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南相馬で恐竜の足跡化石70cm|ジュラ紀で国内最大はなぜすごい?
福島県南相馬市は2026年10月22日、市内の約1億6,000万年前(ジュラ紀後期)の地層「栃窪層」から、長さ約70cmの恐竜の足跡化石が見つかったと発表しました。日本のジュラ紀の恐竜足跡化石としては最大で、首の長い大型の植物食恐竜「竜脚類」などの可能性が高いとされています。これまでの記録の約2倍という大きさの意味を、国内のほかの足跡化石と、足跡から腰の高さを推定する4つの式で確かめます。
この記事の結論
- 南相馬市博物館と福島県立博物館、市内外の研究者らの調査チームが、2026年7月に始めた本格的な発掘の5日目に、栃窪層から10点以上の恐竜足跡化石を見つけました。最大のものは長さ約70cmです。
- 朝日新聞によると、これまで国内のジュラ紀で最大だった足跡は山口県下関市で1993年に見つかった33cm。今回はその約2.1倍です。福井県勝山市の白亜紀の竜脚類の後ろ足の足跡(長さ63.8cm)と比べても上回ります。
- 足跡の長さから腰の高さを出す式は研究者によって倍率が2.8〜5.9倍と幅があり、70cmに当てはめると約2.0〜4.1m。研究チームが示した「腰の高さ約3m」は、この幅のほぼ真ん中(足跡長の約4.29倍)にあたります。
- 日本の恐竜化石はほとんどが白亜紀のもので、ジュラ紀の化石が見つかっているのは福島・長野・山口の3県だけとされています。南相馬市から相馬市にかけての「相馬中村層群」は、ジュラ紀の植物やアンモナイトの新種が相次いできた地層です。
- 市は2026年度予算に関連事業として1,149万円を計上し、重機を使った発掘を計画していました。発掘現場は非公開で、実物大パネルの展示やスタンプラリー(2027年1月17日まで)が始まっています。
南相馬の恐竜足跡化石とは?発表のポイント
南相馬市のプレスリリース(2026年10月22日)によると、足跡化石が見つかったのは、市内に分布する「栃窪層(とちくぼそう)」と呼ばれるジュラ紀後期の地層です。調査にあたったのは南相馬市博物館と福島県立博物館、市内外の研究者らによるチームで、10点以上の足跡化石を新たに発見し、そのうち最大のものは長さ約70cmに達しました。市は「国内で確認されているジュラ紀の恐竜足跡化石として最大」としています。
報道で補うと、次のような点が分かっています。
- 数と範囲:福島民友によると、足跡は縦5m・横7〜8mの範囲に12点が分布しています(市の発表は「10点以上」)。
- どの恐竜か:長さ70cmを含む5点が、形や大きさ、指の跡などから竜脚類のものとみられています(福島民友)。朝日新聞は、指の跡などから左の後ろ脚と見られると伝えています。
- 体の大きさ:研究チームは、恐竜の腰の高さを約3mと推定しています(朝日新聞・TUFテレビユー福島)。
- 位置づけ:共同通信は、国内でジュラ紀の大型恐竜の足跡が見つかったのは初めてと報じました。TUFによると、調査の中心となった福島県立博物館の学芸員は「東北地方では最大の恐竜足跡化石」とし、白亜紀の地層で見つかっている大きな足跡にも匹敵する大きさだと説明しています。
竜脚類は、ブラキオサウルスのように首と尾が長く、4本の足で歩いた大型の植物食恐竜のグループです。ただし、足跡を残した恐竜の種類が特定されたわけではなく、研究チームは今後、詳しい研究を進めるとしています。

70cmはどれくらい大きい?国内の恐竜足跡化石と比べる
日本の恐竜足跡化石について、自治体や博物館の公開資料で大きさや数が確認できたものを当ブログで表にしました。足跡の大きさは資料によって測り方(長さ×幅など)が異なるため、比べる目安としてご覧ください。
| 産地 | 地層・時代 | 足跡の大きさ・数 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 福島県南相馬市(原町区) | 栃窪層・ジュラ紀後期 | 最大で長さ約70cm。10点以上(報道では12点、うち5点が竜脚類とみられる) | 南相馬市(2026年) |
| 福島県南相馬市(鹿島区小山田・原町区信田沢) | 栃窪層・ジュラ紀 | 小型恐竜の足跡。小山田の産出地は市指定天然記念物 | 南相馬市博物館 |
| 山口県下関市(吉母) | 豊西層群清末層・ジュラ紀後期 | イグアノドン類の足跡。報道では長さ33cm(1993年発見、朝日)/約30cm(共同) | 下関市の展示解説 |
| 長野県小谷村 | 来馬層群・ジュラ紀前期 | 6つの恐竜足跡化石(大きさは今回確認できず) | 畠山(1995) |
| 福井県勝山市(北谷町杉山) | 手取層群北谷層・白亜紀前期 | 竜脚類の後ろ足 63.8×84.2cm、62.4×54.7cm/獣脚類 28.5×23.9cm(長さ×幅) | 福井県(2014年) |
| 富山県富山市(大山地域) | 手取層群 | 亀谷で肉食恐竜の左足 長さ37cm(1990年)。1995年に約300個の足跡化石群 | 富山市大山歴史民俗資料館 |
長さで比べると、今回の約70cmは下関市の33cmの約2.1倍、富山市亀谷の肉食恐竜の37cmの約1.9倍です。白亜紀前期の福井県勝山市で見つかった竜脚類の後ろ足(長さ63.8cm)と比べても約1.1倍で、時代を問わず国内でも大きな部類の足跡だと言えます。TUFが伝えた「白亜紀の大きな足跡に匹敵する」という説明とも合います。
「国内最大」の範囲に注意
市が「最大」としているのはジュラ紀の恐竜足跡化石の中での話です。白亜紀を含めた国内すべての足跡の中で最大かどうかは、発表では示されていません。また、これまでのジュラ紀最大の記録は報道によって「33cm」(朝日新聞)と「約30cm」(共同通信)で表記が分かれています。
腰の高さ約3mは本当?足跡の長さから4つの式で検算
足跡化石の研究では、足跡の長さ(FL)から、地面から腰の関節までの高さ(h)を推定する方法がよく使われます。カナダ・カールトン大学のフーパー博物館の解説は、一般的な目安として「h=4×FL」を紹介しています。
ただし、竜脚類については倍率が研究者によって違います。トシュップほか(2015年、Palaeontologia Electronica)は、これまでの式として「4倍」(アレクサンダー、1976年)、「5.9倍」(サルボーン、1990年)、「4.6倍」(ゴンサレス・リガ、2011年)の3つを挙げたうえで、ジュラ紀後期の竜脚類カマラサウルスの足の骨を3Dで復元し、腰の高さは足跡長のおよそ2.8倍(爪の跡を除けば3.6倍)になると報告しました。ゴンサレス・リガ(2011年)は、ティタノサウルス類の後ろ足の実測から4.586倍としています。
これらの倍率を、今回の約70cmの足跡に当てはめて計算しました。
| 推定の式 | 倍率 | 70cmの足跡での腰の高さ |
|---|---|---|
| トシュップほか(2015)・カマラサウルスの足の3D復元(爪の跡を含む足跡長) | 2.8倍 | 約2.0m |
| 同(爪の跡を除く足跡長) | 3.6倍 | 約2.5m |
| アレクサンダー(1976)・恐竜全般で広く使われる目安 | 4倍 | 約2.8m |
| ゴンサレス・リガ(2011)・ティタノサウルス類の後ろ足の実測 | 4.586倍 | 約3.2m |
| サルボーン(1990)の竜脚類向けの係数 | 5.9倍 | 約4.1m |
| 研究チームの推定(約3m)を逆算した倍率 | 4.29倍 | 約3.0m |
式によって腰の高さは約2.0mから約4.1mまで2倍の開きがあります。研究チームが示した「約3m」は足跡長の約4.29倍にあたり、広く使われる4倍(2.8m)とティタノサウルス類の実測にもとづく4.586倍(3.2m)の間に収まります。極端に大きく見積もった数字ではないと言えそうです。
倍率に幅がある理由
トシュップほかは、足跡長と腰の高さの関係は竜脚類の属によって違う可能性があると指摘し、5.9倍の式は体の大きさを過大に見積もりやすいとしています。足の骨の傾きの仮定や、爪の跡を足跡の長さに含めるかどうかでも値が変わります。今回の数字は、あくまで公表された長さに既存の式を当てはめた目安です。
日本でジュラ紀の恐竜化石が少ないのはなぜ?
共同通信によると、研究チームは「国内で見つかる恐竜化石のほとんどが白亜紀のもの」で、より古いジュラ紀では、福島以外では長野・山口の両県でしか見つかっていないと説明しています。上の表でも、ジュラ紀の足跡は南相馬市・下関市・小谷村の3か所にとどまります。
恐竜の足跡は、恐竜が歩いた陸地や水辺の泥や砂に残ります。ジュラ紀の地層があっても、それが沖合の海でたまった地層なら、足跡は残りません。日本でジュラ紀の恐竜化石が少ないのは、恐竜がいた陸地や水辺でできたジュラ紀の地層が、地表に出ている場所自体が限られるためと考えられます。
南相馬の「相馬中村層群」はどんな地層か
南相馬市博物館の解説によると、相馬中村層群は相馬市から南相馬市原町区にかけて、常磐自動車道に沿うように細長く分布するジュラ紀中期〜白亜紀初期の地層群です。古い順にジュラ紀の粟津層・山上層・栃窪層・富沢層、白亜紀の小山田層からなります。
同館のコラムに載っている「平成以降に南相馬市から新種として記載された古生物」の一覧表(表1)を、当ブログで地層別に数えると次のとおりです。
| 地層 | 新種の数 | 内訳 |
|---|---|---|
| 栃窪層 | 7種 | すべて植物(ソテツの仲間、ベネチテス類など)。1997〜2022年に記載 |
| 中ノ沢層 | 4種 | アンモナイト2種、カニ1種、二枚貝1種 |
| 小山田層 | 1種 | アンモナイト1種 |
合計12種のうち、今回足跡が見つかった栃窪層の7種はすべて陸上の植物で、アンモナイトやカニなど海の生き物はほかの地層から出ています。植物の化石が多い栃窪層は、陸地に近い環境でたまった地層と読み取れ、竜脚類のような植物食恐竜が歩いていても不思議ではありません。朝日新聞によると、栃窪層ではこれまでもベネチテス類の植物や小型の足跡化石が見つかっていました。
市の解説は「恐竜そのものはまだ見つかっていません」としています。今回見つかったのも骨ではなく足跡ですが、足跡はその場所に恐竜が生きていた直接の証拠になります。
発見までの経緯と今後の予定
今回の発見は偶然ではなく、市が計画して進めてきた調査の成果です。南相馬市博物館の事業紹介と市の令和8年度予算の概要、プレスリリースから流れをまとめました。
- 2025年度恐竜化石探索調査・教育普及事業を開始現地調査・親子向けイベント・講演会を実施。市によると、10年程度を見据えた取り組みです。
- 2026年度予算事業費1,149万円を計上栃窪層を対象に、足跡化石を中心とした重機による発掘調査を計画しました。
- 2026年7月予備調査を経て本格的な掘削に着手発掘5日目に今回の足跡化石群が見つかりました。
- 2026年10月22日南相馬市が発見を発表長さ約70cm、日本のジュラ紀で最大の恐竜足跡化石。ふるさと納税での応援募集も始まりました。
- 10月23日〜1月17日恐竜スタンプラリーJR原ノ町駅に約70cmの足跡を実寸大で再現。市博物館では実物大パネルを展示(朝日新聞)。
- 2027年度レプリカ作成・第2次発掘・企画展学術評価や3D解析、保存・安全対策を進めたうえでの計画です(変更の可能性あり)。
発掘現場は見学できません
朝日新聞によると、市は化石の保存や安全性の問題から発掘現場を非公開にしています。現物の代わりに、南相馬市博物館の実物大パネルや、JR原ノ町駅の実寸大の再現で大きさを体感できます。
発見の発表と報道(X)
南相馬市博物館は10月22日、公式Xで、約1億6,000万年前の地層から長さ約70cmの恐竜の足跡化石が見つかったと発表しました。毎日新聞も同日、国内最大級の足跡化石として報じています。
【速報】日本のジュラ紀最大の恐竜足跡化石を発見🦖
福島県南相馬市の約1億6,000万年前の地層から、長さ約70cmの恐竜の足跡化石が見つかりました!
今回の調査では10点以上を発見。恐竜が生きた時代の環境や生態を解き明かす重要な手がかりです。#恐竜 #化石 #ジュラ紀 pic.twitter.com/T7tlhTmM8v— 南相馬市博物館 (@MinamisomaMuse) October 22, 2026
長さ70センチの恐竜足跡化石を発見 国内最大級 福島・南相馬https://t.co/DTjuLiy9pe
大型草食恐竜「竜脚類」の左の後ろ脚の足跡とみられ、国内で見つかった足跡化石の中で最大級といいます。
— 毎日新聞 (@mainichi) October 22, 2026
南相馬の恐竜足跡化石のよくある質問
Q. 南相馬市で見つかった恐竜の足跡化石はどれくらいの大きさですか?
A. 最大のもので長さ約70cmです。南相馬市は、国内で確認されているジュラ紀の恐竜足跡化石として最大だとしています。調査では10点以上の足跡化石が新たに見つかりました。
Q. どんな恐竜の足跡ですか?
A. 首と尾の長い大型の植物食恐竜「竜脚類」などの可能性が高いとされています。報道によると、70cmの足跡を含む5点が竜脚類のものとみられ、指の跡などから左の後ろ脚と見られています。種類の特定はこれからの研究課題です。
Q. いつの時代の地層ですか?
A. 約1億6,000万年前のジュラ紀後期の地層「栃窪層」です。栃窪層は相馬中村層群の一部で、これまでに植物の新種が多く記載されてきました。
Q. これまでのジュラ紀の最大記録は?
A. 朝日新聞によると、山口県下関市で1993年に見つかった長さ33cmの足跡です(共同通信は約30cmと表記)。今回の約70cmはその約2倍にあたります。
Q. 恐竜の腰の高さはどれくらいと推定されていますか?
A. 研究チームは約3mと推定しています。足跡の長さから腰の高さを出す既存の式(足跡長の2.8〜5.9倍)を70cmに当てはめると約2.0〜4.1mで、約3mは足跡長の約4.29倍にあたり、その幅の中に収まります。
Q. 発掘現場は見学できますか?
A. 化石の保存や安全性の問題から非公開です。南相馬市博物館で実物大パネルが展示され、2026年10月23日から2027年1月17日まで、JR原ノ町駅での実寸大の再現などを巡るスタンプラリーが開かれています。
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出典・参考資料
- 南相馬市:日本のジュラ紀で最大!約70cmの巨大な恐竜足跡化石を南相馬市で発見(PR TIMES、2026年10月22日)
- 南相馬市博物館:恐竜化石探索調査・教育普及事業について/南相馬の恐竜化石をさがせ!(2025年10月1日)(表1 PDF)/化石の里・南相馬
- 南相馬市:令和8年度当初予算の概要(わかりやすい予算書)(p.8)
- 福井県:第4次恐竜化石発掘調査の中間報告について(2014年9月8日)
- 下関市(豊田ホタルの里ミュージアム):展示解説チラシ「下関の化石」
- 富山市大山歴史民俗資料館:歴民だより(令和4年2月)
- 畠山幸司(1995):長野県小谷村に分布するジュラ系下部来馬層群の恐竜足印化石(予報)(全国文化財総覧)
- Tschopp, E. et al. (2015):Articulated bone sets of manus and pedes of Camarasaurus (Sauropoda, Dinosauria), Palaeontologia Electronica
- González Riga, B. J. (2011):Speeds and stance of titanosaur sauropods, Anais da Academia Brasileira de Ciências 83(1)
- Carleton University Hooper Museum:Size of Track-Maker
- 報道:朝日新聞/共同通信/福島民友新聞/TUFテレビユー福島(いずれも2026年10月22日)
内容は2026年10月23日時点の発表・報道にもとづきます。国内の足跡化石の表、新種の地層別の集計、腰の高さの計算は、上記の公開資料から当ブログが作成したものです。写真:James St. John(Wikimedia Commons、CC BY 2.0、リサイズあり)「Sauropod dinosaur trackway (Morrison Formation, Upper Jurassic; Copper Ridge Dinosaur Tracksite, Grand County, Utah, USA)」。南相馬市の化石の写真ではありません。
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