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デジタル教科書はなぜ「紙中心」?小4以下は完全デジタル不可の理由
2030年度から小中高校で使われる「デジタルを含む新しい教科書」について、文部科学省の「大臣指針」の素案が10月17日に報じられました。紙が中心で、デジタルは補助的な扱い。完全デジタルの教科書は小学4年生以下では認めないという内容です。報道と文科省の会議資料を突き合わせて経緯を年表で整理し、2026年度の全国学力調査の公表データから「タブレットで学力は下がるのか」も確かめます。
この記事の結論
- 読売新聞(10月17日)によると、文科省の「大臣指針」素案は、新しい教科書を紙中心のハイブリッド型とし、小5以上は「主に紙」、小4以下は「おおむね紙」で作るとしています。完全デジタルは小4以下では認めず、小5以上も英語や音楽・美術など実技系の教科に限る方針です。
- 素案は10月22日の有識者会議で示される予定と報じられています。10月18日時点で素案の原文は文科省のサイトに載っておらず、中身は報道ベースです。
- 「小4以下は完全デジタル不可」は突然出てきた話ではありません。2026年4月の国会審議で、文部科学大臣がすでに同じ考えを答弁していました。教育委員会などへの意向調査でも、紙とデジタルの組み合わせを望む回答が小学校で88.3%でした。
- 当サイトが2026年度の全国学力・学習状況調査を集計すると、授業でICT機器を「ほぼ毎日(1日に複数の授業)」使った小6の国語の平均正答率は64.5%で、「月1回未満」(48.6%)より15.9ポイント高い結果でした。
- 一方、SNSや動画を1日4時間以上見る小6は52.9%と、30分未満(70.7%)より17.8ポイント低くなっています。データからは「デジタルか紙か」よりも「何に・どれだけ使うか」の差が大きく見えます(いずれも相関で、因果関係は示していません)。
意向調査は文部科学省の検討会議資料、正答率は国立教育政策研究所「令和8年度 全国学力・学習状況調査」の公表データから当サイトが集計。
デジタル教科書の「紙中心」素案とは?報道で分かっていること
読売新聞(10月17日)によると、文部科学省は2030年度以降に小中高校で導入する新しい教科書のあり方を示す「大臣指針」の素案をまとめ、10月22日に開く有識者会議で示す予定です。報道された素案の主な内容は次のとおりです。
| 項目 | 素案の内容(報道) |
|---|---|
| 教科書の基本形 | 全学年・教科で、紙とデジタルを組み合わせたハイブリッド型が中心。紙が中心で、デジタルは補助的・補完的に組み込む |
| 小学5年生以上 | 「主に紙」で構成 |
| 小学4年生以下 | デジタル部分をより限定した「おおむね紙」で構成 |
| 完全デジタル | 小4以下は認めない。小5以上も英語のほか、音楽・美術などの実技系教科などに限る |
| 健康面 | 視力などの継続的なモニタリング。導入後もデジタル教科書の使用状況と健康への影響の関係を検証 |
| 見直し | 学校現場での実証研究なども踏まえ、必要に応じて教科書のあり方を随時見直す |
| そのほか | 「書く活動の授業中での確保」を明記。AIの搭載は「実証研究などを注視しつつ検討する」との言及にとどめる。障害のある児童生徒への対応も行う |
素案の原文はまだ公開されていません
指針を議論しているのは、文科省の「デジタルな形態を含む教科書の発行・採択等の指針に関する検討会議」です。10月18日時点で、会議ページに掲載されているのは8月18日の第5回までで、素案そのものは確認できません。この記事の素案の内容は、読売新聞の報道にもとづいています。22日の会議後に資料が公開されれば、細部が変わる可能性があります。
新しい教科書は3つの形態から選ぶ
2026年6月に成立した改正学校教育法などにより、2030年度以降の教科書は「紙のみ」「紙とデジタルのハイブリッド」「完全デジタル(デジタルのみ)」の3つの形態になります。今回の素案は、このうち「どの学年・教科でどの形態を認めるか」の線引きを示したものです。
これまでのデジタル教科書は、紙の教科書の内容をそのままタブレットで表示する「教材」で、法律上の教科書ではありませんでした。文科省は法律の成立時の発表で、改正の目的は「デジタル化自体を目的とするものではな」いとし、英語のネイティブ音声や理科の実験動画などを教科書の一部として載せられるようになると説明しています。

いつから?2030年度の新学習指導要領に合わせて導入
改正法は2026年6月10日に成立し、6月17日に公布されました(令和8年法律第37号)。衆議院の法律案概要によると、一部を除き2027年4月1日に施行されます。教育情報サイトのリセマム(10月1日)が紹介した文科省の説明では、小学校の教科書は2027年度に教科書会社が作成・編集し、2028年度に文科省が検定、2029年度に教育委員会が採択して、2030年度の新学習指導要領の実施に合わせて順次導入する流れです。
なぜ「紙中心」なのか?文科省の会議で出ていた3つの理由
読売新聞は、紙中心を打ち出した背景として、有識者会議で発達心理学の専門家らから「年齢が低い子どもは認知機能が発達途上にあり、デジタルの影響が大きい」といった指摘があったことを挙げています。公開済みの第5回会議(8月18日)の資料を読むと、議論は大きく3つの理由に整理できます。
理由1:低学年は注意のコントロールが発達途中
会議資料には、委員や外部有識者の意見として「低年齢の子供は、注意制御を行う機能が未発達であり、また、ワーキングメモリの負荷による影響を受けやすい」といった声がまとめられています。逆に、小学校高学年以降は「メタ認知が精緻化し、自律的な学びができるようになると、デジタルの活用は効果的になる」との意見も載っています。
理由2:現場も「低学年は紙」を望んでいる
文科省は教育委員会や学校に、どんな形態の教科書を望むかを尋ねる意向調査を行いました(回答率は小中で約71%、高校で約81%)。どの学校段階でも最も多かったのはハイブリッド型で、望む割合は小学校88.3%、中学校86.3%、高等学校78.4%でした。
さらに、小学校の低学年・中学年では、どの教科でも「ほぼ紙」か「紙の方が多い」ものを望む回答が多く、全部デジタルを望む回答が1割を超えたのは中学年の図画工作だけでした。小学校高学年の英語や実技系の教科では、デジタルが半分程度以上のものを望む回答も目立ちます。素案の「小4以下は完全デジタル不可、小5以上も英語・実技系に限る」という線引きは、この結果とほぼ重なります。
理由3:教科や場面で、紙とデジタルの得意分野が違う
会議資料は、これまでの実証研究などをもとに、紙とデジタルそれぞれの活用が期待される学習場面を教科ごとに整理しています(あくまで一例とされています)。
| 教科 | 紙が向く場面 | デジタルが向く場面 |
|---|---|---|
| 国語 | 説明文や物語を読み込む、文章の構成をつかむ、余白に自由に書き込む、音読(現代文) | 色分けして線を引く、動画で背景をつかむ、音読(古文・漢文)、スピーチ |
| 社会 | 複数の資料を同時に見比べる、地図や年表を俯瞰する | 写真を拡大して細部を見る、グラフや地図の表示を切り替える |
| 算数・数学 | 計算、正確な作図、実際に長さを測る | 図形の回転・変形を試す、グラフや関数の変化を見る |
| 理科 | 計算、作図 | 実験の手順を動画で確認、天体の動きや分子構造を見る |
| 英語 | 長文読解 | ネイティブ音声で発音確認、シャドウイング、スピーキング |
| 実技系 | 楽譜を見て演奏する(音楽) | 模範演奏の動画、調理手順の確認、フォームの比較など |
文部科学省 第5回検討会議 資料1「教科書の形態の在り方についてのこれまでの御意見」より要約。
「小4以下は不可」は4月の国会答弁ですでに示されていた
第2回会議(6月18日)の資料によると、2026年4月の衆議院文部科学委員会で文部科学大臣は、全てがデジタルの教科書について「小学校4年生以下では認めるべきではなく、また教科についても、当面、国語や社会、道徳などは認めるべきではない」と答弁しています。理由としては、中教審や有識者会議で小学校の低学年・中学年は慎重に考えるべきという意見が多く出ていることを挙げ、4月28日の閣議後会見では、これまでデジタル教科書を大規模に提供してきたのが小5以上であることにも触れています。今回の素案は、この方針を指針の形に落とし込んだものといえます。
デジタル教科書の導入経緯を年表で整理(2018〜2030年)
デジタル教科書は、2019年度に「紙の教科書の代わりに使える教材」として制度化されました。そこから「授業時数の2分の1未満」の制限撤廃、国による無償提供の拡大を経て、2030年度に教科書そのものになります。文科省の会議資料(参考資料5)などから、主な流れを整理しました。
- 2018年6月改正学校教育法が公布紙の教科書の内容をすべて電子化したデジタル教科書がある場合、教育課程の一部で紙の代わりに使えるようにする改正。12月には活用のガイドラインも作られました。
- 2019年4月デジタル教科書の制度がスタートただし位置づけは「教科書」ではなく「教材」。当初は、使える時間が各教科の授業時数の2分の1未満に制限されていました。
- 2021年4月「2分の1未満」の制限を撤廃文科省の告示改正で、授業時数の上限がなくなりました。同じ年度から、国の実証事業で小5〜中3にデジタル教科書の提供が始まります。
- 2024年度「購入費」として国が提供小5〜中3の英語は100%、算数・数学は約55%に国が提供しています(下の表)。
- 2025年9月中教審のワーキンググループが審議まとめデジタルも教科書として認めることと、紙とデジタルをどの学年・教科で使うかの指針を国が示すべきだと提言しました。
- 2026年4月法案提出・指針の検討会議が始動4月7日に法案を国会に提出、4月10日に指針の検討会議の初会合。国会審議では大臣が「小4以下の完全デジタルは認めるべきではない」と答弁しました。
- 2026年6月改正学校教育法が成立・公布6月10日に参議院本会議で可決・成立し、6月17日に公布。教科書の定義が「紙」から「デジタルな形態を含み得る教科書」に変わります。
- 2026年10月大臣指針の素案が判明(報道)17日に「紙中心・デジタルは補助」の素案が報じられ、22日の有識者会議で示される予定です。
- 2027年4月改正法の施行一部を除き施行。教科書会社による新しい教科書づくりが始まります。
- 2030年度新しい教科書の使用開始次の学習指導要領の実施に合わせて、紙・ハイブリッド・完全デジタルの3形態の教科書が順次使われ始めます。
国のデジタル教科書の提供状況(小5〜中3)
| 年度 | 提供のしかた | 提供の割合 |
|---|---|---|
| 2021年度 | 実証事業 | 任意の1教科で約40%(うち英語約7%、算数・数学約12%) |
| 2022年度 | 実証事業 | 英語100%、ほかに任意の1教科で約70%(うち算数・数学約20%) |
| 2023年度 | 実証事業 | 英語100%、算数・数学約50% |
| 2024〜2026年度 | 購入費として国が提供 | 英語100%、算数・数学約55% |
文部科学省「教科書のデジタル活用をめぐる状況について」(2026年8月18日 検討会議 参考資料5)より作成。対象は原則として小学5年生〜中学3年生。
「授業時数の2分の1」規制から「学年・教科の線引き」へ
デジタル教科書の規制は、時間で縛る方式から、学年と教科で線を引く方式へ変わろうとしています。
| 時期 | デジタルの位置づけ | 主なルール |
|---|---|---|
| 2019年4月〜2021年3月 | 紙の代わりの教材 | 各教科の授業時数の2分の1未満まで |
| 2021年4月〜 | 紙の代わりの教材 | 時数の上限なし(紙の教科書も配られる) |
| 2030年度〜 | 教科書の一部・全部 | 紙中心のハイブリッドが基本。完全デジタルは小5以上の英語・実技系などに限る(素案・報道) |
【独自集計】タブレットを使うと学力は下がる?全国学力テスト2026で検証
「紙中心」の報道を受けて、「やはりデジタルは学力に悪いのか」と感じた人もいるかもしれません。そこで、2026年4月に小学6年生と中学3年生を対象に行われた全国学力・学習状況調査の公表データ(選択肢別平均正答率)から、ICT機器やスマートフォンの使い方ごとに平均正答率を並べました。対象は国公私立の全国集計です。
授業でICT機器を使う頻度:多いほど正答率が高い
小6国語の平均正答率。質問は「5年生までに受けた授業で、PC・タブレットなどのICT機器を、どの程度使用しましたか」。
| 回答 | 小6国語 | 小6算数 | 中3国語 | 中3数学 |
|---|---|---|---|---|
| ほぼ毎日(1日に複数の授業) | 64.5 | 59.9 | 67.6 | 61.4 |
| ほぼ毎日(1日1回くらい) | 62.5 | 58.2 | 65.5 | 59.3 |
| 週3回以上 | 61.1 | 57.0 | 62.9 | 56.2 |
| 週1回以上 | 60.4 | 55.6 | 61.9 | 54.5 |
| 月1回以上 | 58.5 | 53.5 | 60.1 | 52.4 |
| 月1回未満 | 48.6 | 43.4 | 50.8 | 41.3 |
授業でICT機器を「ほぼ毎日(1日に複数の授業)」使ったと答えた児童生徒は、どの教科でも正答率が最も高く、「月1回未満」との差は小6国語で15.9ポイント、中3数学では20.1ポイントありました。「ほぼ毎日」と答えた割合は小6で43.2%、中3で55.4%です。少なくともこのデータからは、「授業でタブレットを使うほど成績が下がる」という傾向は見えません。
家での「勉強のためのICT」は30分未満がいちばん高い
小6国語の平均正答率。質問は「学校の授業時間以外に、普段(月〜金)、1日当たりどれくらいの時間、PC・タブレットなどのICT機器を、勉強のために使っていますか」。
授業の外で勉強のために使う時間を見ると、小6国語は30分未満が64.2%で最も高く、時間が長くなるにつれて下がり、3時間以上では50.4%でした。「全く使っていない」(59.7%)も30分未満より低く、山なりの形です。
SNS・動画の時間:長いほど正答率が低い
小6国語の平均正答率。質問は「普段(月〜金)、1日当たりどれくらいの時間、スマートフォンや携帯電話、パソコン、タブレット、ゲーム機、テレビ等でSNSや動画視聴などをしますか(学習やゲームの時間は除く)」。
| 回答 | 小6国語 | 小6算数 | 中3国語 | 中3数学 |
|---|---|---|---|---|
| 4時間以上 | 52.9 | 47.7 | 58.5 | 48.7 |
| 3〜4時間 | 58.1 | 52.7 | 63.2 | 55.5 |
| 2〜3時間 | 62.0 | 57.3 | 66.6 | 61.0 |
| 1〜2時間 | 65.2 | 61.0 | 69.5 | 65.9 |
| 30分〜1時間 | 67.5 | 63.7 | 71.4 | 68.9 |
| 30分未満 | 70.7 | 68.6 | 71.8 | 69.6 |
| スマホ等を持っていない | 64.1 | 60.7 | 63.3 | 57.5 |
はっきり差が出たのは、勉強以外のSNSや動画の時間です。1日4時間以上の小6は国語52.9%・算数47.7%で、30分未満(国語70.7%・算数68.6%)より17.8〜20.9ポイント低くなっています。しかも、平日にSNSや動画を3時間以上見る子は小6で37.3%、中3では49.1%にのぼります。
相関であって、因果関係ではありません
この集計は、回答ごとの平均正答率を並べたもので、ICT機器の使い方が成績を上げ下げしたことを示すものではありません。家庭の環境や学校の取り組みなど、ほかの要因も関わります。国立教育政策研究所も、SNSや動画の時間が長い子ほど正答率が低い一方、ICTを使う自信がある子ほど正答率が高い傾向を示し、ICTを受け身で使うだけでなく主体的に使えるよう育てることが学力向上につながる可能性がある、とまとめています。
文科省の実証研究でも「いつも使う」子ほど授業が分かる
文科省が2025年度に行った大規模アンケート(小学校中・高学年15,785人、中学生26,439人)でも、デジタル教科書を「いつも使う」と答えた子ほど、「授業の内容がよく分かる」に「当てはまる」と答えた割合が高くなっていました。小学校中・高学年では60.6%(使わない子は52.5%)、中学生では59.5%(同41.0%)です。
紙とデジタルで「深い読み」に差は出たか
会議資料には、小学校国語で同じ読解問題を紙とタブレットで解かせた研究(難波博孝氏、2024年)も紹介されています。ある小学校の説明文の調査では、全体の正答率は紙39.4%・デジタル39.1%で統計的に意味のある差はありませんでした。ただ、学年別に見ると低・中学年は紙がやや高く、高学年はデジタルが高いという逆転がありました。
| 学年 | 紙 | デジタル | 高い方 |
|---|---|---|---|
| 全体 | 39.4% | 39.1% | 紙 |
| 低学年 | 28.5% | 26.2% | 紙 |
| 中学年 | 55.4% | 52.0% | 紙 |
| 高学年 | 59.7% | 64.0% | デジタル |
文部科学省 参考資料5に掲載された、難波博孝「デジタル時代の児童の読解力 紙とデジタル比較読解調査からみえること」(2024)のN小学校(説明文)の結果。
統計的な差はないものの、低学年ほど紙がやや高いという傾向は、素案の「小4以下はおおむね紙」と同じ方向です。
健康への影響は?子どもの視力の推移
素案は、視力など健康面の継続的なモニタリングも盛り込んだと報じられています。文科省の令和7年度学校保健統計で、裸眼視力が1.0未満の子の割合を見てみます。
| 学校段階 | 2015年度 | 2019年度 | 2024年度 | 2025年度 |
|---|---|---|---|---|
| 小学校 | 30.97% | 34.57% | 36.84% | 36.07% |
| 中学校 | 54.05% | 57.47% | 60.61% | 59.35% |
| 高等学校 | 63.79% | 67.64% | 71.06% | 71.51% |
裸眼視力1.0未満の者の割合。2020〜2023年度は調査時期が異なるため、ほかの年度と比べられないとされています。
2015年度と2025年度を比べると、1.0未満の割合は小学校で5.1ポイント、中学校で5.3ポイント、高校で7.7ポイント上がりました。高校の71.51%は過去最大です。一方、小中学校は2024年度から2025年度にかけてわずかに下がっています。1人1台端末が配られた時期と重なりますが、この統計だけではデジタル機器が原因かどうかは分かりません。
リセマムによると、文科省は医師を交えた議論を進め、「30分に1回は目を離す」「30センチメートル以上離して見る」といった配慮を含むルールづくりを検討しているとされます。
海外は「紙に回帰」しているのか?スウェーデンとOECDのデータ
デジタル教科書の議論では、スウェーデンが「紙に戻った」例としてよく挙げられます。スウェーデン政府の公式発表で確認できる主な施策は次のとおりです。
- 教科書購入の補助金:2023年に新設。685百万クローナ(2023年)、658百万クローナ(2024年)、755百万クローナ(2025年)を計上し、2026年以降も555百万クローナを確保。新しい学習指導要領が始まる2028年には500百万クローナを上乗せします。「1人1教科1冊」をめざすとしています。
- 法律の改正:2024年7月1日から、児童生徒が教科書などを使えることを学校法で明確にしました。
- 就学前教育:2025年7月1日から、プレスクール(日本の幼稚園に相当)でデジタル機器を使う要件をなくし、2歳未満には本などアナログの教材だけを使うべきだとしました。
- 低学年の全国テスト:2024年1月、低学年の全国テストはデジタル化しないことにしました。
- スマホの回収:2026年秋学期から、義務教育の学校で児童生徒の携帯電話を1日中回収することを義務にしました。
ただし、文科省の会議資料は、スウェーデンでデジタル端末の使用義務がなくなったのは就学前の段階で、義務教育や高校では撤廃されていないと指摘しています。PISAの読解力の得点も、483点(2012年)→500点(2015年)→506点(2018年)と上がった後、2022年に487点に下がっており、「デジタル化で学力が下がったから紙に戻した」と単純には言えないというのが文科省の見方です。
OECD:使い方と時間しだいで得点は上にも下にも
OECDの『PISA 2022 Results (Volume II)』は、15歳の生徒が学校で学習のためにデジタル機器を使う時間と数学の得点の関係を分析しています。OECD平均では、学校で学習目的のデジタル機器を全く使わない生徒は456点でしたが、1日1時間以内使う生徒は25点高く、家庭の社会経済的な背景を調整しても14点高い結果でした。一方で、1日5〜7時間使う生徒は3〜5時間の生徒より12点低く、数学の授業でほかの生徒が使う機器に気を取られることがある生徒は、背景を調整しても、ほとんどない生徒より15点低くなっています。
OECDは「適度な使用は本質的に有害ではなく、問題は使いすぎや誤った使い方」とまとめており、日本の全国学力調査の結果と方向はよく似ています。
デジタル教科書は今後どうなる?保護者が知っておきたいこと
- 紙の教科書はなくならない:文科省の局長は国会で「紙の教科書を廃止して、一律に全てデジタル形式の教科書に切り替えていく、という考えは持っていない」と答弁しています。
- どの形態を使うかは教育委員会などが選ぶ:新しい教科書も、国の検定と教育委員会などの採択を経て使われます。素案は、その選択肢の範囲を学年・教科ごとに示すものです。
- 素案は確定ではない:10月22日の有識者会議の議論を経て、内容が変わる可能性があります。会議の資料が公開されたら、原文で確認するのが確実です。
- 家庭で差が出やすいのは「授業の外」:全国学力調査のデータでは、正答率と関係が大きかったのは、授業でのタブレット利用よりも、SNSや動画の時間でした。平日の使い方を家族で話し合っておくと安心です。
「紙中心」素案の報道(X)
Yahoo!ニュースは10月18日朝、読売新聞が報じた大臣指針の素案を「新たな教科書は『紙中心』素案」としてトピックスに掲載しました。素案の原文は22日の有識者会議で示される予定です。
【新たな教科書は「紙中心」素案】https://t.co/qG65VogehJ
— Yahoo!ニュース (@YahooNewsTopics) October 17, 2026
デジタル教科書の「紙中心」素案のよくある質問
Q. デジタル教科書が「紙中心」になるのはいつからですか?
A. 2030年度以降に使われる新しい教科書が対象です。改正学校教育法は2026年6月に成立し、2027年4月1日に施行されます。小学校の教科書は2027年度に作成、2028年度に検定、2029年度に採択を経て、2030年度の新学習指導要領の実施に合わせて順次導入される見通しです。
Q. 小学4年生以下はデジタル教科書を使えなくなるのですか?
A. いいえ。報道された素案で認めないのは、紙を使わない「完全デジタル」の教科書です。小4以下でも、紙を中心に動画や音声などのデジタル部分を組み込んだハイブリッド型の教科書は想定されています(デジタル部分はより限定的な「おおむね紙」)。
Q. 完全デジタルの教科書はどの教科で認められますか?
A. 報道によると、小学5年生以上で、英語のほか音楽・美術といった実技系の教科などに限られます。文部科学大臣は国会で、国語・社会・道徳などは当面認めるべきではないと答弁しています。
Q. なぜデジタルではなく紙が中心なのですか?
A. 文科省の会議では、低年齢の子どもは注意をコントロールする力が発達途中で、デジタルの影響を受けやすいという専門家の指摘がありました。教育委員会などへの意向調査でも、小学校の低・中学年では「ほぼ紙」か「紙の方が多い」教科書を望む回答が多くなっていました。
Q. タブレットを使うと学力は下がりますか?
A. 2026年度の全国学力・学習状況調査では、授業でICT機器をほぼ毎日使う児童生徒ほど平均正答率が高い傾向でした。一方、SNSや動画を1日4時間以上見る子は30分未満の子より正答率が低くなっています。どちらも相関で因果関係は分かりませんが、使い方と時間の影響が大きいと考えられます。
Q. スウェーデンは紙の教科書に戻したのですか?
A. スウェーデン政府は2023年から教科書購入の補助金を設け、就学前教育でのデジタル機器の使用要件をなくすなどの見直しを進めています。ただし、文科省の資料によると、義務教育や高校でデジタル端末の使用義務が撤廃されたわけではありません。
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出典・参考資料
- 読売新聞オンライン「新たな教科書は『紙中心』、デジタルは補助的扱いに…小4以下は完全デジタル認めず」(2026年10月17日、Yahoo!ニュース掲載)
- 文部科学省:デジタルな形態を含む教科書の発行・採択等の指針に関する検討会議/第5回 配付資料(2026年8月18日)(資料1・参考資料5)/第2回 資料1「国会における審議結果と主な御指摘等について」
- 文部科学省:デジタルな形態を含む新たな教科書について、「学校教育法等の一部を改正する法律案」が参議院本会議で可決され成立しました
- 衆議院:学校教育法等の一部を改正する法律案(第221回国会閣法第55号)概要
- 国立教育政策研究所:令和8年度 全国学力・学習状況調査 報告書・調査結果資料(選択肢別平均正答率・回答結果集計を当サイトで集計)
- 文部科学省:令和7年度学校保健統計(2026年2月13日公表)
- スウェーデン政府:Regeringen satsar på ökad lästid och minskad skärmtid
- OECD『PISA 2022 Results (Volume II): Learning During – and From – Disruption』(2023年)第5章
- リセマム「小4以下は完全デジタルNG?2030年度から教科書どう変わる」(2026年10月1日)
全国学力・学習状況調査の正答率の比較・差の計算は当サイトによる集計で、国立教育政策研究所の公式分析ではありません。写真:アイキャッチ=uka0310/Wikimedia Commons(CC BY 2.0、トリミング・明るさ調整・文字入れあり)、本文=Kwawe/Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0、リサイズあり)。データは2026年10月18日時点のものです。


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