動物|イノシシ・豚熱
千葉・鴨川で野生イノシシの豚熱|本州で最後の陽性ゼロ県だった
千葉県は2026年10月11日、鴨川市で捕獲された野生イノシシ2頭から、豚やイノシシの病気「豚熱(CSF)」の感染を確認したと発表しました。千葉県内の野生イノシシで豚熱が見つかったのは初めてです。国の集計を見ると、2018年に岐阜県で始まった野生イノシシの感染は本州のほぼ全域に広がっていましたが、千葉だけは8年間陽性がゼロのままでした。
この記事の結論
- 鴨川市で10月6日と8日に捕獲された野生イノシシ2頭(成獣の雄と雌)が、10月10日に豚熱と確定しました。千葉県内の野生イノシシでは初めてです。
- 農林水産省の集計(2026年8月26日時点)では、2018年9月以降、全国46都府県で188,660頭を調べて10,464頭が陽性。陽性ゼロは千葉・大分・沖縄の3県だけで、本州では千葉が唯一でした。
- 千葉県が公表している検査一覧を1頭ずつ数えると、2018年9月から2026年8月までの3,102頭がすべて陰性。鴨川市は249頭で、市町村別では4番目に多く調べられていた場所です。
- 千葉県は豚の飼養頭数が全国4位(699,400頭)、養豚農家の数は全国3位です。2025年3月には旭市の養豚場で県内初の豚熱が出ましたが、国の調査では茨城県から入れた子豚が感染源とみられ、県内の野生イノシシは陰性のままでした。
- 豚熱は人には感染せず、豚肉を食べても影響はありません。山や畑に入る人は、靴の泥を山で落とす、死んだイノシシを見つけたら触らずに自治体へ連絡する、といった協力が求められています。
鴨川市で何があった?野生イノシシ2頭が豚熱と確定
千葉県の発表によると、経過は次のとおりです。
- 10月6日鴨川市で成獣の雄1頭を捕獲県が続けている野生イノシシの豚熱検査(サーベイランス)の対象として検査へ。
- 10月8日鴨川市で成獣の雌1頭を捕獲2頭とも死んで見つかった個体ではなく、捕獲された個体です。
- 10月9日県の西部家畜保健衛生所の遺伝子検査で陽性この時点では「疑い」の扱い。
- 10月10日国の研究機関で豚熱と確定農研機構 動物衛生研究部門の遺伝子検査で確定しました。
- 10月11日千葉県が発表捕獲地点から半径10キロを「感染確認区域」としました。
千葉県がこれからすること
- 捕獲地点から半径10キロ以内の養豚農場で、豚に異状がないか、野生動物の侵入を防ぐ対策が守られているかを確認
- 県内すべての豚・イノシシの飼い主に、侵入防止・消毒の徹底・ワクチンの適切な接種・異状があったときの早期通報を呼びかけ
- 捕獲地点の周辺で、死んだイノシシや捕獲したイノシシの検査を強化し、イノシシ用の経口ワクチンをまく計画をつくる
県は報道機関に対しても、イノシシの捕獲場所や養豚場での取材はウイルスを広げるおそれがあるとして控えるよう求めています。
千葉は本州で唯一の「陽性ゼロ県」だった
野生イノシシの豚熱は、2018年9月に岐阜県で確認されて以来、各地に広がってきました。農林水産省が公表している都府県別の検査状況(2026年8月26日時点)から、2018年9月以降の累計を並べます。
| 都府県 | 陽性 | 検査 | 陽性率 |
|---|---|---|---|
| 岐阜県 | 1,744頭 | 18,804頭 | 9.3% |
| 三重県 | 1,580頭 | 26,075頭 | 6.1% |
| 静岡県 | 661頭 | 20,345頭 | 3.2% |
| 茨城県 | 567頭 | 8,030頭 | 7.1% |
| 群馬県 | 511頭 | 7,891頭 | 6.5% |
| 千葉県 | 0頭 | 2,986頭 | 0.0% |
| 大分県 | 0頭 | 2,480頭 | 0.0% |
| 沖縄県 | 0頭 | 1,203頭 | 0.0% |
| 全国(46都府県) | 10,464頭 | 188,660頭 | 5.5% |
上5行は陽性数が多い順。北海道は表に含まれていません。
検査対象の46都府県のうち、陽性が出ていたのは43都府県。陽性ゼロは千葉・大分・沖縄の3県だけで、本州に限れば千葉が唯一でした。今回の確認で、本州の都府県はすべて野生イノシシの感染が確認されたことになります。
千葉のまわりでは感染が続いていた
同じ資料の「直近6か月(2026年2月27日〜8月26日)」の数字を見ると、千葉と接する都県では陽性が出続けていました。
| 都県 | 陽性 | 検査 | 陽性率 |
|---|---|---|---|
| 茨城県 | 108頭 | 738頭 | 14.6% |
| 埼玉県 | 11頭 | 494頭 | 2.2% |
| 東京都 | 2頭 | 55頭 | 3.6% |
| 神奈川県 | 8頭 | 166頭 | 4.8% |
| 千葉県 | 0頭 | 160頭 | 0.0% |
とくに茨城県は6か月で108頭が陽性でした。一方、今回見つかった鴨川市は、利根川をはさんで茨城と接する県北部ではなく、房総半島の南東部です。感染がどこから来たのかについて、県の発表は触れていません。
千葉県の8年間の検査3,102頭を数えた
千葉県は野生イノシシの豚熱検査状況として、検査した1頭ずつの捕獲日・市町村・死亡か捕獲か・結果を年度別のPDFで公開しています。全8ファイルを集計しました。
| 年度 | 検査した頭数 | 陽性 |
|---|---|---|
| 2018年9月〜2020年3月 | 85頭 | 0頭 |
| 2020年度 | 79頭 | 0頭 |
| 2021年度 | 78頭 | 0頭 |
| 2022年度 | 281頭 | 0頭 |
| 2023年度 | 920頭 | 0頭 |
| 2024年度 | 732頭 | 0頭 |
| 2025年度 | 709頭 | 0頭 |
| 2026年度(8月17日捕獲分まで) | 218頭 | 0頭 |
| 合計 | 3,102頭 | 0頭 |
千葉県「野生イノシシの豚熱検査状況」(2026年8月20日時点、No.1〜3102)から集計。農林水産省の8月26日時点の集計では千葉県は2,986頭で、数え方の違いにより県の一覧と一致しません。
2022年度から検査が大きく増え、2023年度は920頭を調べています。3,102頭のうち死んでいた個体は65頭だけで、ほとんどは有害鳥獣として捕獲されたイノシシです。
どこで調べていた?市町村別の上位
| 市町村 | 検査した頭数 |
|---|---|
| 1. 富津市 | 668頭 |
| 2. 山武市 | 507頭 |
| 3. 佐倉市 | 433頭 |
| 4. 鴨川市 | 249頭 |
| 5. 長南町 | 236頭 |
| 6. 印西市 | 183頭 |
鴨川市は249頭で4番目。そのうち158頭は2025年度に調べたもので、直近まで監視が続いていた場所です。それでも8月までは陽性が出ていなかったことになります。
なぜ心配?千葉は豚の飼養頭数が全国4位
農林水産省の畜産統計(2026年2月1日現在)で、豚の飼養頭数の多い都道府県を並べます。
| 順位 | 飼養頭数 | 飼養戸数 |
|---|---|---|
| 1. 鹿児島 | 1,115,000頭 | 363戸 |
| 2. 北海道 | 752,400頭 | 160戸 |
| 3. 宮崎 | 733,500頭 | 246戸 |
| 4. 千葉 | 699,400頭 | 219戸 |
| 5. 群馬 | 577,700頭 | 145戸 |
| 全国 | 8,756,000頭 | 2,880戸 |
千葉県の豚は699,400頭で全国の約8%。養豚農家は219戸で、鹿児島・宮崎に次ぐ全国3位です。野生イノシシの感染が広がると、農場の周りにウイルスがいる状態になり、豚への感染の危険が高まります。
2025年の旭市の発生は「県外から来た子豚」が原因とみられた
千葉県では2025年3月31日、旭市の養豚場で県内初の豚熱が確認され、5,537頭が殺処分されました(国内97例目)。農林水産省の疫学調査では、この農場は茨城県城里町の系列繁殖農場から子豚を入れており、発生の5日前に入れた子豚が感染源だった可能性が高いとされています。
つまりこれまでの千葉の豚熱は、ウイルスが県外から豚と一緒に入ってきた例でした。今回は県内の山野にウイルスがいることが初めて確かめられた点で、意味が違います。千葉県は2019年12月から豚へのワクチン接種を進める地域に指定されており、県内の豚はワクチンを打っていますが、県は改めて適切な時期の接種を呼びかけています。
2026年から変わった「選択的殺処分」
2026年5月の家畜伝染病予防法の改正で、豚熱が出た農場の豚を全部処分する決まりが見直されました。農林水産省の資料によると、ワクチンで免疫ができていて症状のない豚は処分の対象から外し、免疫のない豚や陽性の豚などに絞って処分します。7月の静岡県富士宮市の農場が最初の適用例で、10月10日には群馬県渋川市の養豚場でも豚熱が確認され、選択的殺処分が行われると報じられています。
豚熱は人にうつる?豚肉は食べて大丈夫?
千葉県と農林水産省は、次のように説明しています。
- 豚熱は豚とイノシシの病気で、人には感染しません。
- 感染した豚の肉が市場に出回ることはありません。仮に感染した豚の肉や内臓を食べても、人体に影響はありません。
- 農場で発生したときに豚の移動を止めるのは、ウイルスがほかの農場へ運ばれるのを防ぐためで、食品の安全のための措置ではありません。
名前が似ている「アフリカ豚熱(ASF)」は、原因のウイルスが異なる別の病気です。国は海外からの持ち込みを警戒しています。
山や畑に入る人ができること
ウイルスは感染したイノシシのふんなどから土にも広がり、靴や車のタイヤについて運ばれるおそれがあります。農林水産省は登山者・キャンパー・狩猟者向けの呼びかけで、次の4つを挙げています。
山林に入る人へのお願い(農林水産省)
- ウイルスは土にも含まれるので、靴の泥は山で落とす
- イノシシを呼び寄せないよう、食べ物やごみは捨てずに持ち帰る
- 山に入った後は、家畜がいる施設に近寄らない
- 死んだイノシシを見つけたら、触らずに管轄の自治体へ連絡する
狩猟をする人には、別の山へ移るとき・山を降りるとき・途中で店に立ち寄るときに、靴や車、道具を洗って消毒することも求められています。感染確認区域となった鴨川市の周辺で山や畑に入るときは、とくに気をつけたいところです。
千葉の豚熱イノシシのよくある質問
Q. 千葉県で豚熱のイノシシが見つかったのはどこですか?
A. 鴨川市です。2026年10月6日に成獣の雄、8日に成獣の雌が捕獲され、10月10日に豚熱と確定しました。千葉県内の野生イノシシで豚熱が確認されたのは初めてです。県は捕獲地点から半径10キロを感染確認区域としました。
Q. 千葉県ではこれまで野生イノシシの豚熱は出ていなかったのですか?
A. 出ていませんでした。千葉県の検査一覧では、2018年9月から2026年8月までに3,102頭を調べてすべて陰性です。農林水産省の8月26日時点の集計でも、陽性ゼロは千葉・大分・沖縄の3県だけで、本州では千葉が唯一でした。
Q. 豚熱は人に感染しますか?
A. 感染しません。豚熱は豚とイノシシの病気です。感染した豚の肉が市場に出回ることはなく、仮に食べても人体に影響はないと千葉県は説明しています。
Q. 豚熱とアフリカ豚熱は同じ病気ですか?
A. 別の病気です。豚熱(CSF)は2018年から国内で発生が続いており、多くの地域で豚にワクチンを接種しています。アフリカ豚熱(ASF)は原因のウイルスが異なる別の病気で、国は海外からの侵入を警戒しています。
Q. 千葉県の養豚場に影響はありますか?
A. 県は捕獲地点から半径10キロ以内の養豚農場で異状の有無を確認しています。千葉県の豚の飼養頭数は699,400頭で全国4位と多く、野生イノシシの感染が広がると農場への感染の危険が高まるため、侵入防止や消毒、ワクチンの適切な接種が呼びかけられています。
Q. 死んだイノシシを見つけたらどうすればいいですか?
A. 触らずに、見つけた場所の市町村や県に連絡してください。農林水産省は、山に入る人に対して、靴の泥を山で落とす、食べ物やごみを持ち帰る、家畜がいる施設に近寄らないことも呼びかけています。
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出典・参考資料
- 千葉県 畜産課:野生イノシシにおける豚熱の確認について(2026年10月11日)/野生イノシシの豚熱検査状況/豚熱について~県民の方々へ~
- 千葉県:本県初となる豚熱の患畜の発生について(2025年3月31日)
- 農林水産省:野生イノシシに対する豚熱の検査情報(豚熱陽性イノシシ発見地点 令和8年8月26日時点)/豚熱 国内における発生状況
- 農林水産省:豚熱93〜99例目調査報告・疫学検討結果/選択的殺処分の基本的な考え方/野生イノシシにおける豚熱対策
- 農林水産省:畜産統計(令和8年2月1日現在)
数値は2026年10月12日時点で公表されていたものです。アイキャッチの写真:Yasuo Hamashima/Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)「Sus scrofa Inoshishi Gummma-ken Japan」。
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