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久留里線の復旧断念はなぜ?上総亀山まで1日76人・6年で赤字15億円超
JR東日本は10月23日、台風25号の被害で運転を見合わせている久留里線の久留里~上総亀山間(9.6km)について、鉄道での復旧を断念すると発表しました。この区間は2027年4月1日に廃止される予定で、復旧工事には着手から半年ほどかかると分かったためです。廃止の前日まではバスなどによる代行輸送が続きます。JR東日本が公表している線区ごとの経営情報を6年度分さかのぼって表にし、なぜ鉄道を戻さないのか、廃止後の交通はどうなるのかを整理しました。
この記事の結論
- 上総松丘~上総亀山間で盛土の大規模な崩壊が3か所(合計約5,600㎥)あり、復旧には工事に着手してから半年ほどかかります。発表日から廃止予定日までは160日しかなく、工事が終わる前に廃止日が来てしまう計算です。
- 廃止予定日(2027年4月1日)そのものは変わらず、2027年3月31日まではバスなどの代行輸送が続きます。列車はこのまま走らずに廃止を迎えることになり、報道では「事実上の廃線前倒し」とも伝えられています。
- JR東日本の開示資料を6年度分並べると、この区間の1日あたりの平均通過人員は54~85人、運輸収入は年1~3百万円に対して営業費用は2~3億円台で、赤字は6年度で合計15.7億円超でした。2024年度の営業係数6,694円は、開示された71区間の中で7番目に高い水準です。
- 廃止後は君津市が代替バスを運行し、JR東日本が18年分の費用として20億円を出します。残る木更津~久留里間では2027年春から10駅でSuicaが使えるようになる予定です。
久留里線の復旧断念とは?JR東日本が10月23日に発表した内容
久留里線は、内房線の木更津駅から房総半島の内陸にある上総亀山駅までを結ぶ路線です。今回、鉄道での復旧をあきらめたのは、終点側の久留里~上総亀山間です。JR東日本の発表の要点は次のとおりです。
| 項目 | 内容(10月23日の発表) |
|---|---|
| 区間 | 久留里線 久留里~上総亀山(千葉県君津市、9.6km)。途中駅は平山・上総松丘 |
| 被害 | 列車の運行に影響する被災が多数。特に上総松丘~上総亀山間で大規模な盛土崩壊が3か所 |
| 復旧にかかる期間 | 工事着手から半年程度(詳細調査と検討の結果) |
| 廃止の手続き | 2026年3月9日付で国土交通大臣に鉄道事業の廃止を届け出済み |
| 廃止予定日 | 2027年4月1日(変更なし) |
| 結論 | 「鉄道の復旧を断念せざるを得ない」 |
| それまでの足 | 2027年3月31日までバス等による代行輸送を続ける |
| 今後 | 2026年2月16日に君津市と結んだ基本合意書に基づき、持続可能な公共交通づくりを支援 |
出典:JR東日本「台風25号の影響による久留里線(久留里・上総亀山間)の復旧に向けた検討結果について」(2026年10月23日)。途中駅はJR東日本千葉支社の2月17日の発表資料の路線図によります。
崩れた盛土は3か所で約5,600㎥
発表資料の別紙には、上総松丘~上総亀山間の主な被災箇所が写真つきで示されています。国道465号と小櫃川(おびつがわ)に沿った区間で、線路を支える盛土が大きく崩れました。
| 箇所 | 被害の種類 | 崩れた長さ | 崩れた土の量 |
|---|---|---|---|
| ① | 盛土崩壊 | 約60m | 約3,800㎥ |
| ② | 盛土崩壊 | 約20m | 約700㎥ |
| ③ | 土砂流入・盛土崩壊 | 約60m | 約1,100㎥ |
| 合計 | 3か所 | 約140m | 約5,600㎥ |
出典:JR東日本の発表資料の別紙「久留里線(久留里・上総亀山間)の主な被災箇所」から当サイトが転記・合計。①~③は上総松丘側からの順です。
いちばん大きい①は、長さ約60mにわたって約3,800㎥の土が崩れています。3か所の合計約5,600㎥は、乗りものニュースなども伝えている数字です(同記事の見出しは「平方メートル」ですが、資料の単位は㎥=立方メートルです)。
9月25日の時点では「復旧するつもり」だった
実は、被災直後のJR東日本は復旧に前向きでした。日本経済新聞によると、千葉事業本部長は9月25日の記者会見で、上総松丘~上総亀山間について「現時点では復旧するつもり」と述べています。この時点では、枕木を支える砂利の流出が数か所で確認されたと説明されていました。
10月23日の発表では、上総松丘~上総亀山間で大規模な盛土崩壊が3か所あったとされ、詳細な調査と検討の結果、工期が半年程度に及ぶことが判明したと説明されています。千葉日報によると、本部長は10月23日の会見で「被災規模が大きく断念せざるを得ない。利用者には申し訳ない」と話しています。
なぜ鉄道で復旧しないのか?「工期半年」と「廃止まで5か月」
理由は単純で、工事が終わる前に廃止予定日が来てしまうからです。発表日の10月23日から廃止予定日の2027年4月1日までは160日。これに対して、復旧には工事に着手してから半年程度かかります。仮に発表日にすぐ着手できたとしても、半年後は2027年4月下旬で、廃止予定日を過ぎます。
しかも、この区間は以前から廃止が決まっていました。数か月かけて盛土を作り直しても、列車を走らせられる期間がほとんど、あるいはまったく残りません。JR東日本は、こうした「復旧に要する期間と廃止予定日」を踏まえて断念したと説明しています。
廃止日は早まるのか?
鉄道事業法では、鉄道の廃止は廃止の日の1年前までに国に届け出る決まりです。久留里~上総亀山間は2026年3月9日に届け出ており、廃止予定日は2027年4月1日のままです。今回の発表は廃止日を変えるものではなく、廃止日までの期間を列車ではなく代行輸送でつなぐという内容です。報道で使われている「前倒し」は、列車の運行がこのまま終わるという意味だと受け取るのが正確です。
廃止決定から被災、断念までの流れ
- 1936年久留里線が上総亀山まで全線開業千葉日報によると、全線開業から約90年にわたって地域を支えてきました。
- 1987年度平均通過人員は1日823人JR東日本の発足時の数字。2024年度は76人で、約9割減っています。
- 2023年3月JRが県と市に交通体系の検討を申し入れ鉄道やバスを前提としない総合的な交通体系の検討を、千葉県と君津市に申し入れました(君津市の会議録)。
- 2024年11月27日JRが「バス等への転換が最適」と表明千葉県が設けた検討会議の報告書などを踏まえた判断です。
- 2026年2月16日君津市と基本合意書を締結代替バスの費用として18年分20億円をJRが拠出することなどで合意しました。
- 2026年3月9日国土交通大臣に廃止を届け出廃止予定日は2027年4月1日。関東運輸局が翌10日に意見聴取の公示を出しました。
- 9月21~22日台風25号に伴う大雨千葉日報は、8月の記録的豪雨、9月6~7日の大雨に続いて千葉県内に大きな被害が出たと伝えています。
- 9月25日JRは「現時点では復旧するつもり」日本経済新聞が伝えた千葉事業本部長の発言です。
- 10月23日鉄道での復旧を断念同じ会見で、内房線の姉ケ崎~長浦間は11月9日に運転を再開すると発表されました。
- 2027年3月31日代行輸送の最終日(予定)廃止予定日の前日まで、JRがバス等で代行輸送を続けます。
- 2027年4月1日久留里~上総亀山間の廃止予定日このあとは君津市が運行する代替バスなどに切り替わります。
出典:JR東日本の発表(10月23日・2月17日)、関東運輸局の公示(3月10日)、君津市地域公共交通会議の会議録(2025年12月22日)、千葉日報(2月17日)・同(10月23日)、日本経済新聞(9月25日)、時事通信(10月23日)
なお、久留里線の木更津~久留里間も台風25号で一時運休しましたが、すでに運転を再開しています。鉄道ジャーナリストの梅原淳氏のYahoo!ニュースの記事によると、10月22日時点でJR東日本の千葉エリアで不通が続いていたのは、内房線の姉ケ崎~長浦間(5.4km)と久留里線の久留里~上総亀山間(9.6km)の2区間でした。
久留里~上総亀山の利用者と赤字は?6年度分を表にした【独自集計】
JR東日本は2019年度分から、1日の平均通過人員が2,000人未満の線区について「ご利用の少ない線区の経営情報」を毎年公表しています。各年度の資料から久留里~上総亀山間の行だけを抜き出して並べました。
| 年度 | 平均通過人員 | 運輸収入 | 営業費用 | 収支 | 営業係数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2019 | 85人 | 2 | 344 | △342 | 15,546円 |
| 2020 | 62人 | 1 | 276 | △274 | 17,074円 |
| 2021 | 55人 | 1 | 281 | △279 | 19,110円 |
| 2022 | 54人 | 1 | 246 | △245 | 16,821円 |
| 2023 | 64人 | 1 | 237 | △235 | 13,580円 |
| 2024 | 76人 | 3 | 202 | △199 | 6,694円 |
| 6年度計 | - | 9 | 1,586 | △1,574 | - |
単位:運輸収入・営業費用・収支は百万円(JR東日本の資料どおり切り捨て値)。平均通過人員は1日・1kmあたりの人数。出典:JR東日本「ご利用の少ない線区の経営情報」2019・2020年度分・2021年度分・2022年度分・2023年度分・2024年度分。6年度計は当サイトの集計です。
6年度を合わせると、運輸収入は9百万円しかないのに、営業費用は1,586百万円かかり、赤字は合計で1,574百万円(約15.7億円)になりました。資料の数字は百万円未満を切り捨てているため、実際の赤字はこれより少し大きいとみられます。
「営業係数」は、100円の運輸収入を得るのに何円の費用がかかったかを示す数字です。2021年度には19,110円に達していました。2024年度は6,694円と大きく下がっていますが、これは運輸収入が3百万円に増え、営業費用が2億円ほどに減ったためです。それでも、100円を稼ぐのに約6,700円かかっている計算です。
2024年度は71区間のうち営業係数が7番目に高い
2024年度分の資料は、36路線・71区間を対象にしています。その中で久留里~上総亀山間の営業係数6,694円は高い方から7番目、平均通過人員76人は少ない方から5番目でした(当サイト調べ)。営業係数がこれより高いのは、陸羽東線の鳴子温泉~最上(22,360円)、津軽線の中小国~三厩(10,649円)、飯山線の戸狩野沢温泉~津南(10,460円)などで、上位には大雨の被災で代行輸送が続く区間も含まれています。
| 2024年度 | 平均通過人員 | 収支 | 営業係数 |
|---|---|---|---|
| 久留里~上総亀山(9.6km) | 76人 | △199 | 6,694円 |
| 木更津~久留里(22.6km) | 1,021人 | △767 | 1,253円 |
収支は百万円。出典:JR東日本「ご利用の少ない線区の経営情報(2024年度分)」。順位は同資料の71区間の数字から当サイトが算出。
同じ久留里線でも、存続する木更津~久留里間の平均通過人員は1,021人で、廃止される区間の約13倍です。それでも営業係数は1,253円で、こちらも赤字です。JR東日本の資料によると、2024年度の開示対象71区間はすべて赤字でした。
2024年度に人数が増えた理由は書かれていない
平均通過人員は2022年度の54人から2024年度は76人に増えています。2024年11月にバスへの転換方針が表明されたあとの年度ですが、JR東日本の資料には増えた理由の説明はありません。この記事では理由を推測せず、数字の紹介にとどめます。
被災したまま廃止は初めて?津軽線も同じ2027年4月1日
災害で止まった区間が、そのまま鉄道に戻らずに廃止される例は、JR東日本の中にもあります。津軽線の中小国~三厩間(青森県)です。
- 2022年8月の豪雨で被災:JR東日本の2024年度分の経営情報には、津軽線(中小国~三厩)と米坂線(今泉~小国、小国~坂町)について「2022年8月の豪雨による被災以降、バス等による代行輸送を行っております」と書かれています。
- 2026年3月24日に廃止を届け出:東北運輸局の公示によると、JR東日本は津軽線の新中小国信号場~三厩駅間(22.2km)の廃止を届け出ました。廃止予定日は2027年4月1日で、久留里~上総亀山間と同じ日です。
津軽線は被災から廃止まで、列車が走らないまま4年半以上が過ぎることになります。久留里線の場合は、廃止がすでに決まっていた区間が、廃止予定日の約半年前に被災したという順番で、事情は少し違います。それでも、「列車の最後の運行」を迎えないまま線路が役目を終える点は共通しています。乗りものニュースは、久留里線について「ラストランなし」と伝えました。
出典:JR東日本「ご利用の少ない線区の経営情報(2024年度分)」の注記、東北運輸局「東日本旅客鉄道株式会社の鉄道事業の一部を廃止する届出について」(2026年3月24日)、乗りものニュース(10月23日)
廃止後はどうなる?代替バス・20億円・Suicaの予定
2027年4月1日以降は、鉄道に代わって君津市が運営・運行するバスなどが地域の足になります。JR東日本と君津市が2026年2月16日に結んだ基本合意書の内容は次のとおりです。
- 費用:JR東日本が、君津市が運営・運行する自動車交通の18年間分の費用として20億円を拠出します。単純に割ると1年あたり約1.11億円です(当サイト計算)。
- 地域貢献:久留里駅の交通結節点整備と松丘・亀山地区の交通拠点整備、バス停留所の環境整備、乗り換え案内用のデジタルサイネージ、地域のイベントに合わせた輸送の支援。このほか沿線の観光振興なども行います。
- 線路や土地:廃止予定区間の土地や資産は、廃止日以降もJR東日本が管理します。
君津市地域公共交通会議(2025年12月22日)の会議録によると、JR東日本は代替バスについて「現行の運行本数(8.5往復/日)以上を確保する」など、利便性が上がる内容だと説明しています。具体的なルートや時刻、運賃は君津市の発表で確認してください。
木更津~久留里間は2027年春からSuica
残る木更津~久留里間では、祇園・上総清川・東清川・横田・東横田・馬来田・下郡・小櫃・俵田・久留里の10駅が2027年春からSuicaの利用エリアに入る予定です。簡易Suica改札機を置くとしています。
いま上総亀山方面へ行くには
2027年3月31日までは、JR東日本がバスなどによる代行輸送を続けます。乗り場や時刻は変わることがあるため、出かける前にJR東日本の運行情報で最新の案内を確認するのが確実です。
出典:JR東日本千葉支社「JR久留里線の廃止予定区間における代替交通の費用負担等に関する基本合意書」の締結について(2026年2月17日)、同「久留里線におけるSuicaご利用エリアの拡大について」、令和7年度第3回君津市地域公共交通会議 会議録
久留里線の復旧断念についてよくある質問
Q. 久留里線は全線が廃止になるのですか?
A. 廃止されるのは久留里~上総亀山間(9.6km)だけです。木更津~久留里間は存続し、台風25号のあと運転を再開しています。2027年春からは木更津~久留里間の10駅でSuicaが使えるようになる予定です。
Q. 久留里~上総亀山間の列車はもう走らないのですか?
A. JR東日本は10月23日、この区間の鉄道での復旧を断念すると発表しました。廃止予定日の2027年4月1日の前日までは、バスなどによる代行輸送が続きます。
Q. なぜ復旧をあきらめたのですか?
A. 上総松丘~上総亀山間で盛土の大規模な崩壊が3か所あり、復旧には工事着手から半年程度かかると分かったためです。この区間は2027年4月1日に廃止される予定で、工事が終わる前に廃止日が来てしまうことから、JR東日本は断念したと説明しています。
Q. 廃止の日は早まるのですか?
A. 10月23日時点の発表では、廃止予定日は2027年4月1日のままです。列車の運行はこのまま終わりますが、廃止日までは代行輸送で対応するとしています。
Q. どれくらい利用されていたのですか?
A. JR東日本の資料によると、1日あたりの平均通過人員は2024年度が76人で、JR発足時の1987年度(823人)から約91%減りました。2019~2024年度の6年度分の赤字は合計で1,574百万円(約15.7億円)です。
Q. 廃止後はどうやって移動するのですか?
A. JR東日本と君津市の基本合意書に基づき、君津市が運営・運行する代替バスなどが走ります。JR東日本は18年分の費用として20億円を出します。君津市の会議録によると、JRは代替バスで現在の運行本数(1日8.5往復)以上を確保すると説明しています。
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出典・参考資料
- JR東日本:台風25号の影響による久留里線(久留里・上総亀山間)の復旧に向けた検討結果について(2026年10月23日)、基本合意書の締結について(2026年2月17日)、Suicaご利用エリアの拡大について(同)
- JR東日本「ご利用の少ない線区の経営情報」:2019・2020年度分、2021年度分、2022年度分、2023年度分、2024年度分
- 国土交通省:関東運輸局「鉄道事業の一部廃止に係る意見聴取の公示について」(2026年3月10日)、東北運輸局「東日本旅客鉄道株式会社の鉄道事業の一部を廃止する届出について」(2026年3月24日)
- 君津市:令和7年度第3回君津市地域公共交通会議 会議録(2025年12月22日)
- 報道:Impress Watch(10月23日)、乗りものニュース(10月23日)、千葉日報(10月23日)、時事通信(10月23日、Infoseekニュース掲載)、日本経済新聞(9月25日)、梅原淳「台風25号で長期運休となったJR東日本千葉地区の鉄道についての続報」(Yahoo!ニュース エキスパート、10月22日)、千葉日報(2月17日)
6年度分の推移表、赤字の合計、71区間の中での順位、崩れた盛土の合計、日数の計算は、各資料をもとに当サイトが集計・計算したものです。内容は2026年10月23日時点の情報です。アイキャッチ写真:上総亀山駅に停車するキハE130形(2015年7月撮影)、DAJF(Wikimedia Commons、CC BY-SA 4.0)をトリミング・明るさ調整し文字を加えたもの。


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