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スペースX決算はなぜ黒字?AI売上9倍、上場後初の純利益44億ドル
米スペースXは10月20日(米国時間)、2026年7〜9月期の決算を発表しました。売上高は前年同期の2.6倍の146億ドル、純利益は44.0億ドル(約6,958億円)で、6月の上場後に初めて純利益が黒字になりました。けん引したのは、xAIを母体とするAI部門(今回から「SI=スーパーインテリジェンス」に改称)で、売上高は前年同期の約9.3倍に増えています。米証券取引委員会(SEC)に提出された決算資料と上場時の目論見書から、7四半期の推移と部門別の構成比を当サイトで計算し、黒字の中身を整理します。
この記事の結論
- スペースXの7〜9月期は、売上高146億ドル(前年同期比161%増)、営業利益27.9億ドル、純利益44.0億ドルでした。前年同期は−10.5億ドルの純損失です。
- 上場後の決算は8月4日(4〜6月期、純損失5.4億ドル)に続いて2回目で、純利益が黒字になったのは上場後初めてです。開示のある2025年1〜3月期以降の7四半期でも、純利益が黒字なのは今回だけです。
- AI部門(SI)の売上高は75.6億ドルで前年同期の約9.3倍。売上全体に占める割合は2025年通期の17%から52%に上がり、スターリンク(通信部門)を抜いて最大の部門になりました。
- ただし純利益のうち約37%(16.1億ドル)は、受取利息や税金の戻りなど本業以外の分です。7〜9月期の設備投資は196億ドルで、営業活動で得た現金(約96.3億ドル)を大きく上回っています。
- 報道によると、株価は決算発表後の時間外取引で4〜5%ほど上がりました。この記事は特定の銘柄の売買をすすめるものではありません。
数字はスペースXの決算リリース(SECに提出した8-Kの添付資料)から。倍率・構成比は当サイトの計算です。円換算はFRBのH.10の10月16日のレート(1ドル=158.00円)を使っています。
スペースXの7〜9月期決算の中身は?売上2.6倍・純利益44億ドル
スペースXは10月20日、米国の市場が閉まったあとに決算をSECに提出し、X(旧ツイッター)で同社として初めての動画形式の決算説明会を開きました(ダイヤモンド・オンライン掲載のWSJ記事)。主な数字は次のとおりです。
| 項目 | 2026年7〜9月期 | 2025年7〜9月期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 146億ドル | 55.8億ドル | +161% |
| 営業損益 | 27.9億ドル | −2.7億ドル | 黒字転換 |
| 純損益 | 44.0億ドル | −10.5億ドル | 黒字転換 |
| 調整後EBITDA | 88.1億ドル | 21.7億ドル | +306% |
| 設備投資 | 196億ドル | 68.8億ドル | +185% |
| スターリンク個人契約数 | 1,360万件 | 720万件 | +89% |
| スターリンク個人の月額単価(ARPU) | 69ドル | 83ドル | -17% |
調整後EBITDAは会社が示す独自の指標(米国会計基準に基づかない数字)で、減価償却費や株式報酬などを足し戻したものです。
円に直すと、売上高は約2.3兆円、純利益は約6,958億円です(1ドル=158.00円)。1株あたり純利益は希薄化後で0.35ドルでした。
「上場後初の決算」ではなく「上場後初の黒字」
スペースXは2026年6月12日にナスダックに上場しました。上場後の最初の決算は8月4日に発表した4〜6月期で、このときは純損益が−5.4億ドルの赤字でした(共同通信も「上場後初決算」として赤字を報じています)。今回の7〜9月期は上場後2回目の決算で、初めて純利益が黒字になった決算です。
今回の決算から、AI部門の名前が「AI」から「SI(スーパーインテリジェンス)」に変わりました。中身はイーロン・マスク氏のAI企業xAI(対話AI「Grok」やXを含む)で、スペースXは2026年2月にxAIを買収しています。目論見書によると、スペースXの過去の決算はxAIとXの数字を合算した形に組み替えて開示されているため、この記事の過去の数字も合算ベースです。
スペースXの売上と利益の推移は?7四半期を並べて集計
上場時の目論見書と、上場後2回の決算リリースを組み合わせると、2025年1〜3月期から2026年7〜9月期までの7四半期を同じ基準で並べられます。2025年10〜12月期は開示がないため、2025年通期から1〜9月期の累計を差し引いて当サイトで計算しました。
宇宙(打ち上げ)通信(スターリンク)AI(SI)
部門別の売上高(積み上げ)。2025年10〜12月期は通期−1〜9月期累計で算出。
| 四半期 | 売上高 | 営業損益 | 純損益 |
|---|---|---|---|
| 2025年1〜3月 | 40.7億ドル | 0.3億ドル | −5.3億ドル |
| 4〜6月 | 40.7億ドル | −9.7億ドル | −10.1億ドル |
| 7〜9月 | 55.8億ドル | −2.7億ドル | −10.5億ドル |
| 10〜12月 | 49.6億ドル | −13.7億ドル | −23.5億ドル |
| 2026年1〜3月 | 46.9億ドル | −19.4億ドル | −42.8億ドル |
| 4〜6月 | 78.1億ドル | −1.4億ドル | −5.4億ドル |
| 7〜9月 | 146億ドル | 27.9億ドル | 44.0億ドル |
表から分かるのは、売上高が2026年に入って急に伸びたことです。2025年は1四半期あたり40億〜56億ドルでしたが、2026年4〜6月期に78.1億ドル、7〜9月期に146億ドルと、2四半期で約3倍になりました。
一方、純損益は2025年10〜12月期(−23.5億ドル)と2026年1〜3月期(−42.8億ドル)に赤字が大きく膨らんでいます。7四半期で純利益が黒字なのは今回の1回だけで、営業損益も黒字は2025年1〜3月期(0.3億ドル)と今回の2回だけです。なお目論見書によると、通期では2024年に7.9億ドルの純利益を出しており、スペースXの歴史で「初の黒字」というわけではありません。
AI事業の売上はなぜ9倍に?部門別の成長率と構成比
スペースXの事業は、ロケットの打ち上げなどの「宇宙」、衛星インターネットのスターリンクを中心とする「通信」、xAIを母体とする「AI(SI)」の3部門に分かれています。部門ごとに前年同期比と、売上全体に占める割合(構成比)を計算しました。
| 部門 | 2026年7〜9月期 | 前年同期比 | 構成比(2025年通期→今回) |
|---|---|---|---|
| AI(SI) | 75.6億ドル | 9.30倍 | 17.1%→51.9% |
| 通信(スターリンク) | 52.5億ドル | 1.69倍 | 61.0%→36.0% |
| 宇宙(打ち上げ) | 17.7億ドル | 1.06倍 | 21.9%→12.1% |
| 合計 | 146億ドル | 2.61倍 | 100% |
2025年通期の部門別売上高は目論見書、2026年7〜9月期・2025年7〜9月期は決算リリースから。構成比・倍率は当サイトの計算。
AI(SI)部門:データセンターの貸し出しが売上を押し上げ
AI部門の売上高は75.6億ドルで、前年同期の8.1億ドルから約9.3倍、前の四半期(4〜6月期)の25.6億ドルからも約3.0倍に増えました。内訳を見ると、伸びたのはほぼ「SIソリューション・インフラ」で、3.6億ドルから70.2億ドルへ約19.6倍です。広告収入は4.5億ドルから5.4億ドルへの増加にとどまります。
会社は伸びた理由として、新しいクラウドサービス契約(他社へのAI計算能力の提供)の開始、8月14日に完了したAIプログラミングツール「Cursor(カーソル)」の買収、Grokの利用拡大を挙げています。Cursorの買収後の売上高は6.1億ドルで、これを除いてもAI部門の売上は前年同期の約8.6倍です。
AI部門の営業損益は4.3億ドルの黒字で、前年同期の−17.2億ドルから黒字に転じました。ただし売上高に対する営業利益率は約5.7%と、まだ薄い水準です。Cursor買収に伴う株式報酬(約12.2億ドル)が費用に入っていることも影響しています。
通信(スターリンク)部門:利益の柱は今もここ
通信部門の売上高は52.5億ドル(前年同期比69%増)。個人契約数は1,360万件と、4〜6月期の1,200万件から160万件増えました。個人の月額単価(ARPU)は69ドルで、前年同期(83ドル)より低いものの、前の四半期(66ドル)からは上がっています。営業利益は23.7億ドルで、営業利益率は約45%。3部門の中で最も稼ぐ部門です。
宇宙(打ち上げ)部門:売上は6%増、スターシップの開発費で赤字
宇宙部門の売上高は17.7億ドル(同6%増)で、営業損益は約700万ドルの赤字と、ほぼ収支トントンでした。7〜9月期の打ち上げは35回(うち顧客向け12回)。大型宇宙船スターシップの開発費が重く、研究開発費は前年同期の約8.5億ドルから約12.3億ドルに増えています。7〜9月期には、スターシップで初めて収益を生む打ち上げとして、スターリンクの新型衛星「V3」26基を軌道に届けました。

スペースXの黒字はなぜ?純利益44億ドルの内訳
純利益44.0億ドルは、本業のもうけ(営業利益)だけでできているわけではありません。損益計算書を分解すると次のようになります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 営業利益 | +27.9億ドル |
| 受取利息 | +8.7億ドル |
| 支払利息 | −6.8億ドル |
| その他の収益(純額) | +10.2億ドル |
| 法人税など(戻り) | +3.9億ドル |
| 純利益 | 44.0億ドル |
営業利益27.9億ドルに対し、本業以外で16.1億ドルが上乗せされています。純利益のおよそ37%にあたります。大きいのは、手元の現金や有価証券から得た受取利息(8.7億ドル)、「その他の収益」(10.2億ドル、うち関連当事者分5.6億ドル)、法人税などの戻り(3.9億ドル)です。9月末の現金と有価証券は合わせて約899億ドルあり、利息収入は当面続くとみられますが、「その他の収益」や税金の戻りは毎期同じように出るとは限りません。
設備投資は営業キャッシュフローの約2倍
もう一つ見ておきたいのが現金の出入りです。1〜9月期の累計と1〜6月期の累計の差から計算すると、7〜9月期の営業キャッシュフローは約96.3億ドル。これに対して設備投資は196億ドルで、差し引き約99.6億ドルの持ち出しです。1〜9月期の累計では、営業キャッシュフロー131億ドルに対して設備投資が481億ドルにのぼります。
設備投資の約84%(164億ドル)はAI部門で、データセンター「COLOSSUS II(コロッサス2)」などの計算能力の増強に使われています。AI部門の計算能力(電力ベース)は前年同期の0.6ギガワットから1.7ギガワットに増えました。会計上は黒字でも、手元の現金は上場時の調達資金と借り入れで投資をまかなっている段階だといえます。
決算後の株価と今後の注目点
米CNBC(10月20日)によると、スペースXの株価は決算発表後の時間外取引で約5%上昇しました。WSJ(ダイヤモンド・オンライン掲載)は「4%以上」上昇したと伝えています。株探は、1株利益・売上高とも市場予想を上回ったとしています。
- 市場予想との比較:CNBCによると、AI部門の売上高の予想は64.7億ドル、通信部門は48.4億ドル(いずれもStreetAccount調べ)で、実績はどちらも上回りました。
- 次の四半期の見通し:CNBCによると、ブレット・ジョンセン最高財務責任者(CFO)は決算説明会で、2027年1〜3月期の売上高を330億〜370億ドルと見込むと述べました。LSEGがまとめたアナリスト予想の平均(222億ドル)を大きく上回る水準です。
- テスラとの合併論:CNBCによると、マスク氏は説明会で、テスラとスペースXの取締役会がそれぞれ合併を検討する特別委員会を設けたと述べ、統合は「良い考えだ」としつつ、株主の支持が必要だとしました。合併が決まったわけではありません。
- 決算資料に書かれた今後の予定:10月8日に800MHz帯の周波数免許を取得する契約を結んでおり(2027年前半に完了予定、規制当局の承認などが条件)、スマートフォンと直接つながる「スターリンク・モバイル」の強化に使う方針です。
投資を考えるときの注意
株探は、上場後の株価は不安定な値動きが続いていると伝えています。今回の黒字には本業以外の収益が含まれ、設備投資も営業キャッシュフローを大きく上回っています。会社の見通しや説明会での発言は将来についての見込みで、実現する保証はありません。この記事は特定の銘柄の売買をすすめるものではなく、投資の判断はご自身で行ってください。米国株は為替の変動も受けます。
決算とテスラ合併協議の報道(X)
ウォール・ストリート・ジャーナル日本版と日本経済新聞は日本時間10月21日朝、スペースXの7〜9月期決算と、テスラとの合併を協議する委員会の設置をマスク氏が表明したことを伝えました。売上や利益の数字は、本文ではSECへの提出資料から計算しています。
スペースX7-9月期、売上高倍増で黒字計上 https://t.co/VxurySKgYj
— ウォール・ストリート・ジャーナル日本版 (@WSJJapan) October 20, 2026
スペースXとテスラ統合協議 イーロン・マスク氏が委員会設置を表明https://t.co/v9OqHh4nwR
マスク氏はスペースXのロケットや衛星通信、SNS運営、テスラのEVなど幅広い事業を展開します。AIを軸に経営資源を集約すれば競争で優位に立てるとの考えがあります。
— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) October 20, 2026
スペースXの決算についてよくある質問
Q. スペースXの決算はいつ発表されましたか?
A. 2026年10月20日(米国時間)の米国市場の取引終了後です。7〜9月期(第3四半期)の決算で、同日にSECへ提出した書類(8-K)に決算リリースが添付されています。日本時間では10月21日の朝にあたります。
Q. 今回が上場後初の決算ですか?
A. いいえ。上場後の最初の決算は2026年8月4日に発表した4〜6月期で、純損益は5.4億ドルの赤字でした。今回の7〜9月期は上場後2回目の決算で、上場後初めて純利益が黒字になりました。
Q. スペースXの7〜9月期の売上高と純利益はいくらですか?
A. 売上高は146億ドル(前年同期比161%増、約2.3兆円)、純利益は44.0億ドル(約6,958億円)です。前年同期は−10.5億ドルの純損失でした。円換算は1ドル=158.00円(10月16日)で計算しています。
Q. AI事業の売上が9倍になったのはなぜですか?
A. 他社にAIの計算能力を貸し出すクラウドサービス契約が始まったこと、AIプログラミングツールCursorを買収したこと、Grokの利用が増えたことが理由です。AI部門の売上高75.6億ドルのうち、Cursorの分(6.1億ドル)を除いても前年同期の約8.6倍になります。
Q. スペースXで一番稼いでいる事業はどこですか?
A. 売上高はAI(SI)部門が75.6億ドルで最大ですが、営業利益はスターリンクを中心とする通信部門が23.7億ドルで最大です。AI部門の営業利益は4.3億ドル、宇宙部門は約700万ドルの営業赤字でした。
Q. 決算を受けてスペースXの株価はどうなりましたか?
A. CNBCは時間外取引で約5%上昇、WSJ(ダイヤモンド・オンライン掲載)は4%以上上昇したと伝えています。10月21日以降の通常取引の値動きは、この記事の時点では分かっていません。
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出典・参考資料
- Space Exploration Technologies Corp.:SpaceX Reports Third Quarter 2026 Results(8-K Exhibit 99.1、2026年10月20日)、Form 8-K(同日)
- 同:SpaceX Reports Second Quarter 2026 Results(8-K Exhibit 99.1、2026年8月4日)
- 同:目論見書(Form 424B4、2026年6月12日)、SEC EDGARの提出書類一覧
- 米連邦準備制度理事会(FRB):Foreign Exchange Rates H.10(2026年10月19日公表)
- CNBC「SpaceX (SPCX) Q3 2026 earnings report: Live updates」(2026年10月20日)
- ダイヤモンド・オンライン「スペースX、売上高倍増で黒字計上 7-9月期」(WSJ、2026年10月21日)、株探ニュース(2026年10月21日)
- 秋田魁新報(共同通信)「スペースX、赤字850億円 上場後初決算、AIが重荷」(2026年8月5日)
四半期の推移(2025年10〜12月期の算出を含む)、部門別の倍率・構成比、純利益の内訳、7〜9月期の営業キャッシュフローは、SECに提出された資料から当サイトが計算したもので、会社の公式な数字ではありません。写真:U.S. Space Force/Joshua Conti(Wikimedia Commons、パブリックドメイン)。アイキャッチはトリミング・明るさ調整・文字入れあり。


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