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草津白根山の湯釜はなぜ1週間で中止?240台の駐車場に1日2300台
群馬県草津町は、草津白根山の火口湖「湯釜(ゆがま)」を見渡せる登山道と展望所の試行的な開放を、10月19日(月)で打ち切りました。湯釜の見学ができるようになったのは2018年4月以来、約8年ぶりで、11月8日まで続く予定でした。中止の理由は火山活動の変化ではなく、想定をはるかに超える人と車が押し寄せ、国道の渋滞で万一のときの避難や救急車の通り道を確保できなくなるおそれが出たためです。町の発表と気象庁の記録、町の観光統計をもとに、なぜ1週間で終わったのかを数字で整理します。
この記事の結論
- 草津町は湯釜周辺の西側登山道と弓池周辺の一部を10月13日から11月8日まで(27日間)開放する予定でしたが、10月19日で中止しました。実際に開いたのは7日間、予定の約26%です。
- 町が挙げた理由は、①国道292号の入場待ちや渋滞で、噴火などのときの避難・救援の動線を確保できないおそれ、②周辺の道路交通への大きな影響とトイレ待ちなどの衛生面の課題、の2つです。火山活動の変化が理由ではありません。
- 町の駐車場は普通車約240台。一方、報道では17日・18日に1日約2,300台が訪れました。当サイトの試算では、全車を受け入れるには1台あたり平均38分で入れ替わる必要があり、往復の歩行(健脚で約40分)だけで超えてしまいます。
- 気象庁の記録では、湯釜付近の噴火警戒レベルは2014年6月以降の約12年のうち約54%の期間がレベル2。レベル1だった2021〜2025年も見学は再開されず、今回が約8年ぶりの開放でした。
- 湯釜が見られなかった間も草津町の観光客は増え続け、2025年度は4,053,223人と、統計を確認できる2012年度以降で最多でした。来年度以降の開放の方法は、町が今回の結果を検証して決めます。
車の台数は群馬テレビ(10月19日)が伝えた町の説明(17日・18日の1日あたり)。駐車場の台数と渋滞の長さは草津町の発表によります。倍率は当サイトの計算です。
湯釜の見学中止、何が起きた?
草津町が10月8日に出した開放のお知らせと、10月20日に更新した中止の発表をもとに、今回の開放の条件と中止の内容をまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開放した場所 | 湯釜火口から500mの立入規制区域の外にある西側登山道(約610m)と展望所、弓池周辺の一部。展望所から湯釜火口までは約550m |
| 予定期間 | 2026年10月13日(火)〜11月8日(日)。11月中旬の国道292号の冬季閉鎖を見込んだ設定 |
| 利用時間 | 登山道の入場は10時〜15時、16時に開放区域と駐車場を閉鎖 |
| 駐車場 | レストハウス前の1か所、無料。普通車約240台・大型車約20台。満車時は国道で待たずに通過するよう求めていた |
| 現地の体制 | 安全管理ガイド3〜4人程度、土日祝日は警備員2人を追加する予定だった |
| 中止 | 10月19日(月)で終了。20日以降は開放区域と駐車場の利用を停止 |
| 中止の理由 | 国道の入場待ち・渋滞で避難や救援の動線を確保できなくなるおそれ、周辺交通への影響、トイレ待ちなど衛生環境の課題。火山活動の変化ではない |
| 今後 | 交通・避難・施設運営・区域管理の面から検証し、将来の開放のあり方を検討。再開の日時や方法は未定。国道292号は通行できる |
湯釜は直径約300m、水深約30mの火口湖で、白っぽい火口壁とエメラルドグリーンの湖面で知られています(読売新聞)。草津温泉と並ぶ草津の代表的な景色ですが、火山活動が活発になった2018年4月以降、見学できない状態が続いていました。

開放から中止までの1週間
- 10月8日町が試行的な開放を正式に告知期間は11月8日まで。満車時の国道での待機をしないよう、最初から呼びかけていました(草津町)。
- 10月13日約8年ぶりに開放登山道は午前9時50分に開放されました(読売新聞)。NBS長野放送は、絶景を楽しもうと大勢の人が訪れた様子を伝えています(NBS)。
- 10月17日朝7時から入場待ちの車町はライブカメラで駐車場入口に並ぶ車を確認し、国道上での待機をやめるよう緊急の呼びかけを出しました。開放そのものの中止もありうると明記しています(草津町)。
- 10月18日満車、約7kmの渋滞午前10時30分時点で駐車場は満車、駐車場付近で約7kmの渋滞が発生していると町が発表しました(草津町)。群馬テレビによると、17日と18日は1日あたり約2,300台の車が訪れました。
- 10月19日この日で開放を中止町は「安全を第一に」との考えから、19日で試行的な開放を終えると発表しました(草津町)。
なぜ1週間で中止?町が挙げた2つの課題
町の発表は、中止の判断の中心になった課題を2つ挙げています。
1. 噴火のときの避難・救援の動線
国道292号では、入場を待つ車の滞留と激しい渋滞が繰り返し起きました。湯釜は活火山の火口です。万一、火山災害が起きたときに避難の誘導や救急車・消防車などの通行を確保できなくなるおそれがあり、町は安全管理上の重大な課題と位置づけました。読売新聞によると、町は「災害発生時に安全性を担保できない」としています(読売新聞)。
2. 周辺の道路交通と衛生環境
国道292号は湯釜への観光だけでなく、群馬県と長野県を結び、近隣の町村や県外との行き来にも使われる道路です。渋滞で一般の通行に大きな支障が出ました。さらに、トイレは白根レストハウス内の一部だけだったため、トイレ待ちが常に発生する状態になりました。
町は現場の職員を当初予定の3倍以上に増やし、車の誘導や安全管理、注意の呼びかけを強めましたが、課題を十分に解消できる見通しが立たないと判断しました。発表では、今回の中止は運営上の判断であり、火山活動の変化を理由とするものではないと明記しています。
駐車場240台に1日約2,300台が来たら:当サイトの試算
どれほど受け入れ能力を超えていたのかを、町が公表した条件で計算してみます。駐車場は普通車約240台で、10時から16時までの6時間しか使えません。報道された1日約2,300台をすべて止めるには、1台あたりの平均駐車時間を約38分に収める必要があります。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 開放した駐車場の普通車の台数 | 約240台 |
| 駐車場を使える時間(10時〜16時) | 6時間 |
| 1日に使える「台×時間」 | 1,440台・時間 |
| 1日約2,300台をすべて受け入れるのに必要な平均の駐車時間 | 約38分以内 |
| 登山道の往復にかかる時間(健脚で片道約20分) | 約40分+見学時間 |
| 1台1時間で入れ替わった場合に受け入れられる台数 | 最大1,440台(約2,300台の63%) |
ところが町のQ&Aでは、登山道は約610mの玉石舗装で、健脚の人でも片道約20分かかります。往復だけで約40分となり、湯釜を眺める時間を入れれば、平均38分で入れ替わるのは現実的ではありません。1台が1時間で出ていくと仮定しても、受け入れられるのは1日1,440台が上限で、残りの車は駐車場の外で待つか、引き返すしかない計算です。
試算の前提
大型車用の約20台分は含めていません。約2,300台は群馬テレビが伝えた町の説明(17日・18日の1日あたり)で、駐車できなかった車も含まれるとみられます。試算は「駐車場だけでは受け止められない規模だった」ことを示すための目安です。
湯釜が8年閉ざされた理由:噴火警戒レベルの12年
湯釜周辺の立ち入りは、気象庁の噴火警戒レベルと、草津町長が災害対策基本法第63条にもとづいて設定する立入規制区域で決まります。気象庁の噴火警報・予報の発表履歴から、白根山(湯釜付近)のレベルの変化を並べました。
| 発表日 | レベル | 主な内容 |
|---|---|---|
| 2014年6月3日 | 1→2 | 湯釜付近で火山性地震が増え、膨張を示す地殻変動。山頂火口から約1kmで警戒 |
| 2017年6月7日 | 2→1 | 湯釜の湖水の火山ガス由来成分が低下傾向に |
| 2018年1月23日 | 1→2→3 | 本白根山で噴火(当時は草津白根山として1つのレベル)。3月16日から本白根山と湯釜付近を分けて運用 |
| 2018年4月22日 | 1→2 | 湯釜付近で火山性地震が増加。ここから湯釜の見学ができない状態に |
| 2018年9月21日 | 2→1 | 地震が少ない状態に |
| 2018年9月28日 | 1→2 | 1週間後に再び地震が増加 |
| 2021年3月23日 | 2→1 | 静穏時の状態に戻る傾向。ただし火口から約500mでは小規模な噴出の可能性 |
| 2024年9月9日 | 1継続 | 気象庁が「火山活動が高まる可能性」と解説情報を発表 |
| 2025年8月4日 | 1→2 | 湯釜付近を震源とする火山性地震が増加 |
| 2026年5月15日 | 2→1 | 静穏時の状態に戻る傾向が明瞭に。これを受けて町が開放を検討 |
2014年6月3日から2026年10月19日までの4,521日のうち、湯釜付近がレベル2(火口周辺規制)だった日数を合計すると2,443日、約54%になります(2018年1〜3月の本白根山の噴火に伴うレベルは除いて計算)。湯釜の見学ができなくなった2018年4月22日から今回の開放までは3,096日(約8.5年)でした。
湯釜付近がレベル2だった期間ごとの日数(発表日から引き下げ日まで)。気象庁の発表履歴から当サイトが計算。
レベル1でも見学できなかった4年余り
2021年3月から2025年8月までの約4.4年間はレベル1でしたが、湯釜の見学は再開されませんでした。2024年には町が9月下旬からガイド付きの見学を計10日間予定していましたが、気象庁が9月9日に「火山活動が高まる可能性がある」との解説情報を出し、この年の実施は取りやめになりました(ニッポン旅マガジン)。その後、2025年8月にレベル2に上がっています。
レベル1は「安全」の意味ではない
レベル1の名前は「活火山であることに留意」です。気象庁の火山活動解説資料(令和8年9月)は、湯釜付近は静穏に経過しているとしつつ、近年は熱水や火山ガスの一時的な供給増加とみられる地震や傾斜変動を繰り返しており、火山活動が急変する可能性もあるとしています。湯釜火口から概ね500mの範囲では、ごく小規模な火山灰などの噴出の可能性があり、町は今回の中止後もこの500mの立入規制を続けています。
湯釜が見られない間も、草津の観光客は過去最多に
湯釜を見られなかった8年間、草津町の観光はどうなっていたのでしょうか。町が公表している入込客数(年度別)を並べました。
草津町の入込客数(宿泊客+日帰り客、年度)。青は湯釜の見学ができた最後の年度(2017年度)、赤は最多の2025年度。
本白根山の噴火と湯釜付近のレベル引き上げがあった2018年度は3,087,162人で、前年度より3.9%減りました。コロナ禍の2020年度には1,943,588人まで落ち込みましたが、その後は回復し、2025年度は4,053,223人。湯釜を見学できた2017年度(3,213,160人)を約26%上回り、2012年度以降で最多です。
2025年10月の入込客数は339,571人で、1日あたり約10,954人。町全体の観光客がこれだけ多い中で、湯釜は約8年ぶりに、しかも紅葉の時期に1か所の駐車場だけで受け入れる形になりました。報道された1日約2,300台は、車1台に複数人が乗っていれば、町を訪れる人の数に比べても小さくない規模です。
なお、入込客数は町全体の数字で、湯釜を目的に来た人の数は分かりません。湯釜の閉鎖が観光客数にどれだけ影響したかを、この統計だけで判断することはできません。
湯釜の見学はいつ再開?今後の見通し
10月20日時点で、再開の日時や方法は決まっていません。町は関係機関と情報を共有し、交通・避難・施設運営・区域管理の面から今回の結果を検証して、将来の開放のあり方を検討するとしています(草津町)。
もともと今回の開放は、利用状況や混雑、安全管理上の課題を確かめて来年度以降の開放方法や管理体制の検討につなげる試行と位置づけられていました(草津町)。町のQ&Aでも、来年度以降の期間や方法は未定としています。また、国道292号の志賀草津道路は例年11月中旬に冬季閉鎖に入るため、今シーズン中の再開は時間的にも限られます。
読売新聞によると、宮崎公雄町長は「苦渋の決断だった」と述べ、今回の課題を踏まえて将来の開放のあり方を検討する考えを示しています(読売新聞)。
今、湯釜の周辺に行く場合の注意
国道292号は通行できますが、試行開放していた駐車場と登山道・展望所は10月20日から使えません。湯釜火口から概ね500mの立入規制も続いています。火山ガスがくぼ地などにたまることもあるため、通行時は町と気象庁の最新情報を確認してください。
見学中止の報道(X)
上毛新聞と共同通信は10月19日、草津町が想定以上の混雑を理由に湯釜の見学開放を中止したと伝えました。再開の時期や方法は、町が「未定」としています。
草津白根山の「湯釜」、開放を中止 想定以上の混雑で#上毛新聞https://t.co/6qJBTe29wX
— 上毛新聞 (@jomo_news) October 19, 2026
渋滞で「湯釜」観光中止、草津町 - 8年ぶり解除から1週間でhttps://t.co/0VAG4udqAt
— 共同通信公式 (@kyodo_official) October 19, 2026
草津白根山・湯釜のよくある質問
Q. 湯釜の見学はなぜ中止になったのですか?
A. 想定を大きく上回る人と車が訪れ、国道292号で入場待ちの車の滞留や激しい渋滞が繰り返されたためです。草津町は、噴火などのときに避難誘導や救急車などの通行を確保できなくなるおそれがあることと、周辺交通への影響やトイレ待ちなどの課題を理由に、10月19日で開放を中止しました。火山活動の変化が理由ではありません。
Q. 湯釜はいつまで見学できましたか?
A. 2026年10月13日から10月19日までの7日間です。当初は11月8日までの27日間の予定でした。10月20日以降は開放区域と駐車場の利用が止まっています。
Q. 湯釜の見学は再開されますか?
A. 10月20日時点で再開の日時や方法は決まっていません。草津町は交通・避難・施設運営・区域管理の面から今回の結果を検証し、将来の開放のあり方を検討するとしています。
Q. 噴火警戒レベル1なら湯釜の近くまで行けますか?
A. 行けません。レベル1は「活火山であることに留意」という意味で、安全を保証するものではありません。湯釜火口から概ね500mの範囲ではごく小規模な火山灰などの噴出の可能性があり、草津町長が災害対策基本法にもとづいて500mの立入規制を続けています。
Q. なぜ湯釜は8年間見られなかったのですか?
A. 2018年4月に湯釜付近の噴火警戒レベルが2に上がり、立ち入りが規制されたためです。2021〜2025年はレベル1でしたが、2024年は気象庁が火山活動が高まる可能性を示して予定していた見学が中止になり、2025年8月には再びレベル2に上がりました。2026年5月にレベル1に下がり、10月13日に約8年ぶりの開放となりました。
あわせて読みたい
出典・参考資料
- 草津町:【重要】試行的開放の期間途中での中止について(2026年10月20日更新)
- 草津町:草津白根山西側登山道周辺施設の一部開放について(2026年10月8日)、Q&A 草津白根山 一部開放に関する質問・回答例(PDF)
- 草津町:【緊急】草津白根山駐車場周辺における国道上での待機禁止について(10月18日)、草津白根山駐車場周辺における国道の混雑状況について(10月18日)
- 草津町:今月の入込状況(年度別入込客数)
- 気象庁:草津白根山(白根山(湯釜付近))噴火警報・予報の発表状況、噴火予報:警報解除(2026年5月15日)、噴火警報(火口周辺)(2018年1月23日)、火山の状況に関する解説情報(2024年9月9日)、火山活動解説資料(令和8年9月)
- 群馬テレビ「草津白根山「湯釜」19日で開放終了 解除から1週間 想定上回る混雑」(10月19日)
- 読売新聞「草津白根山・白根山の火口湖「湯釜」見学開放、観光客殺到で19日終了」(10月19日)、同「8年ぶり見学可能に」(10月13日)
- NBS長野放送(10月13日)、ニッポン旅マガジン(2024年9月)
レベル2の日数、駐車場の試算、入込客数の比較は当サイトの計算です。写真:アイキャッチ=skyseeker/Wikimedia Commons(CC BY 2.0)、本文=663highland/Wikimedia Commons(CC BY 2.5)。いずれも過去に撮影されたもので、アイキャッチはトリミング・文字入れあり。


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