ニュース|社会・くらし
警察官の情報流出はなぜ?アルカディア不正アクセス22府県警を県別に
自治体の防災メールなどを配信する大阪府箕面市のIT企業「アルカディア」が不正アクセスを受けた問題で、警察官や職員の個人情報も流出した可能性が明らかになりました。警察庁への取材では、職員の安否確認システムを同社に任せていた20府県警で約12万5000人分、防犯メールの登録者を含めると22府県警に影響が及んでいます。何が漏れたのか、なぜ警察の情報が民間の会社にあったのかを、会社の公式発表と報道から府県別に整理し、国の統計で「委託先から漏れる」事故の多さを確かめます。
この記事の結論
- アルカディアは、自治体や官公庁2,000件以上が使う防災・消防向けクラウドサービスの会社です。10月11日に不正アクセスを受け、メールアドレス最大約313万6000件などが漏れた可能性があると公表しています。
- 警察庁によると、災害時に職員の安否や出勤の可否を確かめるシステムを同社に任せていた20府県警で、警察官・職員約12万5000人分の氏名やメールアドレスなどが流出した可能性があります。ほかに4府県警の防犯メールの登録者(個人約1万6000人分)も含まれ、合わせて22府県警です(京都・福岡は両方)。
- 報道で人数が分かる13府県警を当サイトで足すと約9万4200人で、12万5000人の約75%。広島・岡山・栃木・石川は「全職員」が対象と報じられています。残る7府県警・約3万800人分は、府県名も人数もまだ報じられていません。
- 個人情報保護委員会の年次報告を集計すると、自治体などの不正アクセスによる漏えいは、2025年度は86.7%が委託先からでした。警察も、こうした委託の仕組みの中にあります。
- 捜査情報の流出は確認されていません。警視庁は10月21日、「個人情報は既に流出している前提で」対策をとるよう呼びかけるページを公開しました。
12.5万人と22府県警は時事通信・共同通信(日本経済新聞掲載)の警察庁への取材による。府県別の合計と割合は当サイトの集計です。
アルカディアへの不正アクセスで何が起きた?
アルカディアは、自社サイトとサービスの公式ブログで経過を「第18報」(10月21日19時30分)まで更新しています。10月21日時点で分かっていることをまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社 | 株式会社アルカディア(大阪府箕面市、1993年設立、従業員53人)。防災・減災や消防向けのクラウドサービスを自治体や官公庁2,000件以上に提供 |
| 狙われたサービス | 災害情報をメール・電話・FAX・SNS・防災行政無線などに一斉配信する「SpeeCAN RAIDEN(スピーキャン・ライデン)」。消防職員の参集に使う「119RAIDEN」、聴覚や言語に障害のある人が文字で119番通報する「NET119」でも不正アクセスの痕跡 |
| 発覚 | 2026年10月11日16時30分に不審な挙動を確認、12日3時ごろ侵入経路を遮断(同社発表) |
| 漏れた可能性がある情報 | 連絡先の名前、メールアドレス、電話・FAX番号、担当者・契約情報、配信履歴として保存された本文。クレジットカードなどの決済情報は扱っていない |
| 最大件数(推定) | SpeeCAN RAIDENでメールアドレス約313万6000件、電話番号約10万5000件、FAX番号約1万5000件 |
| 二次被害 | 13日未明、同社のシステムからフィッシング詐欺のメール1,423,428通が送られた。うち少なくとも869,575通は同社が持つアドレスあてではなかった |
| 警察への影響 | 20府県警の職員安否確認システムと、4府県警の防犯情報配信システム。捜査情報の流出は確認されていない(警察庁) |
アルカディア会社概要・公式ブログより作成。件数は同社が「あくまでも推定値」としているものです。
侵入から検知まで約17時間:会社が公表した時系列
同社は10月19日付の「不正アクセスの経過と当社の対処について」で、攻撃の流れを分単位で公表しました。ポイントを抜き出します。
- 11日 6:26アクセス開始ログイン画面やファイルの置き場所を探る動きが続き、15時49分にはSQLインジェクションの確認も行われました。
- 11日 16:39設定ファイルを取得される添付ファイルを公開するサーバーに、内部のファイルを読み出せる欠陥(ディレクトリトラバーサル)がありました。設定ファイルからサービス間ログイン用の「シークレットキー」が盗まれ、アカウントIDへの総当たりで内部の情報が取られました。
- 11日 23:40データベースの異常な負荷で検知社内の監視で気づき、この時点で不正アクセスを検知しました。
- 12日 3:00侵入経路を遮断15時20分に個人情報保護委員会へ速報。17時05分、WordPressのプラグインが勝手に追加されていたことが分かりました。
- 13日 1:17システムから詐欺メールの送信が始まる4時10分に大量送信からバックドア(裏口)の設置が発覚し、7時16分に停止。多くはクレジットカード会社の残高確認を装う内容でした。
- 13日 11:00一部サーバーを緊急停止11時40分に所管の警察署へ相談。18時28分にはドコモのエリアメール担当から不審なアクセスを検知したとの連絡がありました。
- 15日 15:10全サービスが復旧同社は、外部の会社による脆弱性診断、データベースのパスワードをサービスごとに分ける、2段階認証の導入などを進めるとしています。
府県警の多くは、13日にアルカディアからメールで漏えいの可能性を知らされたと説明しています。同社は個人情報保護委員会や総務省への報告を、利用者に代わって行う「代行報告」も準備しています。
警察官の情報流出はどこの府県警?人数を府県別に集計
警察庁は府県名の一覧を公表していません。そこで、各府県警が報道機関の取材に答えた内容を記事ごとに確かめ、人数が分かる13府県警を並べました(10月21日時点)。
| 府県警 | 人数 | 漏えいの可能性がある項目 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 神奈川 | 約16,000人 (全職員約1万7000人のうち) |
名前、私用メールアドレス | 毎日新聞 |
| 愛知 | 約15,000人 | 氏名、所属、メールアドレス | 朝日新聞 |
| 埼玉 | 約13,000人 | 氏名、所属、私用メールアドレス | 時事通信 |
| 兵庫 | 約13,000人 | メールアドレス、氏名の一部、所属を示すコード | 中日新聞(共同) |
| 福岡 | 約11,000人 | 名前、メールアドレス、所属 | 朝日新聞 |
| 広島 | 約5,700人 (すべての警察官と職員) |
名前、所属、私用メールアドレス | テレビ新広島 |
| 岡山 | 約4,000人 (全ての職員) |
氏名、所属部署、私用メールアドレス | 山陽新聞 |
| 栃木 | 約3,900人 (全員) |
氏名、所属、職名、携帯電話番号、メールアドレス | 朝日新聞 |
| 群馬 | 約3,700人 | 氏名、所属など | FNN |
| 香川 | 約2,400人 (本部所属のほぼ全員) |
氏名、所属、メールアドレス(一部私用) | アスキー |
| 宮崎 | 約2,300人 | 氏名、私用メールアドレスなど | NHK |
| 鹿児島 | 約2,200人 | 所属、名前、メールアドレス | MBC南日本放送 |
| 石川 | 約2,000人 (全員) |
名前、所属、メールアドレス、電話番号など | 中日新聞 |
| 13府県警計 | 約94,200人 | 警察庁の約12万5000人の75.4% | 当サイト集計 |
色付きの行は「全職員」「すべての警察官と職員」「全員」が対象と報じられた府県警。人数はいずれも「約」で、流出が確定した数ではありません。
上位5府県警(神奈川・愛知・埼玉・兵庫・福岡)だけで約6万8000人と、全体の半分を超えます。神奈川県警は全職員約1万7000人のうち約1万6000人分(約94%)で、多くの府県警で職員のほぼ全員が登録されていたことが分かります。災害時に全員へ一斉に連絡するためのシステムなので、登録者が多いのは当然とも言えます。
12万5000人から13府県警の合計を引くと、約30,800人分が残ります。安否確認システムを使っていた20府県警のうち、残る7府県警の分です。時事通信は京都府警も利用していたと報じていますが、人数は出ていません。
登録されていたのは「私用」のアドレスが中心
時事通信によると、緊急連絡用のため大半は私用携帯などのアドレスとみられ、栃木や埼玉などでは所属先の情報も登録されていました。栃木県警では職名と携帯電話番号も含まれます。「どこの警察署の誰か」とメールアドレスが結び付くと、本人を狙った偽の業務連絡や、警察官をかたる詐欺に使われるおそれがあります。各府県警は、報道の時点で不正利用は確認されていないとしています。
防犯メールに登録した住民の情報も
職員とは別に、市民や企業向けの防犯情報の配信を同社に任せていた府県警が4つあります。時事通信によると、島根や山口などで、個人名やアドレス計約1万6000人分と、企業・法人分2,600件が登録されていました。京都と福岡は、職員用と防犯用の両方を使っていました。
山口県警は、特殊詐欺のおそれがあるときに金融機関へ一斉に注意を呼びかける連絡を同社に任せており、tysテレビ山口によると、県内に支店を置く金融機関の名前や電話・FAX番号が漏れた可能性があります。個人を特定できる情報は含まれていないとしています。
なお、当サイトが10月21日夜に、人数が報じられた府県警を中心とする15府県警と警視庁・警察庁の公式サイトのトップページを確認したところ、この件のお知らせは見当たりませんでした。府県警の説明は、主に報道機関への取材を通じて出ています。

なぜ警察の情報が民間の会社に?委託先からの漏えいは自治体で9割近く
大地震などのときに、警察は職員がどこにいて、すぐ出勤できるかを一斉に確かめる必要があります。自前でサーバーや電話回線を用意するより、自治体の防災メールで実績のあるクラウドサービスを使うほうが導入しやすいと考えられます。アルカディアのサービスも、もともとは住民に防災情報を届けるためのもので、日本経済新聞によるとSpeeCAN RAIDENは9月末時点で875自治体が利用していました。
その結果、1つの会社のシステムに、全国の自治体の住民の連絡先と、多くの府県警の職員の連絡先が集まることになりました。総務省によると、14日夕方の時点で全国111の自治体などから情報漏えいのおそれなどの報告がありました(MBS)。1か所が破られると被害が一気に広がるのが、共通のクラウドサービスの弱点です。
個人情報保護委員会の統計で見る「委託先から」の漏えい
府県警は都道府県の機関で、個人情報保護法では「行政機関等」として扱われます。個人情報保護法66条は、行政機関等に安全管理の措置を義務づけ、委託を受けた会社にも同じ義務を課しています。68条は、漏えいのおそれが大きい事態が起きたとき、個人情報保護委員会への報告と本人への通知を求めています。
個人情報保護委員会の年次報告には、委員会に報告された漏えい等が「どこから漏れたか(報告者自身・委託先・不明)」と「原因」の組み合わせで載っています。地方公共団体等の「不正アクセス」の件数を抜き出しました。
| 年度 | 自らの システム |
委託先 | 不明 | 委託先の割合 |
|---|---|---|---|---|
| 2023年度 | 5件 | 7件 | 3件 | 46.7% |
| 2024年度 | 7件 | 113件 | 8件 | 88.3% |
| 2025年度 | 9件 | 196件 | 21件 | 86.7% |
個人情報保護委員会 年次報告(令和5〜7年度)の付表「漏えい等元及び漏えい等原因」のうち、地方公共団体等・不正アクセスの行。年度は4月〜翌3月。割合は当サイトの計算です。
自治体などの不正アクセスによる漏えいは、2023年度の15件から2025年度は226件に増え、そのうち委託先から漏れたものが2024年度は88.3%、2025年度は86.7%でした。同じ統計で民間企業の場合は2025年度26.1%なので、役所の不正アクセス被害は、ほとんどが委託先を通じて起きていることになります。役所は自前のシステムを持たず、業務を外部に任せることが多いためとみられます。
今回のアルカディアの件は2026年度の出来事で、まだこの統計には入っていません。同社が個人情報保護委員会への代行報告を準備していることから、来年の年次報告では委託先経由の件数に大きく表れる可能性があります。
情報が流出したかもしれない人はどうすればいい?警視庁の対策
警視庁は10月21日、「個人情報漏えい 犯罪被害事例と被害防止対策」を公開しました。時事通信によると、同庁には10月15日までの1か月で600件以上の相談が寄せられ、特に10月上旬は約450件と突出していました。都民向けの資料は、「知らない間に自分の個人情報が漏えいしている」ことを前提に注意するよう求めています。
- 警察をかたる電話を疑う:資料には、警察官などを装って「あなたの流出した情報で被害者が出ています」と言い、キャッシュカードや通帳をだまし取る手口が想定例として載っています。資料は、電話やSNSでお金の話をされたら詐欺だとして、警察署などに相談するよう求めています。
- 詐欺電話をブロックする:携帯電話には「警察庁推奨アプリ」を入れ、固定電話は国際電話不取扱受付センター(0120-210-364)に申し込むと、国際電話を使った詐欺電話を防げます。
- メールのリンクを開かない:アルカディアのシステムからはカード会社を装う詐欺メールが送られました。不安をあおるメールやSMSのリンクは押さず、公式アプリやブックマークから確かめます。
- パスワードを使い回さない:今回はパスワードの漏えいは発表されていませんが、メールアドレスが分かると他のサービスへの不正ログインが試されやすくなります。
防災メールの登録者は自治体のお知らせも確認
アルカディアの防災メールを使う自治体の多くは、登録者に不審なメールへの注意を呼びかけ、一部は配信を止めたり再開したりしています。自分の住む市町村の防災メールが同社のサービスかどうかは、市町村のホームページのお知らせで確かめるのが確実です。
報道(X)
日本経済新聞は10月21日、アルカディアへの不正アクセスで22府県警の個人情報が流出した可能性があると伝えました。石川テレビも同日、石川県警の職員約2000人分が対象になったと報じています。府県別の人数は、本文で報道ごとに出典を示して整理しています。
22府県警で個人情報流出か アルカディアの不正アクセス問題https://t.co/oPNFSTZCXv
— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) October 21, 2026
石川県警の職員 約2000人分の個人情報が流出か 「アルカディア」に不正アクセスの問題で #FNNプライムオンライン #石川テレビ https://t.co/SWHkzUiFm7
— 石川県内のニュースを石川さんがお届け! (@ishikawa_tvnews) October 21, 2026
アルカディアの不正アクセスと警察の情報流出、よくある質問
Q. アルカディアとはどんな会社ですか?
A. 大阪府箕面市のIT企業で、1993年設立です。災害情報をメールや電話、防災行政無線などに一斉配信する「SpeeCAN RAIDEN」や、消防向けのサービスを、自治体や官公庁2,000件以上に提供しています。
Q. 警察官の個人情報はどのくらい流出しましたか?
A. 警察庁によると、職員の安否確認システムを同社に任せていた20府県警で、警察官・職員約12万5000人分の氏名やメールアドレスなどが流出した可能性があります(10月21日時点)。防犯メールの登録者を含めると影響は22府県警に及びます。
Q. どこの府県警が対象ですか?
A. 警察庁は一覧を公表していません。報道で人数が分かるのは、神奈川(約1万6000人)、愛知(約1万5000人)、埼玉・兵庫(各約1万3000人)、福岡(約1万1000人)、広島、岡山、栃木、群馬、香川、宮崎、鹿児島、石川の13府県警で、合計約9万4200人です。
Q. 捜査情報は漏れていますか?
A. 警察庁は、捜査情報の流出は確認されていないとしています。漏れた可能性があるのは、災害時の安否確認に使う職員の氏名、所属、メールアドレスなどです。
Q. 一般の人の情報も含まれていますか?
A. 含まれています。4府県警が防犯情報の配信を同社に任せており、個人名やアドレス計約1万6000人分と、企業・法人分2,600件が登録されていました(時事通信)。また、同社の防災メールを使う自治体の登録者の情報も、最大約313万6000件のメールアドレスが漏れた可能性があります。
Q. 不正アクセスの原因は何ですか?
A. 同社の発表では、添付ファイルを公開するサーバーに内部のファイルを読み出せる欠陥があり、設定ファイルから盗まれた「シークレットキー」を使ってアカウントへの総当たり攻撃が行われました。その後、システムに裏口(バックドア)が仕掛けられ、13日未明に詐欺メール142万通余りが送信されました。
あわせて読みたい
出典・参考資料
- 株式会社アルカディア:不正アクセスに伴う一連の対応について、弊社サービスへの不正アクセスに伴う一連の対応について(第1〜18報、10月21日19時30分更新)、不正アクセスの経過と当社の対処について(10月19日、PDF)、会社概要
- 個人情報保護委員会:年次報告(令和7年度ほか)、個人情報の保護に関する法律(e-Gov法令検索)
- 警視庁:個人情報漏えい「犯罪被害事例と被害防止対策(都民・事業者向け)」(10月21日)
- 時事通信「警官・職員12.5万人分情報流出か」(10月21日)、時事通信「想定被害事例をHPで公開」(10月21日)、日本経済新聞(共同)「22府県警で個人情報流出か」(10月21日)、日本経済新聞「メアドなど320万件漏洩か」、MBSニュース(10月15日)
- 府県別の人数:毎日新聞(神奈川)、朝日新聞(愛知・福岡・栃木ほか)、時事通信(埼玉)、中日新聞(兵庫)、山陽新聞(岡山)、テレビ新広島、FNN(群馬)、アスキー(香川)、NHK(宮崎)、MBC(鹿児島)、中日新聞(石川)、tysテレビ山口
府県別の合計・割合、個人情報保護委員会の統計の割合は当サイトの集計で、公式の統計ではありません。写真:アイキャッチ=神奈川県警察本部、xezna/Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0)、本文=Nkmr844/Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)。トリミング・縮小・文字入れあり。


コメント