科学|太陽系外惑星
太陽系外惑星から電波を初検出|がか座ベータ星bで何がわかった?
地球から約63光年離れた巨大惑星「がか座ベータ星b」から、惑星そのものが出している電波が初めて捉えられました。米ハーバード・スミソニアン天体物理学センターなどのチームが南アフリカの電波望遠鏡ミーアキャットで観測し、CNNが報じたことで日本でも検索が急上昇しています。正体は宇宙人の信号ではなく「オーロラの電波」。そこから、太陽系の外の惑星で初めて磁場の強さが測れました。NASAのデータで、この発見の「珍しさ」も数字で確かめます。
この記事の結論
- がか座ベータ星bから、くり返し強まる電波(バースト)が見つかりました。電波の向きがねじれた「円偏波」で、地球や木星のオーロラと同じしくみで出る電波と判断されています。
- 電波が出ていた場所を、遠くのクエーサー9個などを目印に精密に割り出した結果、恒星ではなく惑星bの位置と一致しました。恒星の可能性は4.4シグマ(偶然では説明しにくい水準)で否定されています。
- 電波の最高周波数3.5ギガヘルツから、惑星の磁場は1,250ガウス以上と計算されます。太陽系外の惑星で磁場の強さを直接測ったのは初めてです。地球の約2,000〜5,000倍、木星と比べても数百倍の強さです。
- NASAのアーカイブに載る系外惑星6,445個のうち、望遠鏡で姿を直接撮影できたのは97個(1.5%)だけ。恒星から離れて「写る」惑星だからこそ、電波の出どころを惑星に絞り込めました。
- 論文はまだ査読前です。チームは45パーセク(約147光年)以内にある5つの惑星系の7個も同じ方法で狙えるとしており、今後は次世代の電波望遠鏡SKAでの観測が期待されます。
(がか座ベータ星b)
地球の約2,000倍超
系外惑星(1.5%)
観測で毎回検出
太陽系外惑星から電波を初検出|何が発表された?
発表したのは、米ハーバード・スミソニアン天体物理学センター(CfA)のケビン・オルティス・セバリョス氏、エド・バーガー教授と、米オレゴン大学のイベット・センデス氏のチームです。論文は2026年9月15日、査読前の論文を公開するサーバー「arXiv(アーカイブ)」に投稿されました。CNNが10月2日(日本語版は10月10日)に報じ、日本でも「太陽系外惑星」の検索が急上昇しました。
チームは南アフリカの電波望遠鏡ミーアキャット(MeerKAT)で、がか座ベータ星の惑星系を2025〜2026年に4回観測し、4回とも惑星の位置から電波を検出しました。
- 2025年2月15日最初の観測(Lバンド=0.86〜1.71GHz)褐色矮星や系外惑星の電波を探す広い調査の一環で、がか座ベータ星の位置に電波源が見つかりました。
- 2025年5月31日9.3時間の追加観測でバーストを確認望遠鏡の所長裁量時間を使った追観測で、短時間に強まる電波がくり返し現れました。左回りの円偏波でした。
- 2026年2月20日Sバンド(1.75〜3.5GHz)でも検出アンテナ群を2つに分けて1.7〜2.6GHzと2.6〜3.5GHzを同時に観測し、帯域の全体で電波を確認しました。
- 2026年5月2日3.5GHzまで届くバースト=磁場を算出今度は右回りの円偏波のバーストが、観測帯域の上限3.5GHzまで出ていました。この画像を使って、電波の出どころが惑星bだと特定しました。
- 2026年9月15日論文をarXivに公開学術誌の査読を受けている段階です。10月2日にCNNが報じ、世界に広まりました。

がか座ベータ星bとはどんな惑星?
がか座ベータ星(β Pictoris)は、南天の「がか座」にある3.9等の星です。太陽の約1.8倍の重さがあり、年齢は約2,300万歳と非常に若く、まわりにはちりの円盤が広がっています。惑星は現在3つ(b・c・d)が知られ、bはそのうち最も重い巨大ガス惑星です。
| 項目 | がか座ベータ星b |
|---|---|
| 距離 | 約63光年(NASAアーカイブでは19.7パーセク=約64光年) |
| 重さ | 木星の約9〜12倍(研究により推定値に幅。最新値は8.7倍) |
| 大きさ | 木星の約1.65倍の半径 |
| 恒星からの距離 | 約10天文単位(太陽と土星の距離とほぼ同じ) |
| 公転周期 | 約24年 |
| 自転周期 | 約8時間(分光観測による推定) |
| 恒星 | がか座ベータ星:A6型、太陽の約1.8倍の重さ、年齢約2,300万歳、3.9等 |
| 発見 | 2008年、ESOのVLT望遠鏡による直接撮像(2003年の観測データから) |

bは2008年に、チリのVLT望遠鏡で姿そのものを撮影する「直接撮像」で見つかりました。恒星から約10天文単位(太陽〜土星くらい)離れているため、恒星のまぶしさに埋もれずに写ります。この「恒星から離れて見える」性質が、今回の電波の発見でも決め手になりました。
電波で何がわかった?磁場は木星の何倍
今回の電波は、地球の北極や南極で見られるオーロラと同じしくみで出ています。磁場にそって加速された電子がらせんを描いて動くとき、「電子サイクロトロン・メーザー」と呼ばれる強い電波を出します。この電波は、磁場が強いほど高い周波数になるのが特徴で、周波数(MHz)÷2.8=磁場の強さ(ガウス)という関係があります。
がか座ベータ星bのバーストは3.5ギガヘルツ(3,500メガヘルツ)まで出ていたので、3,500÷2.8=1,250ガウス以上の磁場がある計算です。最高周波数は観測帯域の上限だったため、本当の磁場はさらに強い可能性もあります。
| 天体 | オーロラ電波の周波数 | 磁場の強さ(目安) |
|---|---|---|
| 地球 | キロメートル波(数百キロヘルツ) | 表面で約0.25〜0.65ガウス |
| 木星 | デカメートル波(最高約40メガヘルツ) | 極付近で約14ガウス(40÷2.8)、赤道付近で約4ガウス |
| がか座ベータ星b | 0.85〜3.5ギガヘルツ(観測帯域の全体) | 1,250ガウス以上(3,500÷2.8) |
「木星の何倍」は比べ方で変わる
木星のオーロラ電波は最高約40メガヘルツで、同じ式なら約14ガウス。最高周波数どうしで比べると約90倍です。木星の赤道付近の磁場(約4ガウス)と比べれば約300倍になります。CNNの取材にバーガー教授は「少なくとも木星の200倍」と答えており、どの数字も「木星をはるかに上回る」という点では一致しています。
なぜ恒星ではなく「惑星の電波」と言えるのか
これまでも、惑星をもつ恒星の方向から電波が見つかった例はありました。しかし、恒星自身が出す電波と区別できず、「惑星からの電波」とは言い切れませんでした。
今回のチームは、画像の中に写る遠くのクエーサー9個と、位置が精密にわかっている電波源1個を目印に、画像の位置ずれをていねいに補正しました。その結果、電波源の位置は惑星bと一致し、恒星とは4.4シグマ、惑星cとも大きくずれることがわかりました。目印の組み合わせを変えた55通りの計算でも、結論は変わりませんでした。
さらに、恒星の磁場はこれまでの観測で弱いことがわかっており、1,250ガウスもの磁場は持てません。出どころの位置と磁場の強さ、2つの面から恒星説は否定されています。電波が強まる間隔も、惑星の自転周期(約8時間)と近いと論文は指摘しています。
「宇宙人の信号」ではありません
今回の電波は、惑星の磁場と電子が自然に出すオーロラの電波です。バーガー教授もCNNに、地球外の知的生命を探すときに狙う電波とは「まったく別物」だと説明しています。木星・土星や太陽、褐色矮星も、同じような電波を出しています。
データで見る:系外惑星6,445個のうち「写る」のは1.5%
今回の発見がなぜ「初」になったのかは、系外惑星の見つかり方を見るとよくわかります。NASA太陽系外惑星アーカイブに登録された確認済みの惑星を、発見方法ごとに数えました(2026年10月11日取得)。
全6,445個のうち、4,781個(74%)は恒星の前を惑星が横切って暗くなる「トランジット法」、1,203個は恒星のふらつきを測る「視線速度法」で見つかっています。どちらも恒星の光の変化から惑星の存在を推定する方法で、惑星の姿そのものは見えていません。
これに対し、姿を直接撮影できた惑星は97個(1.5%)だけです。恒星から十分に離れていて、しかも若くて自ら赤外線で光る巨大惑星でないと写らないからです。電波の出どころを「恒星ではなく惑星」と見分けるには、画像の上で恒星と惑星が離れている必要があり、この97個の中から次の観測候補が選ばれます。
直接撮像で見つかった惑星は年に数個
| 期間 | 直接撮像の発見数 | 主な出来事 |
|---|---|---|
| 2004〜2007年 | 10個 | 直接撮像による発見が始まる |
| 2008〜2012年 | 17個 | 2008年にがか座ベータ星b、HR 8799の惑星3個 |
| 2013〜2017年 | 19個 | エリダヌス座51番星bなど |
| 2018〜2022年 | 19個 | 2019年にがか座ベータ星c(視線速度法) |
| 2023〜2026年 | 32個 | 2024年は過去最多の11個。2026年にがか座ベータ星d |
直接撮像による発見は、多い年でも10個前後です。がか座ベータ星bが見つかった2008年は、HR 8799の惑星3個などあわせて7個が報告された「当たり年」でした。地球から45パーセク(約147光年)以内に限ると、直接撮像の惑星は28個あります。論文は、このうち恒星から適度に離れた5つの惑星系の7個が同じ方法の候補になるとしています。
発見方法・発見年はNASA太陽系外惑星アーカイブ(Planetary Systems表、default_flag=1)を筆者が集計したものです。登録数は日々更新されるため、取得日によって数字が変わります。
これまでの電波探し|日本のチームも挑んでいた
系外惑星の電波は、20年以上前から世界中で探されてきました。ただ、見つかっても「候補」止まりか、恒星の電波と区別できないものばかりでした。
| 年 | 対象 | 望遠鏡 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 2020年 | うしかい座タウ星b など | LOFAR(欧州) | 14〜21メガヘルツで惑星由来の可能性がある信号。「候補」にとどまる |
| 2023年 | くじら座YZ星 | VLA(米国) | 恒星から周期的な電波。惑星との相互作用の可能性が指摘されたが、出どころは恒星 |
| 2023年 | がか座ベータ星b | uGMRT(インド) | 日本のチームが250〜500メガヘルツで探索。検出なし(上限0.18ミリジャンスキー) |
| 2026年7月 | HD 189733 | NenuFAR(フランス) | 円偏波のバーストを「暫定的に」検出。惑星か恒星か伴星かは特定できず |
| 2026年9月 | がか座ベータ星b | MeerKAT(南アフリカ) | 4回の観測すべてで検出。位置で惑星由来と特定、磁場1,250ガウス以上 |
実は、がか座ベータ星bは日本のチームも狙っていた惑星です。熊本大学・国立天文台などのチーム(潮平雄太氏・藤井友香氏ら)は、インドの電波望遠鏡uGMRTで合計8時間、250〜500メガヘルツの電波を探しました。結果は検出なしで、「0.18ミリジャンスキー以下」という上限を得て、2023年12月に英国の学術誌MNRASへの掲載が決まっています。
今回のミーアキャットの観測は、それより高い0.85〜3.5ギガヘルツを調べ、最も明るいバーストで約0.31ミリジャンスキーでした。周波数帯も観測時期も違うため単純には比べられませんが、「どの周波数で探すか」が発見を左右したことがうかがえます。日本チームの上限値は、今回の結果とあわせて、この惑星の磁気圏を考える材料になります。
この発見で何が変わる?今後の注目点
惑星の磁場は、恒星から吹きつける粒子(恒星風)から大気を守る「盾」の役割をします。地球に大気と海が残っているのも、磁場のおかげだと考えられています。系外惑星の磁場を測れるようになれば、どんな惑星が大気を保てるのか、さらには生命が住める環境かどうかを考える手がかりになります。
- 査読の結果:論文は学術誌の審査中です。内容が修正される可能性もあり、正式な掲載が最初の節目になります。
- 自転と磁場の向き:電波は自転にあわせて強弱をくり返すはずなので、観測を続ければ磁場の傾きや形もわかると論文は述べています。
- ほかの惑星へ:45パーセク以内の5つの惑星系・7個の巨大惑星は、望遠鏡の感度が数倍上がれば検出圏内に入るとされます。南アフリカとオーストラリアで建設中の次世代電波望遠鏡SKAは、ミーアキャットのアンテナも組み込む計画で、その主役候補です。
- 地球型惑星はまだ先:今回の惑星は木星の約9〜12倍の重さで、磁場も桁違いに強い特別な例です。地球のような小さな惑星の電波を捉えるには、さらに大きな技術の進歩が必要です。
がか座ベータ星は日本から見える?
がか座ベータ星は赤緯マイナス51度の南天の星で、日本からは南の地平線すれすれです。南中したときの高さは、東京で約3度、鹿児島で約7度、那覇で約13度、石垣島で約15度。札幌では地平線の下に沈んだままです。12月ごろの夜中に南中するので、沖縄など南の地域なら、冬の夜に空が暗く南が開けた場所で3.9等の星として見つけられるかもしれません(実際には大気の影響で暗く見えます)。
よくある質問
Q. 太陽系外惑星から電波が検出されたのは本当に初めてですか?
A. 惑星をもつ恒星の方向から電波が見つかった例や「候補」の報告は以前からありましたが、出どころを恒星ではなく惑星そのものだと位置で特定できたのは、今回のがか座ベータ星bが初めてとされています。ただし論文はまだ査読前です。
Q. 検出された電波は宇宙人からの信号ですか?
A. いいえ。惑星の強い磁場の中で電子が出す、オーロラと同じしくみの自然な電波です。研究チームのバーガー教授も、地球外知的生命の探査で探す電波とはまったく別物だと説明しています。
Q. がか座ベータ星bは地球からどれくらい遠いですか?
A. 約63光年(NASAアーカイブの値では19.7パーセク=約64光年)です。光の速さで60年以上かかる距離で、木星の約9〜12倍の重さをもつ若い巨大ガス惑星です。
Q. 磁場の強さ1,250ガウスはどれくらい強いのですか?
A. 地球の表面の磁場(約0.25〜0.65ガウス)の約2,000〜5,000倍です。木星と比べても、最高周波数どうしで約90倍、赤道付近の磁場と比べれば約300倍で、研究者は「少なくとも木星の200倍」と説明しています。
Q. どの望遠鏡で観測したのですか?
A. 南アフリカのカルー地方にある電波望遠鏡ミーアキャット(MeerKAT)です。直径13.5mのアンテナ64台を組み合わせて使い、2025年2月〜2026年5月に4回観測して、4回とも電波を検出しました。
Q. 日本の研究者もこの惑星の電波を探していたのですか?
A. はい。熊本大学・国立天文台などのチームが、インドの電波望遠鏡uGMRTで250〜500メガヘルツの電波を合計8時間探し、検出はされず上限値を得た論文を2023年に発表しています。今回はより高い周波数帯で見つかりました。
まとめ
がか座ベータ星bの電波は、太陽系の外の惑星から届いた、初めて「惑星のもの」と特定できた電波です。オーロラの電波の周波数から、磁場が1,250ガウス以上という、系外惑星で初めての磁場の実測値も得られました。
系外惑星は6,445個も見つかっているのに、姿まで写るのは1.5%だけ。その中でも、若く、重く、恒星から離れ、恒星が静かという条件がそろったがか座ベータ星bだからこそ、今回の発見が可能になりました。「見つける」時代から「中身を測る」時代へ、系外惑星研究が一歩進んだニュースといえます。論文が学術誌に正式に掲載されたら、この記事に追記します。
あわせて読みたい
参考資料
- 論文:K. N. Ortiz Ceballos, E. Berger, Y. Cendes「Discovery of radio emission from the exoplanet β Pictoris b」(arXiv:2609.16720、2026年9月15日、査読前)
- CNN:Astronomers detect first-ever radio emission from an exoplanet(2026年10月2日)/CNN.co.jp:太陽系外の惑星から電波、初めて検出 強力な磁場の存在示す(2026年10月10日)
- NASA:NASA Exoplanet Archive(Planetary Systems/Composite Parameters表、2026年10月11日取得)
- 論文:Y. Shiohira, Y. Fujii ほか「A search for auroral radio emission from β Pictoris b」(MNRAS、2023年)
- 過去の電波探査:Turner ほか(LOFAR、うしかい座タウ星bなど)/Pineda & Villadsen(くじら座YZ星、2023年)/Turner ほか(NenuFAR、HD 189733、2026年)
- ESO:Beta Pictoris planet finally imaged?(2008年)/Exoplanet Caught on the Move(2010年)
- SARAO:MeerKAT
発見方法別・発見年別の件数、45パーセク以内の直接撮像惑星の数は、NASA太陽系外惑星アーカイブのデータを筆者が集計したものです。磁場の換算(周波数MHz÷2.8=ガウス)は電子サイクロトロン周波数の式によります。南中高度は赤緯−51.07度と各地の緯度から計算した値で、大気による浮き上がりは考えていません。アイキャッチの画像:ESO/L. Calçada/N. Risinger(skysurvey.org)、がか座ベータ星bの想像図(CC BY 4.0)/Wikimedia Commons、文字入れ加工。


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