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マグニチュード9.9の地震とは?東日本大震災の22倍・起こりうるか
2026年10月16日の緊急地震速報で表示された「マグニチュード9.9」。実際の地震はM6.9で、数字はシステムの過大推定でした。では、本当にM9.9の地震が起きたらどれほどの規模なのか。米国地質調査所(USGS)の地震カタログ、内閣府の巨大地震モデル、地震本部の長期評価を使って、エネルギー・断層の大きさ・起こる可能性を数字で確かめます。
この記事の結論
- マグニチュードは1上がるとエネルギーが約32倍になります。M9.9は東日本大震災(M9.0)の約22倍、観測史上最大の1960年チリ地震(M9.5)の約4倍です。
- USGSのカタログで1900年以降のM8.0以上は100回。その地震モーメントを全部足しても、M9.9の1回分の88%にしかなりません。
- 断層の幅を200kmとすると、M9.9に必要な断層の長さは平均すべり50mで約2,200km(当サイト試算)。札幌から那覇までの直線距離(約2,250km)に近い長さです。
- USGSは「M10以上を起こせるほど長い断層は知られていない」としています。国の想定でも、千島海溝の最大クラスはMw9.3、日本海溝はMw9.1。M9.9は想定の外側にある規模です。
- ただし千島海溝ではM8.8程度以上の超巨大地震が30年以内に7〜40%(地震本部、2026年1月1日時点)。M9.9は現実的でなくても、M9級への備えは必要です。
マグニチュード9.9のエネルギーは?東日本大震災の約22倍
マグニチュードは、地震で動いた断層の大きさとずれの量から決まる「地震の規模」です。目安として、Mが1上がるとエネルギーは約32倍、2上がると約1,000倍になります。0.1の違いでも約1.4倍で、小数点以下の差が大きな意味を持ちます。
M9.9をほかの地震と比べると、次のようになります。
| 地震 | M | M9.9はその何倍か |
|---|---|---|
| 10月16日の実際の地震(カムチャツカ半島付近、速報値) | 6.9 | 31,623倍 |
| M8.0の巨大地震 | 8.0 | 708倍 |
| 2025年カムチャツカ半島の地震(USGS) | 8.8 | 44.7倍 |
| 2011年 東北地方太平洋沖地震(気象庁 Mw9.0) | 9.0 | 22.4倍 |
| 1964年 アラスカ地震(USGS) | 9.2 | 11.2倍 |
| 千島海溝の最大クラスの想定(内閣府) | 9.3 | 7.9倍 |
| 1960年 チリ地震=観測史上最大(USGS) | 9.5 | 4.0倍 |
エネルギーの比は 10の(1.5×Mの差)乗 で計算。広島型原爆はTNT換算15キロトン(約6.3×10の13乗ジュール)、地震のエネルギーはグーテンベルク・リヒターの式(log E=1.5M+4.8、Eはジュール)で求めた参考値です。
M9.9のエネルギーは約4.5×10の19乗ジュール。広島型原爆の約71万発分、日本の1年間の発電量(約1兆kWh)のおよそ12年分にあたります。東日本大震災の約22倍という数字は、10月16日の速報後に各社の解説でも使われました。
「マグニチュード」には種類がある
気象庁が地震直後に出すマグニチュード(気象庁マグニチュード)は、M8を超えるような巨大地震では値が頭打ちになりやすい性質があります。2011年の東北地方太平洋沖地震も、地震直後はM7.9と発表され、その後M9.0(モーメントマグニチュード)に改められました。この記事のM9.0やM9.5はモーメントマグニチュードで比べています。
1900年以降のM8以上100回を全部足してもM9.9に届かない
M9.9がどれほど桁外れかは、過去の巨大地震を「足し算」するとよく分かります。USGSの地震カタログ(ComCat)から、1900年1月1日〜2026年10月16日に起きたM8.0以上の地震100回を取り出し、それぞれの地震モーメント(地震の規模を表す物理量)を合計しました。
| 地震(USGSの値) | M | M9.9に対する割合 | 累計 |
|---|---|---|---|
| 1960年 チリ地震 | 9.5 | 25.1% | 25% |
| 1964年 アラスカ地震 | 9.2 | 8.9% | 34% |
| 2004年 スマトラ島沖地震 | 9.1 | 6.3% | 40% |
| 2011年 東北地方太平洋沖地震 | 9.1 | 6.3% | 47% |
| 1952年 カムチャツカ地震 | 9 | 4.5% | 51% |
| 2025年 カムチャツカ半島の地震 | 8.8 | 2.2% | 53% |
| 残りの94回(M8.0〜8.7) | ― | 34.2% | 88% |
USGS ComCat(M8.0以上、1900年〜2026年10月16日、100件)を当サイトで集計。地震モーメントは log M0=1.5M+9.1 で換算。東北地方太平洋沖地震はUSGSの値(M9.1)を使っています。
観測史上最大のチリ地震でも、M9.9の約4分の1。M9以上の5回をすべて足しても半分ほどで、126年分のM8以上100回を全部合わせても88%です。M9.9は、この100年あまりに地球上で起きた巨大地震をまとめて1回で起こすほどの規模ということになります。
M9.9の断層の大きさは?長さ2,000km級・揺れは十数分(試算)
マグニチュードは「断層の面積×ずれ(すべり量)×岩盤の硬さ」で決まります。気象庁の解析では、東北地方太平洋沖地震(Mw9.0)の断層は長さ約450km・幅約200km、主な破壊は3分程度続きました。この面積から平均すべりを逆算すると約11mです(岩盤の硬さを4×10の10乗N/m²とした当サイト試算)。
同じ断層の大きさでM9.9を起こそうとすると、平均すべりは約248mが必要になり、現実的ではありません。海溝型地震の断層の幅は、プレート境界の深さの制約から200km程度が上限とされます(蓬田、2013)。そこで幅を200kmに固定して、必要な長さを計算しました。
| 平均すべり | 必要な断層の長さ | イメージ |
|---|---|---|
| 30m | 約3,700km | 日本列島の長さ(約3,000km)を超える |
| 50m | 約2,200km | 札幌〜那覇の直線距離(約2,250km) |
| 100m | 約1,100km | チリ地震の震源域(約1,000km)とほぼ同じ長さで、すべりは桁違い |
幅200km、岩盤の硬さ4×10の10乗N/m²と仮定した当サイトの試算。チリ地震の震源域の長さは内閣府の検討会報告書による値です。
断層の破壊が東北地方太平洋沖地震と同じくらいの速さ(450kmを3分で、毎秒約2.5km)で一方向に進むと、長さ約2,200kmの断層が割れ切るまでに約15分かかる計算です。東日本大震災の約3分に対し、揺れを生み出す破壊そのものが十数分続くことになります。
千島海溝〜日本海溝が全部動くと2,400〜3,000km
内閣府の検討会報告書は、地震本部の長期評価を引いて、三陸沖北部からカムチャツカ半島までを同時に破壊すると長さ約2,400km、三重会合点付近からカムチャツカ半島沖までだと約3,000kmになると紹介しています。M9.9の試算の長さはこの範囲に入ります。ただし報告書は、チリ地震でさえ震源域は約1,000kmで、それを超える地震の規模や起こり方を推定するのは困難だとしています。
M9.9の地震は起こりうる?USGSと国の想定で確認
結論から言うと、M9.9は観測史上一度も起きておらず、国の防災の想定にも入っていない規模です。ただし、学術的に「絶対に起きない」と言い切られているわけではありません。
USGS「M10以上を起こせる長さの断層は知られていない」
USGSはよくある質問のページで、M10以上の地震は起こりえないと答えています。マグニチュードは断層の長さと関係しており、M10を起こすほど長い断層は知られていないこと、観測史上最大の1960年チリ地震(M9.5)も非常に長い断層で起きたことを説明しています。M9.9はM10の約7割の規模で、同じ壁に近い数字です。
研究者の試算「M10には平均すべり100mか、長さ1,500km超が必要」
東日本大震災のあと、日本の研究者の間ではM10の可能性も議論されました。北海道大学の蓬田清氏の論文(2013年)は、地震の発生頻度と断層の相似則を単純に延長するとM10は世界で500年に1回程度起き、断層は長さ1,200km・幅600km・平均すべり50mになると試算しています。そのうえで、幅は200kmを大きく超えられないため、平均すべり100m級か、長さ1,500km超が必要だと整理しました。最有力の候補には南米チリ南部を挙げつつ、1960年にひずみをほぼ出し切ったため当面は起きにくいとしています。
日本の想定は最大でMw9.3
内閣府の「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震モデル検討会」は、過去6千年の津波堆積物から最大クラスの地震を推定し、日本海溝(三陸・日高沖)モデルをMw9.1、千島海溝(十勝・根室沖)モデルをMw9.3としました。M9.9はこの千島海溝モデルの約8倍のエネルギーです。千島海溝モデルの被害想定でも、死者は約2.2万〜約10万人(日本海溝モデルは約6千〜約19.9万人)とされ、その大半が津波によるものです。
| 想定・評価 | 規模 | 出典 |
|---|---|---|
| 千島海溝の最大クラス(十勝・根室沖) | Mw9.3 | 内閣府(2020年) |
| 日本海溝の最大クラス(三陸・日高沖) | Mw9.1 | 内閣府(2020年) |
| 千島海溝の超巨大地震(17世紀型)30年以内 | M8.8程度以上 7〜40% |
地震本部(2026年1月1日時点) |
| 根室沖の地震 30年以内 | M7.8〜8.5程度 90%程度以上 |
地震本部(同) |
内閣府「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震モデルの検討について」報告書本文、同「被害想定について」(2021年12月21日)、地震調査研究推進本部「長期評価による地震発生確率値の更新について」の一覧表(算定基準日2026年1月1日)より。
10月16日の緊急地震速報の「M9.9」はなぜ出た?
10月16日12時40分の緊急地震速報(警報)は、カムチャツカ半島付近で起きたM6.9(速報値)の地震を「千島列島でM9.9」と推定し、北海道の根室地方などで震度5弱から7程度を予測したものでした。気象庁は、日本から非常に遠い地震に国内用のマグニチュードの式を当てはめたことなどを原因に挙げ、警報は約8分後に取り消されました。実際の国内の揺れは函館市の震度1だけです。
M9.9は観測史上最大のチリ地震を大きく上回る数字で、上で見たとおり「ありえない規模」に近い値でした。数字だけを見て慌てる必要はなかった一方、警報の段階では本物か誤りかを見分ける方法はありません。速報が出たら、まず身を守る行動をとるのが原則です。経緯と過去の誤報の集計は、次の記事で詳しくまとめています。
M9級の巨大地震に備えてできること
M9.9が非現実的でも、千島海溝や日本海溝、南海トラフではM9級の地震が想定されています。巨大地震で最も多くの命を奪うのは津波です。内閣府の想定でも、日本海溝・千島海溝の死者の大半は津波によるもので、早く避難するほど被害は小さくなるとしています。
- 自宅・職場・よく行く場所のハザードマップで、津波の浸水域と避難場所を確かめておく
- 海の近くで強い揺れや長くゆっくりした揺れを感じたら、警報を待たずに高い場所へ逃げる
- 冬の夜を想定し、防寒具・ライト・靴を枕元に置く(内閣府の想定では冬の深夜に被害が最大)
- 水・食料・携帯トイレを最低3日分、できれば1週間分備える
- 緊急地震速報が鳴ったら、数字の大小より先に、頭を守り揺れが収まるまで動かない
関連する備えの記事
南海トラフ地震で個人ができる対策、防災セットの中身で足りない3つもあわせてご覧ください。
マグニチュード9.9の地震についてよくある質問
Q. マグニチュード9.9の地震は実際に起きたのですか?
A. いいえ。2026年10月16日の緊急地震速報で「千島列島でM9.9」と表示されましたが、処理システムの過大推定でした。実際はカムチャツカ半島付近のM6.9(速報値)で、国内の最大震度は1。警報は約8分後に取り消されました。
Q. M9.9は東日本大震災の何倍ですか?
A. エネルギーで約22倍です。マグニチュードは1上がるとエネルギーが約32倍になり、0.9の差は約22倍にあたります。観測史上最大の1960年チリ地震(M9.5)と比べても約4倍です。
Q. 観測史上最大の地震は何ですか?
A. 1960年5月22日のチリ地震(M9.5)です。USGSによると、2位は1964年のアラスカ地震(M9.2)、3位は2004年のスマトラ島沖地震と2011年の東北地方太平洋沖地震(いずれもUSGSではM9.1)です。
Q. M10の地震は起こりますか?
A. USGSは、M10を起こせるほど長い断層は知られておらず、起こりえないとしています。研究者の試算では、M10には平均すべり100m級か、断層の長さ1,500km超が必要とされ、現在知られている沈み込み帯で条件を満たす場所ははっきりしていません。
Q. 日本で想定されている最大の地震はどのくらいですか?
A. 内閣府の想定では、千島海溝(十勝・根室沖)の最大クラスがMw9.3、日本海溝(三陸・日高沖)がMw9.1です。地震本部は、千島海溝でM8.8程度以上の超巨大地震が30年以内に起きる確率を7〜40%(2026年1月1日時点)としています。
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出典・参考資料
- USGS:Earthquake Catalog(ComCat)M8.0以上 1900〜2026年(当サイト集計)/Can megaquakes really happen? Like a magnitude 10 or larger?
- 蓬田清:M10地震の発生条件:2011年東北沖地震の新しい知見から(北海道大学地球物理学研究報告 76、2013年)
- 内閣府:日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震モデルの検討について(報告書本文)(2020年)/日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の被害想定について(2021年12月21日)
- 地震調査研究推進本部:長期評価による地震発生確率値の更新について(一覧、算定基準日2026年1月1日)
- 気象庁:平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震について(第28報)(2011年3月25日)
エネルギーの比較・断層の長さ・破壊の継続時間は、公表値をもとに当サイトが計算した概算です。データは2026年10月16日時点のものです。


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