FX・税金と社会保険
FXの利益で扶養から外れるのはいくら?税と社会保険の2つの壁
扶養の話がわかりにくいのは、性質の違う壁が2本あるからです。税の壁(令和8年分から合計所得62万円)と社会保険の壁(年間収入130万円)。そしてFXには決定的な特徴があります。給与所得控除が使えないため、稼いだ額がそのまま合計所得になること。パートなら136万円で届く壁に、FXなら62万円で届きます。「103万円の壁」はすでに過去の数字です。国税庁と日本年金機構の一次資料で整理しました。
この記事の結論
- 税の壁は令和8年分(2026年分)から合計所得62万円。令和7年分は58万円、令和6年分以前は48万円で、毎年動いています。
- FXの利益には給与所得控除がありません。パートなら136万円で届く壁に、FXは62万円で届きます。実額でおよそ半分です。
- 配偶者には配偶者特別控除があり133万円まで段階的に減りますが、配偶者以外の扶養親族は62万円を超えた時点で控除がゼロになります。
- 「20万円以下なら申告不要」は扶養の話ではありません。扶養判定は申告の有無ではなく「合計所得金額」で行われます。
- 社会保険の壁は年間収入130万円未満(19〜23歳未満は2025年10月から150万円未満)。ただしFXの利益を含めるかは保険者の判断で、加入先への確認が必須です。
結論:FXなら62万円、バイト給与なら136万円。同じ「壁」ではない
扶養の話が混乱しやすいのは、壁が1本ではなく、性質の違う2種類が並んでいるからです。ひとつは税金の壁(配偶者控除・扶養控除)、もうひとつは社会保険の壁(健康保険の被扶養者)。判定の基準も、管轄も、超えたときに起きることも別です。
そしてFXの利益には、パート収入にはない特徴があります。給与所得控除が使えないため、稼いだ額がそのまま「合計所得金額」になることです。
パートで136万円稼いだ人は、給与所得控除74万円が引かれて合計所得金額は62万円。ぎりぎり扶養に残れます。ところがFXで62万円勝った人は、控除がないので合計所得金額がそのまま62万円。同じ「62万円」でも、手にした金額は半分以下です。FXの利益は、パート収入のおよそ半分の額で同じ壁に届きます。
税の壁:令和8年分から62万円に上がった
税制改正で毎年動いている
ここ数年で基準額が2回変わっています。古い記事の「103万円」「48万円」をそのまま信じると間違えます。
| 適用年分 | 扶養に入れる合計所得金額 | 給与収入だけの場合の目安 |
|---|---|---|
| 令和6年分以前(2024年まで) | 48万円 | 103万円 |
| 令和7年分(2025年) | 58万円 | 123万円 |
| 令和8年分以後(2026年〜) | 62万円 | 136万円 |
※国税庁タックスアンサーNo.1180(扶養控除)およびNo.1191(配偶者控除)より。令和8年分の規定は令和8年12月1日に施行されます。
令和8年分(2026年分)からは合計所得金額62万円以下が基準です。給与だけなら136万円以下に相当します(62万円+給与所得控除74万円)。
配偶者なら133万円まで段階的に控除が残る
配偶者の場合は、62万円を1円超えた瞬間に控除がゼロになるわけではありません。配偶者特別控除があり、合計所得133万円まで段階的に減っていきます。
| 配偶者の合計所得金額 | 本人の所得900万円以下 | 900万円超950万円以下 | 950万円超1,000万円以下 |
|---|---|---|---|
| 62万円超95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
| 95万円超100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 |
| 100万円超105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 |
| 105万円超110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 |
| 110万円超115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 |
| 115万円超120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 |
| 120万円超125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 |
| 125万円超130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 |
| 130万円超133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
※国税庁タックスアンサーNo.1195「配偶者特別控除」の令和8年分以降の表。控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超えると適用されません。
配偶者以外の扶養親族については、この段階的な仕組みがありません。合計所得62万円を1円でも超えれば、扶養控除38万円はゼロになります(19歳以上23歳未満の子については別の制度があり、別記事で扱いました)。断崖式なので、配偶者よりシビアです。
「20万円以下なら申告不要」は壁の話ではない
最も誤解が多いところです。給与所得者には「給与以外の所得が20万円以下なら所得税の確定申告は不要」というルールがあります。これを「20万円までは扶養に影響しない」と読むのは誤りです。
- 誤解20万円以下なら何も起きない20万円ルールは所得税の確定申告の手続きについてのルールです。住民税の申告義務までは免除されません。
- 正しくは扶養の判定は「合計所得金額」で行う扶養控除・配偶者控除の要件は「年間の合計所得金額が62万円以下であること」。確定申告をしたかどうかではなく、所得がいくらあったかで判定されます。
- 結果として住民税の申告から市区町村に把握される住民税の申告をすれば所得は自治体が把握し、扶養している側の勤務先にも「扶養是正」という形で連絡が行くことがあります。あとから扶養控除が取り消され、扶養者が追加で納税するケースです。
- 実務利益が出たら額にかかわらず把握しておくFX会社は毎年「年間損益報告書」を出します。20万円以下でも合計所得には含まれるという前提で、年末に集計しておくのが安全です。
社会保険の壁:130万円。ただしFXの扱いは要確認
基準は日本年金機構が示している
健康保険の被扶養者になる収入要件は、年間収入130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)、かつ同居なら被保険者の収入の半分未満です。
重要なのは「年間収入」の定義で、日本年金機構は「過去の収入のことではなく、被扶養者に該当する時点および認定された日以降の年間の見込み収入額」と説明しています。給与なら月額108,333円以下が目安です。
ここが最も情報が錯綜する部分です。日本年金機構が「収入に含まれる」と明示しているのは、雇用保険の失業等給付、公的年金、傷病手当金、出産手当金です。FXや株式の運用益については、明示的な全国共通の基準が示されていません。継続的・恒常的な収入ではないとして算入しない運用もあれば、算入する健康保険組合もあります。加入している健康保険組合(または協会けんぽ)に直接確認するのが唯一の正解です。
19歳以上23歳未満は150万円未満に引き上げ済み
2025年10月1日以降に扶養認定を受ける19歳以上23歳未満の親族(配偶者を除く)については、収入要件が130万円未満から150万円未満に引き上げられました。年齢は認定日が属する年の12月31日時点で判定します。大学生の子どもをもつ家庭に直結する変更です。
2つの壁を1枚にまとめる
| 壁の種類 | 基準 | バイト給与だけの場合 | FXの利益の場合 |
|---|---|---|---|
| 税の壁①(配偶者控除) | 合計所得62万円以下 | バイト給与のみなら136万円 | FX利益なら62万円 |
| 税の壁②(配偶者特別控除) | 合計所得133万円以下 | バイト給与のみなら207万円 | FX利益なら133万円 |
| 税の壁③(扶養親族) | 合計所得62万円以下 | バイト給与のみなら136万円 | FX利益なら62万円 |
| 社会保険の壁 | 年間収入130万円未満 | 19〜23歳未満は150万円未満 | 保険者の判断による |
※令和8年分の税制と、2025年10月以降の社会保険の基準による。社会保険の収入にFXの利益を含めるかは保険者によって扱いが異なります。
実務上の順序はこうなります。①まず税の壁(合計所得62万円)に当たり、②次に社会保険の壁(130万円)に当たる。ただし超えたときの影響は逆で、社会保険のほうがはるかに大きくなります。
税の壁を超えた場合:扶養している側の所得税・住民税が増えます。配偶者なら配偶者特別控除で段階的に減るため、手取りが逆転することは通常ありません。社会保険の壁を超えた場合:被扶養者から外れ、自分で国民健康保険料と国民年金保険料を払うことになります。金額は年間で数十万円規模になり得ます。手取りが減る逆転が起きるのはこちらです。
よくある質問
Q. FXの利益で扶養から外れるのはいくらからですか?
A. 税金の扶養は令和8年分(2026年分)から合計所得金額62万円以下が基準です。FXの利益には給与所得控除がないため、62万円勝った時点で基準に到達します。社会保険の被扶養者は年間収入130万円未満(19歳以上23歳未満は150万円未満)が基準ですが、FXの利益を収入に含めるかは保険者の判断によります。
Q. パート収入とFX利益で基準額が違うのはなぜですか?
A. 給与には給与所得控除があるためです。令和8年分の給与所得控除は収入220万円までなら74万円なので、パート136万円なら合計所得は62万円になります。一方FXの利益には控除がなく、62万円勝てば合計所得も62万円です。同じ壁に、およそ半分の金額で届くことになります。
Q. 103万円の壁ではないのですか?
A. 令和6年分までの基準です。令和7年分から合計所得58万円(給与123万円)、令和8年分からは合計所得62万円(給与136万円)に引き上げられました。国税庁タックスアンサーNo.1180とNo.1191に改正後の金額が掲載されています。古い記事の103万円をそのまま使うと判断を誤ります。
Q. 20万円以下なら確定申告が不要だから扶養にも影響しませんか?
A. 影響します。20万円ルールは所得税の確定申告の手続きに関するもので、住民税の申告義務は別に残ります。そして扶養控除・配偶者控除の要件は「年間の合計所得金額」で判定されるため、申告したかどうかとは関係がありません。あとから扶養控除が取り消され、扶養している側が追加で納税するケースがあります。
Q. 配偶者は62万円を超えたら即座に控除ゼロですか?
A. いいえ。配偶者には配偶者特別控除があり、合計所得133万円まで段階的に控除が減る仕組みです(納税者本人の合計所得が900万円以下の場合、最大38万円から3万円まで9段階)。一方、配偶者以外の扶養親族にはこの段階がなく、62万円を超えると扶養控除38万円が一度にゼロになります。
Q. 社会保険の130万円にFXの利益は含まれますか?
A. 保険者に確認してください。日本年金機構が収入に含まれると明示しているのは雇用保険の失業等給付、公的年金、傷病手当金、出産手当金です。FXや株式の運用益については全国共通の明確な基準が示されておらず、健康保険組合によって扱いが異なります。継続的な収入ではないとして算入しない運用もあります。
Q. 大学生の子どもがFXで稼いだ場合はどうなりますか?
A. 19歳以上23歳未満には特定扶養控除(63万円)と、2025年に創設された特定親族特別控除があり、一般の扶養親族とは別の仕組みになっています。社会保険の収入要件も2025年10月から150万円未満に引き上げられました。詳細は別記事で扱っています。
Q. 扶養を外れると具体的に何が起きますか?
A. 税の壁を超えた場合は扶養している側の所得税・住民税が増えます。社会保険の壁を超えた場合は被扶養者から外れ、自分で国民健康保険料と国民年金保険料を負担することになり、年間で数十万円規模の支出になり得ます。手取りの逆転が起きるのは社会保険のほうです。
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出典・参考資料
- 国税庁 タックスアンサー No.1180 扶養控除(合計所得金額62万円以下・令和8年分から)
- 国税庁 タックスアンサー No.1191 配偶者控除(給与収入136万円以下・配偶者特別控除は133万円以下)
- 国税庁 タックスアンサー No.1195 配偶者特別控除(令和8年分以降の控除額表)
- 国税庁 タックスアンサー No.1410 給与所得控除
- 国税庁 タックスアンサー No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係
- 日本年金機構「従業員が家族を被扶養者にするとき」(年間収入130万円未満の要件)
- 日本年金機構「19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定における年間収入要件が変わります」
本記事は一般的な制度の解説です。社会保険の被扶養者認定における収入の範囲は保険者によって取扱いが異なるため、必ず加入先の健康保険組合または協会けんぽにご確認ください。税務の具体的な判断は所轄の税務署または税理士にご相談ください。
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