FX・ポンド円
ポンド円はなぜ下落?英国債利回り19年ぶり高水準と悪い金利上昇
ポンド円が下がっています。7月に2007年末以来の219円台をつけた相場は、9月30日に一時206.87円まで下落しました。同じころ、英国の10年国債の利回りは5.38%と2007年7月以来の高さに上がっています。ふつうは金利が上がる国の通貨は買われますが、いまのポンドは逆です。イングランド銀行(BoE)の国債利回りとFRBの為替データを日ごとに突き合わせると、この「金利が上がるのに通貨が売られる」動きは、2022年のトラス・ショックのときと同じ割合で起きていました。
この記事の結論
- ポンド円は10月2日のNY終値で209.07円。8月末の216.43円から3.4%、7月16日の2026年高値219.02円(NY正午)から4.5%下がりました。下落の約66%はポンドの対ドルでの下落、約34%が円高です。
- 英10年国債の利回りは年初の4.52%から9月28日に5.38%へ上がり、2007年7月以来の高さになりました。20年債(ゼロクーポン)の5.98%は1998年2月以来です。
- 2010年代は、利回りが上がった日にポンドが下がる割合は42%で、相関もプラス(+0.24)でした。ところが2026年9月は利回りが上がった10日のうち7日でポンドが下落。2022年のトラス・ショックの期間と同じ7割です。財政への不安で売られる「悪い金利上昇」の形が出ています。
- 9月は日米欧豪の中央銀行がそろって利上げしたなかで、BoEだけが3.75%で据え置き(6対3、3人は利上げを主張)ました。10月28日にはバーナム政権で初めての予算、11月5日に次のBoEの会合があります。
- DMM FXのポンド円の買いスワップは、9月1日の1日161円から10月2日は140円に減りました(1万通貨)。8月末からの値下がり73,600円は、スワップ約526日分にあたります。
ポンド円はいくら?2007年以来の219円台から10円下落
FRBが公表している1971年以降の正午レート(ニューヨーク時間)から、円とポンドの対ドルレートを掛け合わせて「1ポンド=何円」を自分で計算しました(FRBの最新値は9月25日分。それ以降はYahoo Financeの1時間足のNY終値です)。
7月16日の219.02円は、NY正午レートで2007年12月31日以来、約18年半ぶりの高値でした。それでも、リーマン・ショック前のピーク(2007年7月17日の約250円)にはまだ30円以上届いていません。高値をつけた4日後の7月20日に、英国ではアンディ・バーナム氏が首相に就任し、財務相もリーブス氏からジョン・ヒーリー氏に代わりました。
月末ごとのポンド円・ポンド・ドル円
| 時点 | ポンド円 | ポンド(対ドル) | ドル円 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月末 | 210.85円 | 1.3447ドル | 156.80円 |
| 2026年1月末 | 211.89円 | 1.3729ドル | 154.34円 |
| 2026年2月末 | 209.97円 | 1.3455ドル | 156.05円 |
| 2026年3月末 | 209.73円 | 1.3184ドル | 159.08円 |
| 2026年4月末 | 212.74円 | 1.3580ドル | 156.66円 |
| 2026年5月末 | 214.58円 | 1.3476ドル | 159.23円 |
| 2026年6月末 | 215.60円 | 1.3259ドル | 162.61円 |
| 2026年7月末 | 214.39円 | 1.3470ドル | 159.16円 |
| 2026年8月末 | 216.45円 | 1.3550ドル | 159.74円 |
| 10月2日(NY終値)Yahoo Finance | 209.07円 | 1.3240ドル | 157.83円 |
ポンドの対ドルレートは2026年の大半を1.33〜1.37ドル台で過ごしてきましたが、10月2日は1.3240ドルと1.32ドル台まで下がりました。FRBの正午レートでの今年の最安値は6月24日の1.316ドルで、そこに近づいています。
※FRBのレートはニューヨーク正午、Yahoo Financeは日本時間6時(夏時間のNY市場の終わり)の値で、時刻が違います。FX会社の画面の値とは数十銭ずれることがあります。
ポンド円はなぜ下落?下げの3分の2は「ポンド安」
ポンド円は「ポンドの対ドルの動き」と「ドル円の動き」の掛け算です。8月末から10月2日までの下落を、対数で寄与度を計算して分けました。
下げの約66%はポンドがドルに対して売られた分で、円高の寄与は約34%でした。同じ期間のユーロ円・豪ドル円は、それぞれ下げの約7割がユーロ安・豪ドル安で、ドルが円以外の主要通貨に対して全面的に買われているのが共通点です(ユーロ円はなぜ下落?/豪ドル円はなぜ下落?)。FRBが9月に3年ぶりの利上げを決め、米10年債の利回りが5%台に上がったことが背景にあります(米10年債利回り上昇はなぜ?)。
ただし、ポンドの下げには英国ならではの事情も重なっています。それが国債の売りです。
英国債の利回りはなぜ上がる?10年債は2007年以来、20年債は1998年以来
BoEは、英国債の利回りを毎日推計して公表しています。10年債(パー利回り)と20年債(ゼロクーポン利回り)を並べました。
| 日付 | 10年債 | 20年債 |
|---|---|---|
| 2026年1月2日年初 | 4.52% | 5.30% |
| 2026年6月30日6月末 | 4.74% | 5.52% |
| 2026年7月20日バーナム首相・ヒーリー財務相の就任日 | 5.02% | 5.78% |
| 2026年8月28日8月の最終営業日 | 5.06% | 5.82% |
| 2026年9月17日BoEが据え置き(6対3) | 5.17% | 5.77% |
| 2026年9月28日2026年の最高(2007年7月以来) | 5.38% | 5.96% |
| 2026年9月30日最新 | 5.37% | 5.98% |
10年債の利回りは年初の4.52%から9月28日の5.38%まで、9か月で0.87ポイント上がりました。これを上回るのは2007年7月19日が最後で、世界金融危機の前です。20年債の5.98%は、1998年2月9日以来の高さです。
利回りの上昇は英国だけの話ではありません。米国の30年債は24年ぶり、フランスの10年債も24年ぶりの高水準と報じられており、世界的に国債が売られています。そのなかで英国は、7月に首相と財務相が交代し、新政権として初めての予算が10月28日に控えています(英財務省が7月31日に議会委員会へ書簡で通知)。予算で借り入れがどこまで増えるのかが見えないことが、英国債の売りにつながっていると考えられます。
「悪い金利上昇」をデータで確かめる
金利が上がると、その国の通貨で運用したい人が増えるため、ふつうは通貨高の材料になります。ところが、財政への不安から国債が売られて利回りが上がるときは、国債と通貨が一緒に売られます。これが「悪い金利上昇」です。BoEの10年債利回りとFRBのポンド(対ドル)を日ごとに並べ、利回りが上がった日にポンドが下がった割合と、両者の相関係数を計算しました。
| 期間 | 利回りが上がった日のうちポンドが下がった日 | 相関係数 |
|---|---|---|
| 2010〜2019年ふだんの関係 | 487日/1,170日(42%) | +0.24 |
| 2022年9月23日〜10月14日トラス政権の「ミニ予算」ショック | 7日/10日(70%) | -0.63 |
| 2025年 | 59日/112日(53%) | -0.21 |
| 2026年1月〜9月25日 | 50日/89日(56%) | -0.31 |
| 2026年9月(25日まで)今回 | 7日/10日(70%) | -0.05 |
2010年代は、利回りが上がった日にポンドが下がったのは42%で、相関係数は+0.24と「金利が上がればポンド高」の普通の関係でした。2022年9月のトラス政権の「ミニ予算」(財源の裏付けのない大型減税)の直後は、これが7割(10日中7日)に跳ね上がりました。そして2026年9月も10日中7日と、同じ割合です。2025年以降は相関係数もマイナスに変わっています。
トラス・ショックと同じ、とまでは言えない
2022年は、ポンドが1日で数%動き、BoEが国債の緊急買い入れに追い込まれました。2026年9月のポンドの下げは対ドルで2%台で、値動きの大きさはまったく違います。共通しているのは「国債売り」と「通貨売り」が同じ日に起きやすくなっているという性質です。10月28日の予算の中身しだいで、この性質が強まるか弱まるかが決まります。
※10年債はBoEのパー利回り(IUDMNPY)、20年債はゼロクーポン利回り(IUDLNZC)。日ごとの比較は、BoEとFRBの両方に値がある日で行っています。2026年9月はFRBのデータがある25日までです。相関係数は、利回りの前日差(ポイント)とポンドの前日比(%)から計算しました。
英中銀(BoE)は利上げしない?9月に据え置いたのはBoEだけ
| 中央銀行 | 9月の決定 | 中身 |
|---|---|---|
| FRB(米国) | 利上げ | 3.75〜4.00%へ。3年ぶりの利上げ |
| ECB(ユーロ圏) | 利上げ | 預金金利2.50%へ(9月16日から) |
| 日銀 | 利上げ | 1.25%へ(9月18日) |
| RBA(豪州) | 利上げ | 4.60%へ(9月29日)。今年4回目 |
| BoE(英国) | 据え置き | 3.75%のまま(9月17日、6対3)。最後の変更は2025年12月の利下げ |
BoEは9月17日、政策金利を3.75%に据え置きました。9人の委員のうち3人(ピル、マン、グリーンの各委員)は4.00%への利上げを主張しています。8月の消費者物価は3.1%で、BoEは目標の2%を超える状態がさらに強まると見ています。
中東の紛争が長引けば――実際にそうなりつつあるように見えるが――そして二次的な影響が出てくるリスクが高まれば、金融政策を引き締めなければならない可能性が高い。――BoE金融政策委員会 ベイリー総裁の見解(2026年9月の議事要旨、筆者訳)
政策金利が据え置かれたまま国債利回りだけが上がっているのは、利回りの上昇が利上げ観測ではなく、財政や世界的な国債売りによるものであることを示しています。日銀との政策金利の差は2.50ポイントで、2023年8月〜2024年3月(BoE5.25%、日銀−0.1%)の5.35ポイントの半分以下です。
ポンド円のスワップはいくら?下落はスワップ約1年5か月分
DMM FXのスワップカレンダーでポンド円の買い(1万通貨)を数えると、9月1日の1日161円から、日銀が利上げした9月18日をはさんで、10月2日には140円まで約13%減りました。9月の1か月の合計は4,581円です。
一方、8月末から10月2日までの値下がりは1万通貨で73,600円でした。いまの1日140円で割ると約526日分、1年5か月ほどのスワップにあたります。ポンド円は値動きの大きいペアで、Yahoo Financeの1時間足で数えると、直近60日のうち12日は1日の値幅が2円を超えていました。スワップの仕組みと各通貨の受取額はDMM FXのスワップはいくら?1日の受取額と付与日数を2か月分集計でまとめています。
※スワップはDMM FXのスワップカレンダー(9月1日〜10月2日付与分、買い1万通貨あたり)。売りは買いより1日あたり3円多く支払います。スワップは毎日変わり、将来の受取額を約束するものではありません。
ポンド円の今後の見通し|3つのシナリオと10〜11月の日程
ポンド円を動かす材料は「10月28日の英国予算」「BoEの利上げ」「ドル高と円」の3つです。
- 続落予算で借り入れが増え、国債売りが続く予算の財源が見えず国債の発行が増えると受け止められれば、「悪い金利上昇」が強まり、ポンドが国債と一緒に売られやすくなります。9月30日の安値(206円台後半)が最初の節目です。
- 円高日銀が10月30日に利上げ日銀が2会合続けて利上げすれば、英国との金利差は2.25ポイントに縮み、スワップもさらに減ります。今回の下げは円高の寄与が3分の1でした。
- 反発予算が市場に安心され、BoEが11月に利上げ歳出の抑制などで財政への不安が和らげば、国債の買い戻しとともにポンドも戻りやすくなります。9月に3人が利上げを主張したBoEが11月に動けば、ポンドの支えになります。
| 日付(日本時間) | イベント | ポンド円への意味 |
|---|---|---|
| 10月8日(木)21:15 | ベイリーBoE総裁の発言 | 11月の利上げへの姿勢 |
| 10月28日(水)夜 | 英国の予算(ヒーリー財務相) | 借り入れの見通しと国債市場の反応が最大の焦点 |
| 10月29日(木)3:00 | FOMCの結果発表 | 米国の連続利上げならドル高・ポンド安の材料 |
| 10月30日(金)昼ごろ | 日銀会合の結果・展望レポート | 利上げなら金利差が縮み、スワップも減る |
| 11月5日(木)21:00 | BoE 金融政策の発表・金融政策報告 | 3.75%から利上げに動くか |
英国の予算は財務相の議会演説で発表され、日本時間では夜になります。予算と、FOMC・日銀・BoEが1週間ほどのあいだに続くため、ポンド円は10月末から11月初めにかけて値動きが大きくなりやすい時期です。ユーロ円の材料(10月29日のECB理事会)はユーロ円はなぜ下落?下げの7割はユーロ安、仏財政とECBの今後で整理しています。
※シナリオは公開情報と過去データにもとづく筆者の整理で、将来の相場を予想・保証するものではありません。BoEの発表時刻は英国時間12時(10月25日から冬時間)を日本時間に換算、10月8日の時刻は外為どっとコムの週間予定によります。
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ポンド円についてよくある質問
Q. ポンド円はなぜ下がっているのですか?
A. 8月末からの下落(-3.4%)のうち、約66%はポンドがドルに対して売られた分で、円高の寄与は約34%でした。米国の利上げと金利上昇によるドル高に加え、英国では国債の利回りが2007年以来の水準まで上がり、国債とポンドが一緒に売られる「悪い金利上昇」の形が出ています。
Q. 英国債の利回りはなぜ上がっているのですか?
A. 世界的に国債が売られていることに加え、7月に発足したバーナム政権が10月28日に初めての予算を発表する予定で、借り入れの増加への警戒があると考えられます。BoEの政策金利は3.75%で据え置かれており、利回りの上昇は利上げ観測によるものではありません。
Q. 「悪い金利上昇」とは何ですか?
A. 財政への不安などで国債が売られて利回りが上がり、同時に通貨も売られる状態です。BoEとFRBのデータで計算すると、2010年代は利回りが上がった日にポンドが下がったのは42%でしたが、2022年のトラス・ショックの期間と2026年9月はどちらも7割でした。
Q. BoE(英中銀)の政策金利はいくらですか?
A. 3.75%です。9月17日の会合では6対3で据え置き、3人の委員が4.00%への利上げを主張しました。最後に金利を動かしたのは2025年12月の利下げです。次の発表は11月5日(日本時間21時)です。
Q. ポンド円のスワップは1日いくらですか?
A. DMM FXの買い(1万通貨)で、9月1日は1日161円、10月2日は140円でした。9月の1か月の合計は4,581円です。日銀の利上げなどで金利差が縮むと減ります。
Q. ポンド円の高値はいくらですか?
A. 2026年の高値は、FRBの正午レートで7月16日の219.02円です。2007年12月以来の高さでしたが、2007年7月の約250円にはまだ届いていません。
Q. ポンド円は今後上がりますか、下がりますか?
A. 断定はできません。10月28日の英国予算で財政への不安が和らぐか強まるか、11月5日にBoEが利上げするか、10月30日に日銀が利上げするかの組み合わせで方向が変わります。
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出典・参考資料
- FRB:H.10 Historical Rates for the United Kingdom Pound/H.10 Historical Rates for the Japanese Yen(1971年〜のニューヨーク正午レート、2026年9月25日分まで)
- イングランド銀行(BoE):Statistical Interactive Database(Bank Rate:IUDBEDR、国債利回り:IUDMNPY・IUDLNZC、2026年9月30日分まで)/Monetary Policy Summary and minutes, September 2026
- 英財務省:Chancellor letter to the Treasury Select Committee – Budget 2026 date(2026年7月31日)/gov.uk:Chancellor of the Exchequer
- ジェトロ:英国、労働党のアンディ・バーナム党首が首相就任
- DMM FX:スワップカレンダー(ポンド/円、2026年9月1日〜10月2日)/外為どっとコム:来週の為替予想(ユーロ/円 ポンド/円)ハロンズFX 2026/10/3
- 市場データ:Yahoo Finance(GBPJPY=X)、同 GBPUSD=X・JPY=X の1時間足(2026年10月4日取得)
ポンド円の値・下落の内訳・利回りとポンドの日次比較は、FRB H.10、BoEの統計、Yahoo Financeのデータから、スワップの合計と換算日数はDMM FXのスワップカレンダーから筆者が計算したものです。BoEの文書の日本語は筆者訳です。本記事は2026年10月4日時点の公開情報と市場データにもとづく解説で、特定の通貨や取引を勧めるものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。アイキャッチ背景:Eluveitie「Bank of England, London.JPG」(Wikimedia Commons、CC BY-SA 3.0)をトリミング・明るさ調整・文字入れ。
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