社会・くらし|労働災害
ごみ収集車の巻き込まれ事故はなぜ起きる?34年276人の死亡を分析
10月4日の朝、福岡市東区の大型商業施設「ゆめタウン博多」で、段ボールを回収していた62歳の男性がごみ収集車の投入口に挟まれて亡くなりました。ごみ収集車の作業で亡くなる人は、毎年いまも6〜7人います。厚生労働省の死亡災害データベース34年分(1991〜2024年)を1件ずつ読み、何が原因で亡くなっているのかを数えました。
この記事の結論
- 厚生労働省の死亡災害データベースで、ごみ収集車(パッカー車・塵芥車)の作業や運転で亡くなった人を数えると、1991〜2024年の34年間で276人でした。直近10年(2015〜2024年)も66人で、年に6〜7人のペースが続いています。
- 仕事中の死亡全体は34年で約7割減りましたが、ごみ収集車の死亡は約3割しか減っていません。仕事中の死亡1,000人のうち、ごみ収集車の事故は1990年代の4.2人から直近10年は7.7人に増えています。
- 原因の1位は、今回の福岡と同じ「投入口の回転板・押込板への巻き込まれ」で66人(24%)。34年を前半と後半に分けると32人→34人で、まったく減っていません。そのうち20人は段ボール・古紙の作業中でした。
- 巻き込まれは、①詰まったごみや異物を手で取ろうとした、②別の人がスイッチを入れた、③足を滑らせて投入口に落ちた、の3つのパターンがそれぞれ9人ずつありました。
- 後半に増えたのは「停めた車が無人で動き出す事故」で、前半13人→後半31人と2.4倍。44人のうち21人は、動き出した車を止めようとして亡くなっていました。
福岡市東区のごみ収集車事故で何があった?10月4日の状況
警察や各社の報道によると、事故の概要は次のとおりです。亡くなった男性のご冥福をお祈りします。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発生日時 | 2026年10月4日(日)午前9時ごろ |
| 場所 | 福岡市東区東浜1丁目の大型商業施設「ゆめタウン博多」のごみ集積所 |
| 亡くなった人 | 福岡県福津市の62歳の男性アルバイト。ごみ収集車の投入口に頭などを挟まれ、搬送先の病院で死亡した |
| けがをした人 | 一緒に作業していた佐賀県唐津市の66歳の男性アルバイトも巻き込まれ、左腕をけが(意識はある) |
| 状況 | 2人で段ボールを回収していたところ、段ボール以外のごみが混ざっていたため、機械から取り除こうとしていた(福岡県警東署の発表)。施設の警備員が「男性がごみ収集車に顔を挟まれた」と119番通報した |
福岡県警東署の発表を伝えた共同通信・TNCテレビ西日本・RKB毎日放送・TVQ九州放送(2026年10月4〜5日)の報道をもとに作成。事故の詳しい原因は警察が調べています。
ごみ収集車の後ろには、投げ入れたごみを荷箱の奥へ押し込むための回転板(かき込み板)と押込板が付いています。段ボールのようにかさばるごみを圧縮できる便利な仕組みですが、動いている間に手や頭が入ると、強い力で一気に引き込まれます。今回の事故も、この「投入口」で起きました。

ごみ収集車の死亡事故は34年で276人|全体ほど減っていない
厚生労働省は、仕事中に亡くなった人の事故を1件ずつ「死亡災害データベース」として公開しています。1991年から2024年までの34年分(計49,326件)から、ごみ収集車(パッカー車・塵芥車・清掃車など)が関わった事故を探し出し、道路の清掃車やし尿の収集車などを除いて数えました。
死亡者数
(2015〜2024年)
巻き込まれ(1位)
・古紙の作業中
年に何人亡くなっている?10年ごとの推移
(直近10年)6.6人/年
1990年代は年に平均9.2人、直近10年は6.6人です。減ってはいるものの、その幅は約28%にとどまります。同じ期間に、仕事中に亡くなる人全体は2,489人(1991年)から746人(2024年)へ約70%減りました。
| 期間 | ごみ収集車 | 全業種 | 1,000人あたり |
|---|---|---|---|
| 1991〜2000年 | 92人 | 21,969人 | 4.2人 |
| 2001〜2010年 | 88人 | 14,577人 | 6.0人 |
| 2011〜2020年 | 69人 | 9,638人 | 7.2人 |
| 2015〜2024年(直近10年) | 66人 | 8,576人 | 7.7人 |
「1,000人あたり」は、仕事中に亡くなった人1,000人のうち、ごみ収集車の事故で亡くなった人の数。死亡災害データベース(2011年は東日本大震災を直接の原因とするものを除く)をもとに筆者が集計。
つまり、ほかの仕事の現場が安全になっていくなかで、ごみ収集の現場は取り残されているということです。仕事中の死亡全体に占める割合は、この30年でむしろ大きくなっています。
ごみ収集車の事故の原因は?1位は投入口の巻き込まれ
276人の事故を、災害状況の文章から9つに分けました。最も多いのが、今回と同じ投入口の回転板・押込板への巻き込まれです。
| 原因 | 前半 1991〜2005年 |
後半 2006〜2024年 |
どんな事故か |
|---|---|---|---|
| 投入口の回転板・押込板に巻き込まれ | 32人 | 34人 | ごみを押し込む後部の機械に体が入ってしまう |
| 停めた車が無人で動き出した | 13人 | 31人 | 坂道などで止めた車が勝手に動き、止めようとしてひかれる・挟まれる |
| 後退・発進する車にひかれ・挟まれ | 17人 | 20人 | バックの誘導中や、車の後ろで作業中に動いた車と壁の間に挟まれる |
| 走行中の交通事故 | 20人 | 11人 | 収集車を運転・同乗中の衝突や転落、路上作業中の追突 |
| テールゲートに挟まれ | 18人 | 11人 | 後部の扉(テールゲート)の開け閉めで車体との間に挟まれる |
| 移動中にステップ・荷台から転落 | 19人 | 6人 | 後部のステップや荷台に乗って移動し、振り落とされる |
| その他 | 9人 | 12人 | 整備中の事故、熱中症、火災など |
| 相手方の死亡 | 5人 | 8人 | ごみ収集車とぶつかった他の車・バイクの運転者など |
| 清掃工場のごみピットに転落 | 5人 | 5人 | ごみを降ろす作業中に深さ10m前後のピットへ落ちる |
| 合計 | 138人 | 138人 | 34年をほぼ半分に分けると、ちょうど同じ人数 |
死亡災害データベースの「災害状況」の文章をもとに筆者が分類(キーワードで候補を拾い、全件を目視で確認)。1件に複数の要素がある場合は、亡くなる直接のきっかけになったものに入れています。
巻き込まれは32人→34人で減っていない
34年を前半(1991〜2005年)と後半(2006〜2024年)に分けると、どちらも138人です。中身を比べると、減った事故と減っていない事故がはっきり分かれます。
- 減った:ステップや荷台に乗って移動中の転落(19人→6人)、テールゲートに挟まれ(18人→11人)、走行中の交通事故(20人→11人)
- 減っていない:投入口の巻き込まれ(32人→34人)
- 増えた:停めた車が無人で動き出す事故(13人→31人)
ステップへの立ち乗りは国の要綱で禁止され、テールゲートには降下を防ぐ安全棒やインターロック(運転席で操作しても下がらない仕組み)が求められてきました。こうした「ルールや装置で防げる事故」は確実に減っています。一方で、投入口の巻き込まれは、ごみを入れるたびに人が機械のすぐそばに立つという作業の形そのものから起きるため、減っていません。
段ボール回収が3割、午前中に半数以上
巻き込まれ66人のうち20人(30%)は段ボールや古紙を扱っていました。スーパーや商業施設の段ボール回収、古紙問屋での荷降ろしなどです。段ボールはかさばるので、回転板を何度も動かしながら押し込む作業になりがちです。今回の福岡の事故も、商業施設での段ボール回収中でした。
発生時刻が分かる事故を見ると、午前8時から正午までの4時間に37人(56%)が集中しています。ごみの収集が最も忙しい時間帯で、福岡の事故も午前9時ごろでした。
ごみ収集車の巻き込まれ事故はなぜ起きる?3つのパターン
巻き込まれ66人の災害状況を読むと、亡くなるまでの流れは大きく3つに分かれました(重なる事故もあります)。
- ① 9人詰まったごみ・異物を手で取ろうとした「ローラーに廃材が詰まった」「ホッパーの奥に残ったごみの破片を取り除こうとした」「刈った草と一緒に入れてしまった箕(み)をとっさに取ろうとした」など。福岡の事故も、段ボール以外のものを取り除こうとしたと報じられています。機械が止まっていないまま、反射的に手を伸ばしてしまうのが典型です。
- ② 9人中に体を入れているときに、別の人がスイッチを入れた「同僚が回転板を作動させた」「回転板を上げるよう指示したところ、同僚が誤って下げるボタンを押した」など。2人以上で作業していても、合図が伝わらないと起きます。巻き込まれた人を助けようとして操作したところ、さらに巻き込まれた例もありました。
- ③ 9人足を滑らせて投入口に落ちた「プラットホームの上から段ボールを投入していて転落」「パワーゲートの上で足を滑らせ、投入口に上半身が落ちた」など。投入口より高い台から入れる作業は、落ちたときに体ごと入ってしまいます。
また、66人のうち19人は頭・首・上半身を巻き込まれていました。投入口をのぞき込む姿勢のまま機械が動くと、手だけでは済みません。一人で作業していて、帰ってこないので見に行ったら機械の中で亡くなっていた、という事故も複数あります。
「回転板を連続運転させながら」の事故も
2019年と2020年には、テールゲートの回転板を連続で回したままごみを回収していて、体の一部がホッパーに入り、全身を巻き込まれた事故が続けて起きています。連続運転は作業が速く進む反面、手を入れた瞬間に止まる仕組みがなければ最も危険な使い方です。
ごみ収集車の安全ルールは?1987年の要綱と「連続方式」
ごみ収集車の事故が相次いだことから、国は1980年代から安全対策の通達を出しています。
- 1982年清掃事業における労働災害の防止について労働省が最初の「清掃事業における安全衛生管理要綱」を通知(基発第499号)。
- 1987年2月機械式ごみ収集車に係る安全管理要綱労働省が、機械式ごみ収集車の構造と作業の安全基準を定めた(基発第60号)。1987年4月以降に作られる車が対象。回転板が1回動くごとに止まる方式などを求めた。
- 1993年3月清掃事業における安全衛生管理要綱(見直し)作業中のホッパー内に体を入れない、ステップや荷台に乗って移動しない、坂道では車止めをする、などを定めた(基発第123号)。
回転板は「1回ごとに止まる」方式が基本
1987年の要綱を引いて労働局が示している内容では、ごみ収集車の積み込みの動き方は、次の3つの方式のどれかにするよう求められています。
- 1サイクル停止方式:回転板が1回の動作を終えるたびに止まる
- 回転板一たん停止方式:回転板が途中でいったん止まる
- 光電管などの危険防止機能:体の一部が危険な範囲に入ると、センサーが感知して回転板がすぐに自動停止する
そのうえで、緊急停止装置を付けて教育を受けた場合や、センサー付きの場合以外は、連続方式で作業しないよう呼びかけています。また、作業中のホッパーに体を入れないこと、ごみを押したり取り除いたりするときは補助具を使うことも、1993年の要綱に書かれています。
掃除や詰まり取りは「止めてから」が法律のルール
労働安全衛生規則(第107条)は、機械の掃除・点検・修理などをするときは、危険があれば機械の運転を止めなければならないと定めています。他の人が勝手に動かさないよう、起動装置に鍵をかけるなどの措置も必要です。巻き込まれの①・②のパターンは、まさにこのルールが守られなかった場面で起きています。
無人のごみ収集車が動き出す事故は2.4倍に
後半に増えたのが、運転席を離れたあとに車が勝手に動き出す事故です。前半13人に対し、後半は31人でした。
車による死亡
だったと記載
して死亡
(前半は13人)
ごみ収集は、数十メートルおきに止まっては降りる作業のくり返しです。「すぐ戻るから」とサイドブレーキが甘いまま、あるいはギアを入れたまま降りると、わずかな坂でも車は動き出します。そして半数近くの人は、動き出した車を体で止めようとして、車と壁・塀の間に挟まれたり、ひかれたりしていました。
1993年の要綱は「坂道では適当な車止めをする」と定めています。神奈川労働局も、ごみ収集車を止めるときはサイドブレーキに加えて輪止めを必ず使うよう呼びかけています。動き出した車は、追いかけず、前や後ろに回り込まないことが命を守ります。
ごみを出す側ができること
ごみ収集車の事故は作業員の安全管理の問題ですが、ごみを出す側の行動で減らせる危険もあります。
- 分別のルールを守る。段ボールの日に別のごみを混ぜると、作業員が投入口から取り出す必要が出てきます。福岡の事故も、混ざったごみを取り除こうとした場面でした。
- 収集中の車の後ろに近づかない。作業中の収集車はバックや発進をくり返します。子どもが「見たい」と近寄ることもあるので、家族で声をかけておきましょう。
- 作業中は話しかけない・急がせない。機械のそばで振り向いたり、手を止めたりする動きは危険です。
- 坂道や狭い道の集積所では、車の動きに注意する。無人で動き出す事故の多くは、坂道や傾斜地で起きています。
ごみ収集車の事故に関するよくある質問
Q. 福岡のごみ収集車の事故はどこで起きましたか?
A. 2026年10月4日午前9時ごろ、福岡市東区東浜1丁目の大型商業施設「ゆめタウン博多」のごみ集積所で起きました。段ボールを回収していた福津市の62歳の男性アルバイトが、混ざったごみを取り除こうとしてごみ収集車の投入口に挟まれ、搬送先の病院で亡くなりました。一緒にいた66歳の男性も巻き込まれて左腕をけがしています。
Q. ごみ収集車の事故で亡くなる人は年に何人ですか?
A. 厚生労働省の死亡災害データベースで数えると、1991〜2024年の34年間で276人、直近10年(2015〜2024年)は66人で、年に6〜7人のペースです。仕事中の死亡全体が約7割減ったのに対し、ごみ収集車の死亡は約3割しか減っていません。
Q. ごみ収集車の巻き込まれ事故はなぜ起きるのですか?
A. 後部の投入口には、ごみを押し込む回転板と押込板があり、動いている間に体が入ると一気に引き込まれます。34年の66人を見ると、①詰まったごみや異物を手で取ろうとした、②別の人がスイッチを入れた、③足を滑らせて落ちた、の3つのパターンが中心でした。
Q. ごみ収集車の回転板を連続で動かすのは禁止されていますか?
A. 1987年の「機械式ごみ収集車に係る安全管理要綱」をもとに、1サイクル停止方式・回転板一たん停止方式・光電管などで自動停止する方式のいずれかを使うことが求められています。緊急停止装置があって教育を受けた場合やセンサー付きの場合以外は、連続方式で作業しないよう労働局が呼びかけています。
Q. ごみ収集車の後ろのステップに乗って移動してもいいのですか?
A. 国の「清掃事業における安全衛生管理要綱」で、ごみ投入口のステップや荷台に乗って移動することは禁止されています。死亡災害データベースでも、ステップや荷台からの転落事故は前半(1991〜2005年)の19人から後半(2006〜2024年)は6人に減りました。
Q. ごみを出すときに気をつけることはありますか?
A. 分別のルールを守り、段ボールの日に別のごみを混ぜないことが作業員の危険を減らします。また、収集中の車はバックや発進をくり返すので、子どもも含めて車の後ろに近づかないようにしましょう。
まとめ|減らない「投入口の巻き込まれ」
- 10月4日、福岡市東区の商業施設「ゆめタウン博多」で段ボールを回収していた62歳の男性が、ごみ収集車後部の機械に巻き込まれて亡くなりました。
- ごみ収集車の作業で亡くなった人は34年で276人。仕事中の死亡全体ほどには減っておらず、いまも年に6〜7人が亡くなっています。
- 原因の1位は投入口の巻き込まれ(66人)で、前半と後半で32人→34人と減っていません。3割は段ボール・古紙の作業中でした。
- 後半には、停めた車が無人で動き出す事故が13人→31人に増えています。止めようとして亡くなる人が半数近くいます。
- 事故の原因や再発防止策について新しい情報が出たら追記します。
あわせて読みたい
出典・参考資料
- 厚生労働省 職場のあんぜんサイト:死亡災害データベース(平成3年〜令和6年の34年分を使用)
- 環境省(厚生省通知の転載):ごみ収集運搬車両に関する事故防止対策の充実について(昭和62年・機械式ごみ収集車に係る安全管理要綱)
- 環境省(厚生省通知の転載):廃棄物処理事業における労働安全衛生対策の強化について(平成5年・清掃事業における安全衛生管理要綱)
- 神奈川労働局:令和元年・令和2年に産業廃棄物処理業・その他の廃棄物処理業で発生した死亡災害について
- 共同通信(東京新聞):ごみ収集車にはさまれ死亡、福岡 段ボール回収作業中の62歳男性(2026年10月4日)
- TNCテレビ西日本:ごみ収集車の投入口に挟まれ作業員の男性死亡 ダンボール以外のごみを取り除こうとして… 福岡市(2026年10月4日)/RKB毎日放送・TVQ九州放送
死亡者数・原因別の分類・期間別の比較・時間帯は、死亡災害データベースの災害状況をもとに筆者が集計したものです(道路清掃車・し尿収集車・郵便収集車など、ごみ収集車ではない車の事故は除外)。データベースは2024年分までが公開されています。写真:Homare21「Bio Powered Rotary press garbage truck 02」(CC BY-SA 4.0、アイキャッチ・文字入れ加工)、Syced「Shoving cardboards into garbage truck」(CC0)、いずれもWikimedia Commons。


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