モンゴル国家統計局は、森林・草原火災の件数を全国の月別と県別の年別で公表しています。当サイトがこのデータを集計しました。
過去10年の件数と焼失面積
| 年 | 全国の件数 | うち東部3県 | うちドルノド県 | 焼失面積(百万ha) |
|---|---|---|---|---|
| 2016 | 138件 | 89件 | 42件 | 3.2 |
| 2017 | 225件 | 75件 | 33件 | 0.59 |
| 2018 | 77件 | 32件 | 8件 | 0.07 |
| 2019 | 121件 | 46件 | 28件 | 0.31 |
| 2020 | 140件 | 51件 | 37件 | 0.25 |
| 2021 | 65件 | 46件 | 14件 | 33.69※ |
| 2022 | 179件 | 88件 | 52件 | 0.92 |
| 2023 | 101件 | 62件 | 41件 | 2.5 |
| 2024 | 137件 | 89件 | 49件 | ― |
| 2025 | 273件 | 97件 | 38件 | ― |
全国の件数と焼失面積は月別表の12月時点の累計、東部3県(ドルノド・スフバートル・ヘンティー)とドルノド県は県別表の値です(県別表は重複を含むため、全国の件数と合わない年があります)。焼失面積は2024年以降が未公表。※2021年の33.69は他の年と桁が大きく異なるため、比較には使っていません。
10年間の件数は年65〜273件と波がありますが、2025年は273件で、この10年で最も多い年でした。2026年は9月末時点で158件と、前年同期(243件)を下回っていました。今回の火災は10月なので、まだこの数字に入っていません。
地域で見ると、ドルノド県は10年間で342件と全国の約24%、東部3県では約46%を占めます。モンゴルは21の県と首都からなるので、東部の3県に火災が集中していることが分かります。
月別では10月が2番目に多い
月別の累計値の差から、2016〜2025年の10年分の発生件数を月ごとに足し合わせました。最も多いのは4月(348件)で、次が10月(232件)です。
1〜2月は合わせて4件。当サイトが月別の累計値の差から計算したもので、統計局の公表値そのものではありません。
春(3〜5月)は661件、秋(9〜11月)は344件でした。雪が解けたあとの春と、草が枯れて乾く秋の2回、火災が増える山があります。今回の火災は、まさにその秋の多発期に、立ち入りが制限された保護区の中で起きたことになります。
衛星データで見る火の勢い
NASAは、人工衛星が地表の高温の点を検知したデータをFIRMSで公開しています。誰でも取れる直近7日分のデータ(10月21日9時に取得)から、モンゴル国内の東経117度より東、つまりドルノド県の東端で検知された点を、衛星ごとに数えました。
| 日付(世界時) | VIIRS(Suomi NPP) | VIIRS(NOAA-20) | MODIS |
|---|---|---|---|
| 10/13 | 12 | 24 | 9 |
| 10/14 | 59 | 19 | 9 |
| 10/15 | 10 | 18 | 4 |
| 10/16 | 0 | 0 | 0 |
| 10/17 | 0 | 0 | 0 |
| 10/18 | 0 | 0 | 0 |
| 10/19 | 0 | 0 | 0 |
| 10/20 | 0 | 0 | 0 |
| 合計 | 81 | 61 | 22 |
3つのセンサーで合わせて164点を検知し、検知点はいずれも北緯47.0〜47.2度・東経119.5〜119.6度付近に集中していました。最後の検知は10月15日で、16日以降は1点もありません。16日朝に鎮火したという発表と合っています。
無料で取れる7日分のデータは世界時10月13日以降のため、出火直後の8〜12日は含まれていません。検知点の数は火の強さや雲、衛星が通る時刻に左右され、焼失面積を表すものではありません。国境は公開の境界データで判定しました。
なぜここまで広がった?日本の山火事と比べる
今回の焼失面積を、日本の面積や林野火災と比べました。日本の数字は令和7年版消防白書によります。
| 比べるもの | 面積 | 今回は何倍か |
|---|---|---|
| 今回の焼失面積 | 52.9万ha | ― |
| 千葉県の面積 | 51.6万ha | 1.03倍 |
| 東京都の面積 | 22.0万ha | 2.4倍 |
| 岩手県大船渡市の林野火災(2025年2月、速報値) | 約3,370ha | 約157倍 |
| 日本の林野火災の合計(2024年・831件) | 1,073ha | 約493倍 |
2025年2月の大船渡市の林野火災の約157倍、日本で1年間に起きた林野火災すべての約490倍が、1件で焼けた計算です。また、モンゴル国家統計局の公表値と比べると、2018年(0.07百万ha)、2019年(0.31百万ha)、2020年(0.25百万ha)は、全国の1年分の焼失面積を今回の1件が上回ります。
広がった理由として挙げられていること
- 秋の乾いた草と強い風:新華社は、車の下に絡まった枯れ草に火がつき、強風で一気に広がったと報じています。副首相も、消し止めたあとも乾燥と強風で再び燃え出すおそれがあると説明しています。
- 人が住んでいない奥地:保護区は居住地から90km以上離れ、沼地や丘陵で車も入りにくい地域です。消火の人員や機材を運ぶのに時間がかかります。
- さえぎるもののない草原:一般に、木の少ない開けた草原では、乾いた草を伝って風下へ火が速く進みます。山や谷の多い日本の林野とは燃え方の条件が異なります。
日本の林野火災は春が多い
消防白書によると、日本の林野火災は4月が最も多く、次いで1月、5月と、空気が乾いて風の強い時期に集中しています。モンゴルでも4月が最多という点は同じですが、モンゴルでは10月にもう一つの山があります。秋の草原に車で入ること自体が、火災の危険を高めることになります。
モンゴルの草原火災、今後どうなる?
新華社(10月20日)によると、環境・気候変動省は、被害は焼けた面積だけでなく、土や水、空気、植物、野生動物、希少な動植物のすみか、生態系の働きへの影響まで含めて評価すべきだとしています。作業部会が現地で調査を進めており、次の点をまとめる予定です。
- 生態系と財産への被害額
- 消火にかかった費用
- 生態系がどこまで回復できるか、守り・元に戻すために必要な対策
副首相は、野生動物が焼け死んでいれば別に評価すると述べています。保護区にはトナカイやクマ、イノシシなどの希少な野生動物がすむと説明されています(新華社日本語版)。
今後の焦点は、警察の捜査で①出火の詳しい経緯、②保護区に入った目的と許可の出し方、③誰がどこまで賠償するか、が明らかになるかどうかです。日本企業の子会社が関わったとされるだけに、日本でも続報に注目が集まりそうです。
国境付近の消火活動の報道(X)
中国の国営メディアの新華社とCGTNは10月12〜13日、モンゴルから広がった草原火災が中国の国境に迫り、内モンゴル自治区で消火活動が行われていると伝えました。いずれも中国の国営メディアの発信です。原因と責任については、モンゴル当局の捜査結果が出ていません。
More than 2,000 personnel were deployed in north China's Inner Mongolia Autonomous Region to contain a grassland fire spreading from Mongolia https://t.co/3pdWgLvILU pic.twitter.com/3wImuaMdHs
— China Xinhua News (@XHNews) October 12, 2026
Mongolia grassland fire nears Chinese border #WorldNow pic.twitter.com/UPOB1QoRX2
— CGTN (@CGTNOfficial) October 13, 2026
モンゴルの草原火災のよくある質問
Q. モンゴルの草原火災はいつ、どこで起きましたか?
A. 2026年10月8日(木)、モンゴル東部ドルノド県ハルハゴル郡のヌムルグ厳重保護区で起きました。最初の通報は現地時間11時55分で、16日朝に完全に消し止められました。
Q. 焼失面積はどのくらいですか?
A. モンゴル環境・気候変動省によると52万8,765.5ヘクタールです。東京都の約2.4倍で、千葉県よりも広い面積です。うち46万8,965.7ヘクタールが保護区の中で、保護区の79.8%が焼けました。
Q. 原因は日系企業の車ですか?
A. 現地メディアは、日本企業の子会社にあたる現地の通信会社の一行の車から火が出たと報じ、会社も車両から出火したと認めています。ただ、保護区に入った目的や経緯は報道ごとに異なり、警察が捜査中で公式の結論は出ていません(10月21日時点)。
Q. けが人や家畜の被害はありましたか?
A. 人的被害は報じられていません。副首相は、保護区は居住地から90km以上離れ、家畜はほとんどいないと説明しています。野生動物の被害は今後評価するとしています。
Q. モンゴルでは草原火災は多いのですか?
A. モンゴル国家統計局のデータでは、森林・草原火災は2016〜2025年に年65〜273件起きています。2025年は273件でこの10年で最多でした。月別では4月が最も多く、次が10月です。
Q. 日本の山火事と比べるとどのくらいの規模ですか?
A. 日本で2024年に起きた林野火災831件の焼失面積の合計は1,073ヘクタールです。今回の火災はその約490倍にあたり、2025年の岩手県大船渡市の林野火災(約3,370ヘクタール)の約157倍です。
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出典・参考資料
- モンゴル国家統計局:DISASTERS AND DAMAGES, by indicator, national total and by month、FOREST FIRES, by aimags and the capital and by year(10月21日取得)
- NASA:FIRMS(Fire Information for Resource Management System) 直近7日分の検知データ(10月21日9時取得)
- 総務省消防庁:令和7年版 消防白書「林野火災の現況と最近の動向」
- 国土地理院:全国都道府県市区町村別面積調(令和8年7月1日時点)
- 新華社「Massive Japanese-related reserve wildfire in E. Mongolia burns over half mln hectares of land」(10月20日)、同 Explainer(10月20日)、同 Roundup(10月18日)、新華社日本語版(10月19日)
- ikon.mn(10月12日)、ikon.mn(10月14日)
- オルタナ「モンゴルの自然保護区で大規模火災、出火原因は日系企業」(10月21日)
- 共同通信「モンゴルで大規模草原火災 日系企業の車が原因か」(南日本新聞、10月20日)
件数の月別・地域別の集計、衛星の検知点の集計、面積の比較は当サイトによるもので、各機関の公式統計ではありません。新華社は中国の国営通信社です。アイキャッチ写真:ノボホショコロトソ/Wikimedia Commons(CC BY 4.0)、モンゴル・ドンドゴビ県の草原(火災の現場ではありません)。トリミング・明るさ調整・文字入れあり。


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