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新種ホソオホラアナゴとは?深海魚の隠れた新種発見に10年かかった理由
北海道大学と東海大学の研究グループが、駿河湾などの深海で採れたウナギの仲間を新種「ホソオホラアナゴ」として記載しました。世界の三大洋に広く分布するとされてきたリュウキュウホラアナゴの中に、見た目ではほとんど区別できない別の種が「隠れていた」という発見です。論文や魚類の学名データベースを集計すると、この発見は珍しい出来事ではないことも見えてきます。
この記事の結論
- ホソオホラアナゴ(学名 Ilyophis fukuii Tashiro and Takami, 2026)は、ウナギ目ホラアナゴ科の深海魚です。北海道大学総合博物館の田城文人助教と東海大学海洋学部の髙見宗広講師が、2026年9月16日に日本魚類学会の英文誌Ichthyological Researchで新種として記載しました。
- リュウキュウホラアナゴとされてきた個体の中に尾の太い型と細い型があることに気づき、10年以上かけて80個体を超える標本を比べた結果、細い型が学名のない別種だと分かりました。
- Eschmeyer’s Catalog of Fishes(2026年10月20日更新)を集計すると、ホラアナゴ科の有効種59種のうち19種(32.2%)が過去10年(2017〜2026年)に記載されています。魚類全体の10.0%を大きく上回ります。
- 日本魚類学会のサイトにある「日本産追加種リスト」を数えると、2014〜2025年の12年間に日本の魚の名簿へ加わった397件のうち、新種として記載されたものは148件、年平均約12件でした。日本の海でも「新種の発見」は毎年続いています。
新種ホソオホラアナゴとは?発表のポイント

北海道大学と東海大学が2026年9月18日に出した共同プレスリリースによると、研究グループは駿河湾をはじめとする南日本の水深約1,500m以深から採集された標本に基づき、ホソオホラアナゴ Ilyophis fukuii Tashiro and Takami, 2026 を新種として記載しました。論文はIchthyological Research誌に2026年9月16日付でオンライン公開されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 標準和名・学名 | ホソオホラアナゴ Ilyophis fukuii Tashiro and Takami, 2026(ウナギ目ホラアナゴ科リュウキュウホラアナゴ属) |
| 論文 | A new cryptic species of the deep-sea eel genus Ilyophis (Synaphobranchidae) discovered within Ilyophis brunneus Gilbert 1891(田城文人・髙見宗広) |
| 掲載誌・DOI | Ichthyological Research(日本魚類学会の英文誌)/10.1007/s10228-026-01082-x/2026年9月16日オンライン公開 |
| 記載に使った標本 | 駿河湾から小笠原諸島沖・琉球列島沖で採集された20標本(プレスリリース) |
| ホロタイプ(基準標本) | 駿河湾・水深1,504〜1,559m で採集、北海道大学総合博物館所蔵 HUMZ 238227。パラタイプ19点(Catalog of Fishesの記録) |
| 日本での産地 | 南日本の太平洋岸沖、小笠原諸島、八丈島、奄美大島近海(日本魚類学会「日本産追加種リスト」) |
| 名前の由来 | 種小名 fukuii は、東海大学で深海魚の採集技術を築いた福井篤元教授への献名 |
和名の「ホソオ」は、細い尾をもつタイプであることにちなむと見られます(命名の由来として発表資料に明記されているのは種小名の献名のみです)。ホラアナゴ科は多くの種が水深200mより深い海底にすむ魚で、プレスリリースは、海底に沈んだ大型の海洋生物の遺骸を食べる「腐肉食者」を含み、深海の生態系を支える重要な生物群と考えられると説明しています。
リュウキュウホラアナゴとの違いは?尾の太さで見分ける
今回の新種は、何もないところから見つかったのではありません。リュウキュウホラアナゴ Ilyophis brunneus という、太平洋・大西洋・インド洋に広く分布するとされてきた種の「中」から見つかりました。こうした、見た目がよく似ていて同じ種として扱われてきた別種を隠蔽種(いんぺいしゅ)と呼びます。

駿河湾では東海大学の調査船「望星丸」「北斗」が定期的に深海魚を採っており、そこでごくまれに得られるリュウキュウホラアナゴを詳しく調べたところ、尾の部分の太さ(尾部の体高)が大きく違う「太尾型」と「細尾型」があることに気づいたのが出発点でした。プレスリリースによると、80個体を超える標本を比べた結果、2つの型は次の点で明確に異なっていました。
| 比べた形質 | 分かったこと(プレスリリースより) |
|---|---|
| 尾部の太さ | 稚魚から成魚まで、2つの型は尾の太さで明瞭に区別できた |
| 脊椎骨の数 | 型によって違いがあった |
| 鱗の形 | 型によって違いがあった(発表資料の参考図は「尾部の太さと鱗の形の違い」を示している) |
| 側線管の長さ | 型によって違いがあった |
脊椎骨の数などの具体的な値は論文本文に記載されていますが、この記事では未確認のため数値は載せていません。
決め手は1888年のガラパゴス沖の標本
2つの型のどちらが本物の「リュウキュウホラアナゴ」なのかを決めるには、学名の基準になった標本(ホロタイプ)と照らし合わせる必要があります。Eschmeyer’s Catalog of Fishesによると、リュウキュウホラアナゴのホロタイプは米国国立自然史博物館の1点だけ(USNM 44403)で、ガラパゴス諸島サン・クリストバル島付近の水深634ファゾム(約1,160m)で採られたものです。プレスリリースによると、この1888年採集の標本と照合した結果、太尾型がリュウキュウホラアナゴ、細尾型が学名のない未記載種と判明しました。
「見つけた」と「新種にする」は別の作業
違う型があると気づくだけでは新種になりません。①十分な数の標本で違いが安定しているか確かめる、②既存の学名の基準標本と照合して「まだ名前がない」ことを確かめる、③論文で特徴を記載して学名を付ける――という手順が必要です。今回はその①に、10年以上かかりました。
なぜ発見に10年もかかったのか
プレスリリースが挙げる最大の壁は、標本が少なかったことです。研究を始めた当初は2つの型の標本の体の大きさにばらつきがあり、十分な比較ができませんでした。南日本ではリュウキュウホラアナゴは水深約500〜2,000mで採集されますが、この深さから魚を採るのは容易ではありません。
そこで研究グループは2つの方向から標本を増やしました。
- 新たに採る:東海大学海洋学部には、福井篤元教授と髙見講師が長年の試行錯誤で築いた、小型の調査船と小型の採集機材(深海魚採集用のビームトロール)による深海魚採集の技術がありました。髙見講師が年に数回の定期調査を続け、少しずつ標本を増やしました。
- 博物館の標本を調べる:田城助教が、北海道大学のほか、国立科学博物館、高知大学、京都大学、国立台湾大学、台湾中央研究院、米国国立自然史博物館などに収蔵された深海魚コレクションを網羅的に調べました。
こうして稚魚から成魚までの80個体を超える形態データがそろい、ようやく「2つの型は体の大きさに関係なく別物だ」と言えるようになりました。深海魚の分類では、採集そのものの難しさが研究のスピードを決めていることが分かります。
- 1888年ガラパゴス沖で1匹が採集される米国の調査船アルバトロス号の調査。のちのリュウキュウホラアナゴのホロタイプ(Catalog of Fishes)。
- 1891年リュウキュウホラアナゴが記載されるGilbertが Ilyophis brunneus と命名。その後、三大洋に広く分布する種とされてきた。
- 10年以上前〜駿河湾の標本で「太尾型」「細尾型」に気づく標本不足のため、採集調査と博物館標本の調査を並行して続ける(プレスリリース)。
- 2026年9月16日論文がオンライン公開Ichthyological Research誌に、ホソオホラアナゴ Ilyophis fukuii の新種記載が掲載。
- 2026年9月17日日本魚類学会の「日本産追加種リスト」に掲載標本産地は南日本の太平洋岸沖、小笠原諸島、八丈島、奄美大島近海。
- 2026年9月18日北大・東海大が共同発表「深海魚との10年にわたる“かくれんぼ”」と題したプレスリリースを公表。
ホラアナゴ科は何種いる?3割が最近10年の新種
世界の魚の学名を網羅的に管理しているデータベースEschmeyer’s Catalog of Fishes(米カリフォルニア科学アカデミー、2026年10月20日更新)の「科ごとの種数」の表から、ホラアナゴ科と、身近なウナギ・アナゴの仲間の数字を抜き出しました。
| 科(英名) | 有効種数 | うち過去10年に記載 | 過去10年の割合 |
|---|---|---|---|
| ホラアナゴ科(Synaphobranchidae) | 59種 | 19種 | 32.2% |
| └ うちリュウキュウホラアナゴ亜科(Ilyophinae) | 45種 | 18種 | 40.0% |
| アナゴ科(Congridae) | 245種 | 40種 | 16.3% |
| ウツボ科(Muraenidae) | 231種 | 26種 | 11.3% |
| ウミヘビ科(Ophichthidae) | 377種 | 42種 | 11.1% |
| ウナギ科(Anguillidae) | 18種 | 0種 | 0.0% |
| 魚類全体 | 37,799種 | 3,771種 | 10.0% |
出典:Eschmeyer’s Catalog of Fishes「Genera/Species by Family/Subfamily」Table 1(2026年10月20日更新)の Valid Species と Species Last Ten Years (2017 – 2026) の列を当ブログで集計。割合は小数第2位を四捨五入。バーは40%を100%とした長さ。
ホラアナゴ科の有効種は59種で、そのうち19種(32.2%)が2017〜2026年に記載された種です。魚類全体では過去10年に記載された種は10.0%なので、ホラアナゴ科は3倍以上のペースで「新しい種」が見つかっていることになります。ホソオホラアナゴを含むリュウキュウホラアナゴ亜科に限ると、45種中18種、実に40%です。
対照的なのがウナギ科で、有効種18種のうち過去10年の新種は0種でした。人の目に触れやすいグループと、深海にすむグループとでは、「まだ分かっていない部分」の大きさがまるで違うと言えそうです。
リュウキュウホラアナゴ属は9種、うち3種が2022年以降
Catalog of Fishesでリュウキュウホラアナゴ属(Ilyophis)を検索すると、有効種として扱われているのは本種を含めて9種でした。記載年の順に並べます。
| 学名 | 記載年 | 分布(Catalog of Fishesの記載を要約) |
|---|---|---|
| Ilyophis brunneus(リュウキュウホラアナゴ) | 1891年 | 太平洋・インド洋に広く不連続に分布 |
| Ilyophis arx | 1976年 | 東部〜中部太平洋(ハワイ〜ガラパゴス) |
| Ilyophis blachei | 1982年 | 北東大西洋、南大西洋、南インド洋 |
| Ilyophis nigeli(ユキホラアナゴ) | 1997年 | 北西太平洋(日本、オホーツク海) |
| Ilyophis robinsae | 1997年 | フィリピン、中部太平洋 |
| Ilyophis saldanhai | 1999年 | 大西洋の中央海嶺(熱水噴出域)、東太平洋海膨 |
| Ilyophis singularis | 2022年 | 南シナ海北東部 |
| Ilyophis maclainei | 2024年 | 北東大西洋(アイルランド南西沖)、南極海? |
| Ilyophis fukuii(ホソオホラアナゴ) | 2026年 | 大西洋中央海嶺、米国東岸沖、タスマニア、南日本 |
出典:Eschmeyer’s Catalog of Fishes(2026年10月20日更新)の「Current status: Valid」の種を当ブログで整理。和名は本村浩之「日本産魚類全種目録」による。
9種のうち3種が2022年以降の記載です。2022年の I. singularis(南シナ海)は、今回と同じ田城助教が台湾の研究者と記載した種です。9種のうち6種は1990年代以降に名前が付いたもので、深海のウナギの仲間の分類がいまも進行中であることが分かります。
日本の魚の新種はどれだけ増えている?12年分を数えた
日本魚類学会のサイトには、2013年刊行の図鑑『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』(359科4,210種を掲載)以降に、日本産として新たに加わった魚を論文ごとに記録した「日本産追加種リスト」があります(高知大学の遠藤広光教授が個人で文献を集めて掲載しているもので、学会が全件を承認したものではないと注記されています)。2025年6月までの一覧と、その後の更新ページの計502件を1件ずつ読み取り、年ごとに数えました。
| 掲載年 | 追加された件数 | うち新種 | うち日本初記録など |
|---|---|---|---|
| 2014年 | 30件 | 11件 | 19件 |
| 2015年 | 25件 | 9件 | 16件 |
| 2016年 | 16件 | 9件 | 7件 |
| 2017年 | 37件 | 11件 | 24件 |
| 2018年 | 38件 | 15件 | 23件 |
| 2019年 | 31件 | 14件 | 16件 |
| 2020年 | 40件 | 14件 | 24件 |
| 2021年 | 38件 | 16件 | 22件 |
| 2022年 | 45件 | 14件 | 31件 |
| 2023年 | 27件 | 9件 | 18件 |
| 2024年 | 33件 | 11件 | 22件 |
| 2025年 | 37件 | 15件 | 22件 |
| 12年計 | 397件 | 148件 | 244件 |
集計方法:各項目の「命名年」と「日本から報告した文献の発表年」が同じ(または命名年の方が新しい)ものを「新種」、命名年の方が古いものを「日本初記録など」とした当ブログの分類です。命名年が読み取れない5件(2014〜2025年)は内訳から除いています。1項目に複数種が載っている場合も1件と数えています。
2014〜2025年の12年間で、日本の魚の名簿に加わったのは397件、年平均約33件。そのうち新種として記載されたものが148件(年平均約12件)、すでに外国で名前の付いていた魚が日本で初めて見つかった「日本初記録」などが244件でした。毎年10件前後の新種が日本の海や川から記載され続けていることになります。
2026年分(10月20日掲載分まで)は31件で、うち新種は8件です。ホソオホラアナゴのほか、相模湾などのウツボ2種(アワウツボ・サガミウツボ)、小笠原諸島北方のイナズマホシエソ、紀伊半島南方のホッポウクジラウオ、相模湾などのチョウチョウクジラウオ、ホソオビサンゴイワシといった、深い海にすむグループの名前が目立ちます。
日本産の魚は4,869種に
鹿児島大学総合研究博物館の本村浩之教授が公開している「日本産魚類全種目録」は、2020年5月の初版で4,554種、2026年8月27日版で4,869種を数えています(学名の変更や削除も反映した数で、追加分の単純な合計ではありません)。この目録のエクセル版(ver.42)を集計すると、4,869種のうち2000年以降に学名が付いた種が622種(12.8%)、2020年以降に限っても160種ありました。
ホラアナゴ科は、この目録に12種(うち1種は学名の付いていない「ソデアナゴ Synaphobranchus sp.」)が載っており、8月27日版の後に記載されたホソオホラアナゴを加えると13種になります。13種のうち2000年以降に学名が付いたのは、アンコクホラアナゴ(2014年)、スルガアナゴ(2018年)、ホソオホラアナゴ(2026年)の3種です。
| 和名 | 学名 | 記載年 |
|---|---|---|
| イラコアナゴ | Synaphobranchus kaupii | 1862年 |
| ソコアナゴ | Histiobranchus bathybius | 1877年 |
| ホラアナゴ | Synaphobranchus affinis | 1877年 |
| コンゴウアナゴ | Simenchelys parasitica | 1879年 |
| モトソデアナゴ | Synaphobranchus brevidorsalis | 1887年 |
| リュウキュウホラアナゴ | Ilyophis brunneus | 1891年 |
| アサバホラアナゴ | Dysomma anguillare | 1923年 |
| ヒレジロアナゴ | Meadia abyssalis | 1938年 |
| ユキホラアナゴ | Ilyophis nigeli | 1997年 |
| アンコクホラアナゴ | Haptenchelys parviocularis | 2014年 |
| スルガアナゴ | Dysommina orientalis | 2018年 |
| ホソオホラアナゴ | Ilyophis fukuii | 2026年 |
| ソデアナゴ | Synaphobranchus sp. | 未記載 |
出典:本村浩之「日本産魚類全種目録」エクセル版 ver.42(2026年8月27日)のホラアナゴ科12種+ホソオホラアナゴ。記載年は学名の命名年。
隠蔽種の発見はなぜ増えている?DNAと博物館標本
今回の発表には、隠蔽種の研究で重要な2つの道具が両方登場します。
1. DNAの「バーコード」で海域をまたいで比べる
プレスリリースによると、ホソオホラアナゴと形がよく一致する個体が北西大西洋から、DNA塩基配列(ミトコンドリアDNAのCOI領域の一部)がほぼ一致する個体がタスマニア沖や大西洋中央海嶺から見つかりました。COI領域は、動物の種を見分ける「DNAバーコーディング」で広く使われている部分です。研究グループはこれらもホソオホラアナゴと判断しましたが、本当に同じ種なのか、さらに別の隠蔽種なのかは今後の課題だとしています。Catalog of Fishesも、本種の分布を「大西洋中央海嶺、米国東岸沖、タスマニア、南日本」と記録しています。
2. 博物館に眠る標本を見直す
今回の80個体超の多くは、国内外の博物館や大学に保管されていた標本です。決め手になったのも、1888年に採集されて米国の博物館に保管されていたホロタイプでした。深海魚は新しく採るのが難しい分、過去の調査で採られて保管されてきた標本が「再発見」の舞台になります。
「世界中にいる1種」は本当に1種なのか
プレスリリースは、浅い海の魚では世界各国で分類学の研究が進み、世界中に分布すると考えられていた種が地域ごとに別の種だった例が次々と明らかになっている一方、深海魚では採集の難しさから研究が十分に進んでいないと指摘しています。リュウキュウホラアナゴについても、本当に世界中に分布しているのかという疑問が生じたとしています。
日本は世界有数の深海魚の水産利用国でもあります。プレスリリースは、種や海域ごとの集団(系群)を正しく理解することが、水産資源の持続的な利用や保全にもつながると述べています。ホラアナゴ科の多くは食卓にのぼる魚ではありませんが、「どこに何種いるのか」という基礎の情報が、深海の生態系や資源を考える出発点になります。
なお、科学ニュースサイトのマイナビ TECH+(2026年9月29日)もこの発表を詳しく紹介しています。
新種発見の報道(X)
朝日新聞は、これまでリュウキュウホラアナゴと同じ種として扱われていた魚が独立した種と確かめられ、「ホソオホラアナゴ」と名付けられたと伝えました。
深海魚の「隠れた新種」を発見 「ホソオホラアナゴ」と命名:朝日新聞
《「リュウキュウホラアナゴ」と同一種として扱われていただけで、独立した種であることが今回、確認された。こうした「隠れた種」は、正式には「隠蔽(いんぺい)種」と呼ばれる。》https://t.co/xkskhflpCW— 朝日新聞環境取材チーム (@asahi_kankyo) September 24, 2026
ホソオホラアナゴのよくある質問
Q. ホソオホラアナゴとはどんな魚ですか?
A. ウナギ目ホラアナゴ科の深海魚で、学名は Ilyophis fukuii Tashiro and Takami, 2026 です。駿河湾をはじめ南日本の水深約1,500m以深で採集された標本に基づき、北海道大学の田城文人助教と東海大学の髙見宗広講師が2026年9月に新種として記載しました。
Q. リュウキュウホラアナゴとどう違うのですか?
A. プレスリリースによると、尾の部分の太さ(尾部の体高)が大きく違い、ホソオホラアナゴは「細尾型」にあたります。さらに脊椎骨の数、鱗の形、側線管の長さにも違いがあります。1888年にガラパゴス沖で採られたリュウキュウホラアナゴの基準標本と照合し、太尾型がリュウキュウホラアナゴ、細尾型が未記載種と判明しました。
Q. 論文はどこに掲載されましたか?
A. 日本魚類学会の英文誌 Ichthyological Research に、2026年9月16日付でオンライン公開されました。論文名は「A new cryptic species of the deep-sea eel genus Ilyophis (Synaphobranchidae) discovered within Ilyophis brunneus Gilbert 1891」、DOIは10.1007/s10228-026-01082-x です。
Q. なぜ発見までに10年以上かかったのですか?
A. 水深500〜2,000mの深海から魚を採るのが難しく、当初は比較に十分な標本がなかったためです。東海大学の調査船による年数回の採集と、国内外の博物館・大学の標本調査を続け、稚魚から成魚まで80個体を超えるデータを集めてようやく違いを確かめられました。
Q. 隠蔽種とは何ですか?
A. 見た目がよく似ているため同じ種として扱われてきたものの、実は別の種であるものを指します。形をくわしく測ったり、DNAの塩基配列を比べたりすることで見つかります。ホソオホラアナゴは、広い範囲に分布するとされてきたリュウキュウホラアナゴの中に隠れていた隠蔽種です。
Q. ホラアナゴ科は世界に何種いますか?
A. Eschmeyer’s Catalog of Fishes(2026年10月20日更新)では有効種が59種で、そのうち19種(32.2%)が2017〜2026年に記載された種です。日本産は、本村浩之「日本産魚類全種目録」の12種にホソオホラアナゴを加えた13種になります。
Q. 日本では毎年どれくらい魚の新種が見つかっていますか?
A. 日本魚類学会のサイトの「日本産追加種リスト」を当ブログで数えると、2014〜2025年の12年間に新種として記載されたものは148件、年平均約12件でした。日本初記録などを含めると397件、年平均約33件の魚が日本の名簿に加わっています。
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出典・参考資料
- 北海道大学・東海大学:プレスリリース「深海魚との10年にわたる“かくれんぼ”~ホラアナゴ科の隠蔽種の発見と新種記載~」(2026年9月18日、PDF)
- Tashiro F, Takami M (2026) A new cryptic species of the deep-sea eel genus Ilyophis (Synaphobranchidae) discovered within Ilyophis brunneus Gilbert 1891. Ichthyological Research
- 日本魚類学会:日本産追加種リスト「Ilyophis fukuii Tashiro and Takami, 2026 ホソオホラアナゴ」/日本産追加種リスト(2025年7月以降)/2025年7月までの日本産追加種リスト
- Fricke R, Eschmeyer WN, Van der Laan R (eds):Eschmeyer’s Catalog of Fishes: Genera/Species by Family/Subfamily/Species in the genus Ilyophis(2026年10月20日更新版を参照)
- 本村浩之:日本産魚類全種目録(Online ver.42、2026年8月27日)
- マイナビ TECH+:深海魚の新種「ホソオホラアナゴ」10年かけ発見 北大・東海大の共同研究成果(2026年9月29日)
数値は2026年10月23日時点で公表されていたものです。科別の種数・追加種の件数は、各データベースの公開データを当ブログが集計したもので、各機関の公式統計ではありません。写真はWikimedia Commonsのフリーライセンス画像(一部リサイズ・トリミング)で、いずれもホソオホラアナゴ本人ではありません:NOAA Okeanos Explorer Program「Expn0014」(パブリックドメイン)、D. Ross Robertson, Arturo Angulo, Carole C. Baldwin, Diane Pitassy, Amy Driskell, Lee Weigt, Ignacio J. F. Navarro「Ilyophis brunneus」(CC BY 3.0)。
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