2026年(令和8年分)の保険料控除申告書には、「年齢23歳未満の扶養親族」という新しい欄ができました。ここに子どもの名前を書くと、2012年以降に契約した生命保険の控除の上限が4万円から6万円に上がります。書き忘れると、この上乗せは受けられません。国税庁の記載例をもとに、書き方と「実際にいくら得するか」を確かめます。
新しい上限(従来4万円)
上限(変わらない)
特例の対象者
扶養親族が対象
結論:子どもの名前を☆欄に書き、計算式Ⅱで計算する
先に要点を書きます。令和8年分(2026年分)の年末調整では、年齢23歳未満(平成16年1月2日以後生まれ)の扶養親族がいる人は、新契約の一般生命保険料の控除額を新しい「計算式Ⅱ」で計算できます。控除の上限は4万円から6万円に上がります。
保険料控除申告書では、一般の生命保険料の欄にある「年齢23歳未満の扶養親族の有無」で「有」を選び、左下の「☆ 年齢23歳未満の扶養親族」欄に子どもの氏名・個人番号・生年月日などを書きます。やることはこれだけです。
ただし、誰でも得をするわけではありません。生命保険料控除は3つの区分を合わせて12万円が上限で、この上限は変わっていません。国税庁の記載例を計算し直すと、記載例の人は一般の生命保険料の控除が2万円増えても、合計がもともと12万円を超えているため、控除額は1円も変わりませんでした。この記事では、保険料ごとに増える控除額と減る税金を試算して、自分が得をするかどうかを確かめられるようにしました。
この記事の立場
国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」と保険料控除申告書の記載例をもとに、制度と計算方法を整理した記事です。特定の保険商品への加入や、いま入っている保険の解約をすすめるものではありません。
2026年分の保険料控除申告書で何が変わった?
令和7年度の税制改正で、子育て世帯への支援として、新生命保険料(遺族保障)の一般枠に2万円の上乗せが決まりました。国税庁の「年末調整のしかた」は、これを令和8年分・令和9年分の特例として説明しています。
23歳未満の扶養親族がいる人は、新契約の一般生命保険料の控除額を次の「計算式Ⅱ」で計算します。これまでの計算式Ⅰとくらべると、どの段も金額が大きくなっています。
| 年間の新生命保険料 | 計算式Ⅰ(従来) | 計算式Ⅱ(23歳未満の扶養親族あり) |
|---|---|---|
| 〜2万円 | 全額 | 全額 |
| 2万円超〜3万円 | ×1/2+1万円 | 全額 |
| 3万円超〜4万円 | ×1/2+1万円 | ×1/2+1.5万円 |
| 4万円超〜6万円 | ×1/4+2万円 | ×1/2+1.5万円 |
| 6万円超〜8万円 | ×1/4+2万円 | ×1/4+3万円 |
| 8万円超〜12万円 | 一律4万円 | ×1/4+3万円 |
| 12万円超 | 一律4万円 | 一律6万円 |
変わったのは新契約(2012年1月1日以後の契約)の一般の生命保険料だけです。次のものはこれまでと同じです。
- 介護医療保険料・個人年金保険料の控除(それぞれ最高4万円)
- 旧契約(2011年12月31日以前の契約)だけを払っている場合の控除(最高5万円)
- 生命保険料控除全体の上限12万円
- 住民税の生命保険料控除(上乗せは所得税だけ)
新契約と旧契約の両方を払っている場合は、2つの控除額の合計の上限が4万円から6万円に上がります。ただし、この場合も新生命保険料を払っていることが条件です。
対象になる「23歳未満の扶養親族」とは
特例の対象は、12月31日の時点で23歳未満の扶養親族がいる人です。令和8年分なら、平成16年(2004年)1月2日以後に生まれた人が当てはまります。
当てはまるかのチェック
・あなたと生計を一にする親族(子どもに限りません)
・平成16年1月2日以後に生まれている
・その人の令和8年の合計所得金額が62万円以下(給与だけなら年収136万円以下)
・16歳未満の子どもも対象です。扶養控除の対象にならない年齢でも、扶養親族には含まれます
2026年分から、扶養親族の所得の目安は58万円以下から62万円以下に上がりました。アルバイトをしている大学生の場合、給与の年収が136万円を超えると扶養親族ではなくなり、この特例の対象からも外れます。年収136万円超〜197万円以下の19〜22歳は「特定親族」という別の区分で、生命保険料控除の上乗せは受けられません。
国税庁の「年末調整のしかた」によれば、夫婦の間に23歳未満の扶養親族である子どもが1人いれば、夫婦の両方が特例を受けられます。扶養控除は夫婦のどちらか一方しか受けられませんが、この特例は別です。共働きでそれぞれ生命保険に入っている家庭は、2人とも☆欄に子どもを書けます。また、23歳未満の扶養親族が何人いても、☆欄に書くのはそのうち1人で足ります。
保険料控除申告書の書き方:4つの手順
国税庁の記載例(令和8年分 給与所得者の保険料控除申告書)に沿って、生命保険料控除の欄の書き方を説明します。手元に、10月ごろから保険会社から届く生命保険料控除証明書を用意してください。
- 証明書の内容を区分ごとに書き写す保険会社名・保険の種類・期間・契約者・受取人を書き、「新・旧の区分」は証明書に書かれた適用制度(新制度・旧制度)に丸をつけます。一般・介護医療・個人年金の区分を入れ替えることはできません。
- 「年齢23歳未満の扶養親族の有無」で「有」を選ぶ一般の生命保険料の欄で、新保険料の合計額(A)の横にある欄です。該当しない人は「無」のまま、これまでどおり計算式Ⅰで計算します。
- 左下の「☆ 年齢23歳未満の扶養親族」欄を書く扶養親族のフリガナ・氏名、個人番号、生年月日、あなたとの続柄、本年中の合計所得金額の見積額を書きます。住所があなたと違う場合は住所も書きます。個人番号は、一定の条件のもとで書かなくてよい場合があるので、勤務先に確認してください。
- 計算式Ⅱで控除額②を出す新保険料の合計(A)を計算式Ⅱに当てはめます。旧保険料もある場合は、②と③の合計(上限6万円)と③のうち大きいほうが、一般の生命保険料の控除額です。
計算式Ⅱを使うのは一般の生命保険料だけ
介護医療保険料と個人年金保険料は、23歳未満の扶養親族がいても計算式Ⅰ(旧契約は計算式Ⅲ)で計算します。うっかり介護医療保険料にも計算式Ⅱを使うと、控除額を多く書いてしまいます。
国税庁の記載例で計算すると、控除額は増えなかった
国税庁の記載例では、23歳未満の子どもが1人いる人が、次の保険料を払っています。
| 区分 | 年間の保険料 | 特例あり | 特例なし |
|---|---|---|---|
| 一般(新) | 8万円 | 5万円 | 4万円 |
| 一般(旧) | 3.5万円 | 3万円 | 3万円 |
| 一般の控除額 | ― | 6万円 | 4万円 |
| 介護医療(新) | 8万円 | 4万円 | 4万円 |
| 個人年金 | 新3万円+旧9万円 | 4.75万円 | 4.75万円 |
| 合計(上限12万円) | ― | 12万円 | 12万円 |
一般の生命保険料の控除は、特例で4万円から6万円に増えています。ところが3つを足すと、特例ありで14.75万円、特例なしでも12.75万円になり、どちらも上限の12万円で頭打ちです。介護医療や個人年金ですでに控除を目いっぱい使っている人は、特例で得をしません。
逆に、得をするのは介護医療保険や個人年金保険にあまり入っておらず、合計が12万円に届いていない人です。たとえば新契約の一般の生命保険料を年10万円、医療保険(介護医療保険料)を年4万円払っている人なら、控除は7万円から8.5万円に増えます。
保険料ごとに、いくら得する?【独自試算】
新契約の一般の生命保険料の金額ごとに、これまでの控除額と特例後の控除額を計算しました。生命保険料控除の合計が12万円に届かない人なら、この差額がそのまま所得控除の増加分になります。
| 年間の新生命保険料 | これまで | 2026年分(特例) | 増える控除 |
|---|---|---|---|
| 2万円 | 2万円 | 2万円 | 0円 |
| 3万円 | 2.5万円 | 3万円 | +5,000円 |
| 4万円 | 3万円 | 3.5万円 | +5,000円 |
| 5万円 | 3.25万円 | 4万円 | +7,500円 |
| 6万円 | 3.5万円 | 4.5万円 | +1万円 |
| 8万円 | 4万円 | 5万円 | +1万円 |
| 10万円 | 4万円 | 5.5万円 | +1.5万円 |
| 12万円以上 | 4万円 | 6万円 | +2万円 |
控除が増えると、そのぶんに所得税率をかけた額だけ税金が減ります。復興特別所得税(2.1%)も含めた目安は次のとおりです。
| 所得税率(課税所得) | 控除+1万円 | 控除+2万円 |
|---|---|---|
| 5%(195万円以下) | 約510円 | 約1,020円 |
| 10%(195万円超〜330万円以下) | 約1,020円 | 約2,040円 |
| 20%(330万円超〜695万円以下) | 約2,040円 | 約4,080円 |
| 23%(695万円超〜900万円以下) | 約2,350円 | 約4,700円 |
多くの会社員にあたる税率10%の人で、最大でも年約2,000円です。大きな金額ではありませんが、☆欄を書かなければ受けられない控除です。2026年分と2027年分の2年間あるので、忘れずに書いておきましょう。なお金融庁は、令和9年度の税制改正要望で、この上乗せを恒久的な制度にするよう求めています。
よくある書き間違い・見落とし
- 旧契約しか払っていないのに「有」にする:特例は新生命保険料にかかるものです。旧契約だけなら、控除はこれまでどおり最高5万円です。
- 16歳未満の子どもは対象外だと思い込む:扶養控除の対象ではありませんが、扶養親族なので☆欄に書けます。
- 大学生の子どものアルバイト収入を確かめない:給与の年収が136万円を超えると扶養親族ではなくなります。
- 夫婦の片方しか書かない:子どもが1人でも、夫婦それぞれが自分の保険料で特例を受けられます。
- 年末調整に間に合わなかった:12月の年末調整で書き忘れても、翌年に確定申告(還付申告)をすれば控除を受けられます。還付申告は5年以内なら出せます。
※子どもが生まれた・進学したといったタイミングは、家族のための死亡保障や医療保障を見直すきっかけにもなります。いまの保障が多すぎないか・足りないかを第三者に確認してもらいたい場合は、保険の無料相談を使う方法もあります。相談は無料で、すすめられた商品に入る義務はありません。控除を増やすためだけに保険に入る必要はありません。本記事は特定の保険商品や相談サービスをおすすめするものではありません。
保険料控除申告書2026のよくある質問
Q. 23歳未満の子どもが2人います。☆欄には2人とも書きますか?
A. いいえ、1人だけ書けば足ります。国税庁は、年齢23歳未満の扶養親族が複数いる場合は、いずれか1人を記載するとしています。人数が増えても、控除の上限は6万円のままです。
Q. 共働きで、夫婦どちらも生命保険に入っています。2人とも特例を使えますか?
A. 使えます。国税庁の「年末調整のしかた」は、同じ世帯の夫婦の間に23歳未満の扶養親族である子が1人いる場合、夫婦の両方が特例を受けられると説明しています。それぞれの保険料控除申告書の☆欄に子どもを書きます。
Q. 中学生の子どもは扶養控除の対象外ですが、特例の対象になりますか?
A. なります。16歳未満の子どもは扶養控除の対象ではありませんが、合計所得金額が62万円以下なら扶養親族です。平成16年1月2日以後に生まれていれば、☆欄に書けます。
Q. 住民税の生命保険料控除も増えますか?
A. 増えません。2万円の上乗せは所得税の生命保険料控除だけの措置です。住民税の生命保険料控除の計算はこれまでと同じです。
Q. 年末調整で☆欄を書き忘れました。どうすればいいですか?
A. 翌年に確定申告(還付申告)をすれば、特例を反映した控除を受けられます。還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間出せます。年末調整のやり直しができるかは勤務先によるので、まずは早めに相談してください。
まとめ:☆欄に1人書くだけ。合計12万円に届かない人が得をする
令和8年分の保険料控除申告書では、23歳未満の扶養親族がいる人は、一般の生命保険料(新契約)の控除を最高6万円まで受けられます。「有」を選び、☆欄に子どもを1人書き、計算式Ⅱで計算するだけです。
得をするのは、新契約の生命保険料を年3万円以上払っていて、生命保険料控除の合計が12万円に届いていない人です。介護医療保険や個人年金保険ですでに上限まで使っている人は、書いても控除額は変わりません。税率10%の人で年最大約2,000円と小さな額なので、この特例のためだけに保険に入る必要はありません。手元の控除証明書で、自分がどちらに当たるかを確かめてから書いてください。
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【出典】国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」(Ⅰ 昨年と比べて変わった点、2-3 保険料控除申告書の受理と内容の確認)/国税庁「令和8年分 給与所得者の保険料控除申告書の記載例」/国税庁「年末調整を受ける際の注意事項」/国税庁タックスアンサー「No.1140 生命保険料控除」/金融庁「令和9年度税制改正要望(生命保険料控除制度の拡充の恒久化等)」(対象者約990万人の見込み)/総務省「令和9年度地方税制改正要望」(令和7年度税制改正大綱の抜粋)。保険料別の控除額・減税額と、記載例の「特例なし」の場合の控除額は編集部の計算です。


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