MINIMUM WAGE 2026
47都道府県の試算一覧と「いつから」
2026年度の最低賃金は全国平均1,176円へ、過去2番目の55円引き上げとなる見込みです。ただし「10月1日から全国一律で上がる」わけではありません。昨年度に10月1日から発効したのは栃木県だけで、最も遅い秋田県は年をまたいだ3月31日でした。47都道府県の試算額、発効日のズレ、そして同時に語られる「106万円の壁」の本当の期限まで、公的資料の数字だけで整理します。
この記事のポイント(3行サマリー)
- 2026年度の引き上げ目安はAランク54円・Bランク56円・Cランク56円。目安どおりなら全国加重平均は1,176円(+55円、4.9%)になります。
- 発効日は全国一律ではありません。2025年度に10月1日から発効したのは栃木県のみで、秋田県は2026年3月31日発効でした。自分の県の発効日を確認する必要があります。
- 「2026年10月に106万円の壁が撤廃される」という説明が広まっていますが、厚生労働省は撤廃時期を「公布から3年以内で、全国の最低賃金が1,016円以上となることを見極めて判断」としており、日付は決まっていません。
1. 2026年度の最低賃金は全国平均1,176円へ
2026年7月28日、厚生労働省の第75回中央最低賃金審議会が、今年度の地域別最低賃金の引き上げ「目安」をまとめました。内容は次のとおりです。
目安どおりの全国加重平均
1,176円
現行は1,121円
引き上げ額
+55円
昨年度は+66円
引き上げ率
4.9%
昨年度は6.3%
都道府県は経済実態に応じてA・B・Cの3ランクに分けられ、ランクごとに目安額が示されます。2026年度の目安はAランク54円、Bランク56円、Cランク56円。現在Aランクは6都府県、Bランクは28道府県、Cランクは13県です。
| ランク | 都道府県 | 目安額 |
|---|---|---|
| A(6) | 埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪 | 54円 |
| B(28) | 北海道、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡 | 56円 |
| C(13) | 青森、岩手、秋田、山形、鳥取、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄 | 56円 |
今年の特徴①:地方が都市部を上回る「逆転」の目安
注目すべきは、BランクとCランクの目安がAランクを2円上回っている点です。通常は経済力の強いAランクの引き上げ額が大きくなりますが、今年度は地域間格差の縮小が意識されました。この目安どおりに改定されれば、最も高い東京都と最も低い県との差は203円から201円へ縮小します。
今年の特徴②:金額で労使の意見がまとまらなかった
もうひとつ見逃せないのが、答申の文言です。中央最低賃金審議会の答申には「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安については、その金額に関し意見の一致をみるに至らなかった」と明記されています。つまり労働者側と使用者側の合意が成立せず、公益委員の見解として金額が示された形です。それだけ賃上げ余力をめぐる労使の溝が深かったことを示しています。
そもそも「目安」とは何か
- 目安制度は昭和53年度から続く仕組みで、地域別最低賃金の全国的な整合性を図るために中央最低賃金審議会が毎年示すものです。
- 目安は地方最低賃金審議会を拘束しません。実際の金額は各都道府県の地方最低賃金審議会が審議して答申し、都道府県労働局長が決定します。
- 最低賃金は①労働者の生計費②労働者の賃金③通常の事業の賃金支払能力――の3要素を考慮して決められます。
2. 【47都道府県別】目安どおりならいくらになるか
読者が最も知りたいのは「自分の県はいくらになるのか」でしょう。そこで、現行額(2025年度)にランク別の目安額を足した試算を47都道府県分作成しました。実際の金額は各地方最低賃金審議会の答申で決まるため確定値ではありませんが、下限の目安として使えます。
この表の見方
- 現行額=2025年度(令和7年度)の地域別最低賃金。厚生労働省公表の全国一覧から引用しています。
- 試算額=現行額+ランク別の目安額(A54円/B56円/C56円)。筆者による試算で、確定額ではありません。
- 現行の発効日=2025年度の改定額が実際に有効になった日。翌年の発効日を予想する手がかりになります。
| 都道府県 | ランク | 現行額 | 試算額 | 目安 | 現行額の発効日 |
|---|---|---|---|---|---|
| 北海道 | B | 1,075円 | 1,131円 | +56円 | 2025年10月4日 |
| 青森県 | C | 1,029円 | 1,085円 | +56円 | 2025年11月21日 |
| 岩手県 | C | 1,031円 | 1,087円 | +56円 | 2025年12月1日 |
| 宮城県 | B | 1,038円 | 1,094円 | +56円 | 2025年10月4日 |
| 秋田県 | C | 1,031円 | 1,087円 | +56円 | 2026年3月31日 |
| 山形県 | C | 1,032円 | 1,088円 | +56円 | 2025年12月23日 |
| 福島県 | B | 1,033円 | 1,089円 | +56円 | 2026年1月1日 |
| 茨城県 | B | 1,074円 | 1,130円 | +56円 | 2025年10月12日 |
| 栃木県 | B | 1,068円 | 1,124円 | +56円 | 2025年10月1日 |
| 群馬県 | B | 1,063円 | 1,119円 | +56円 | 2026年3月1日 |
| 埼玉県 | A | 1,141円 | 1,195円 | +54円 | 2025年11月1日 |
| 千葉県 | A | 1,140円 | 1,194円 | +54円 | 2025年10月3日 |
| 東京都 | A | 1,226円 | 1,280円 | +54円 | 2025年10月3日 |
| 神奈川県 | A | 1,225円 | 1,279円 | +54円 | 2025年10月4日 |
| 新潟県 | B | 1,050円 | 1,106円 | +56円 | 2025年10月2日 |
| 富山県 | B | 1,062円 | 1,118円 | +56円 | 2025年10月12日 |
| 石川県 | B | 1,054円 | 1,110円 | +56円 | 2025年10月8日 |
| 福井県 | B | 1,053円 | 1,109円 | +56円 | 2025年10月8日 |
| 山梨県 | B | 1,052円 | 1,108円 | +56円 | 2025年12月1日 |
| 長野県 | B | 1,061円 | 1,117円 | +56円 | 2025年10月3日 |
| 岐阜県 | B | 1,065円 | 1,121円 | +56円 | 2025年10月18日 |
| 静岡県 | B | 1,097円 | 1,153円 | +56円 | 2025年11月1日 |
| 愛知県 | A | 1,140円 | 1,194円 | +54円 | 2025年10月18日 |
| 三重県 | B | 1,087円 | 1,143円 | +56円 | 2025年11月21日 |
| 滋賀県 | B | 1,080円 | 1,136円 | +56円 | 2025年10月5日 |
| 京都府 | B | 1,122円 | 1,178円 | +56円 | 2025年11月21日 |
| 大阪府 | A | 1,177円 | 1,231円 | +54円 | 2025年10月16日 |
| 兵庫県 | B | 1,116円 | 1,172円 | +56円 | 2025年10月4日 |
| 奈良県 | B | 1,051円 | 1,107円 | +56円 | 2025年11月16日 |
| 和歌山県 | B | 1,045円 | 1,101円 | +56円 | 2025年11月1日 |
| 鳥取県 | C | 1,030円 | 1,086円 | +56円 | 2025年10月4日 |
| 島根県 | B | 1,033円 | 1,089円 | +56円 | 2025年11月17日 |
| 岡山県 | B | 1,047円 | 1,103円 | +56円 | 2025年12月1日 |
| 広島県 | B | 1,085円 | 1,141円 | +56円 | 2025年11月1日 |
| 山口県 | B | 1,043円 | 1,099円 | +56円 | 2025年10月16日 |
| 徳島県 | B | 1,046円 | 1,102円 | +56円 | 2026年1月1日 |
| 香川県 | B | 1,036円 | 1,092円 | +56円 | 2025年10月18日 |
| 愛媛県 | B | 1,033円 | 1,089円 | +56円 | 2025年12月1日 |
| 高知県 | C | 1,023円 | 1,079円 | +56円 | 2025年12月1日 |
| 福岡県 | B | 1,057円 | 1,113円 | +56円 | 2025年11月16日 |
| 佐賀県 | C | 1,030円 | 1,086円 | +56円 | 2025年11月21日 |
| 長崎県 | C | 1,031円 | 1,087円 | +56円 | 2025年12月1日 |
| 熊本県 | C | 1,034円 | 1,090円 | +56円 | 2026年1月1日 |
| 大分県 | C | 1,035円 | 1,091円 | +56円 | 2026年1月1日 |
| 宮崎県 | C | 1,023円 | 1,079円 | +56円 | 2025年11月16日 |
| 鹿児島県 | C | 1,026円 | 1,082円 | +56円 | 2025年11月1日 |
| 沖縄県 | C | 1,023円 | 1,079円 | +56円 | 2025年12月1日 |
| 全国加重平均 | – | 1,121円 | 1,176円 | +55円 | – |
試算の答え合わせ:東京都はぴったり一致した
この試算がどの程度使えるのか、すでに答申が出た県で確かめてみましょう。東京地方最低賃金審議会は2026年8月5日、時給1,280円とする答申を行いました。現行1,226円+目安54円=1,280円ですから、試算とぴったり一致しています。Aランクの都市部については、この表の数字がほぼそのまま最終額になると考えてよさそうです。
一方で、地方は事情が異なります。次章で見るように、BランクとCランクでは目安を上回る答申が続出するのが近年のパターンだからです。
3. 地方は目安どおりに終わらない:昨年度は47都道府県中39県が上振れ
ここが本記事の核心のひとつです。2025年度(令和7年度)の実績を、厚生労働省の全国一覧から筆者が集計しました。当時の目安はAランク63円、Bランク63円、Cランク64円でしたが、実際の改定額は次のようになりました。
| ランク | 県数 | 目安を上回った県 | 最大の上振れ |
|---|---|---|---|
| Aランク | 6 | 1県 | 千葉県 +1円 |
| Bランク | 28 | 25県 | 福島県・群馬県 +15円 |
| Cランク | 13 | 13県(全県) | 熊本県 +18円 |
| 合計 | 47 | 39県 | – |
結果は明快です。47都道府県のうち39県が目安を上回り、目安どおりに収まったのはわずか8都府県(埼玉・東京・神奈川・長野・静岡・愛知・滋賀・大阪)でした。とくにCランクは13県すべてが目安超えで、熊本県は目安64円に対して82円、大分県は81円、秋田県は80円と、目安を15〜18円上回る答申が並びました。
2026年度の予測に使えるパターン
- A(都市部)は目安どおり:昨年度は6都府県中5つが目安ちょうど。今年も東京都が目安どおりの1,280円で答申されています。
- B・C(地方)は上振れしやすい:昨年度はBで25/28県、Cで13/13県が目安超え。前章の試算額は「最低ライン」と考えるのが現実的です。
- 背景には、人手不足で実際の求人時給が最低賃金を大きく上回っている地域が多く、地方審議会が「最低賃金が実態に追いついていない」と判断しやすい事情があります。
4. 最大の落とし穴:「10月1日から」は正しくない
ニュースでは「新しい最低賃金は10月から」と報じられますが、これは正確ではありません。発効日は都道府県ごとにバラバラです。2025年度の実績を集計すると、次のようになります。
| 発効時期 | 県数 | 備考 |
|---|---|---|
| 2025年10月中 | 20県 | うち10月1日は栃木県のみ |
| 2025年11月中 | 13県 | – |
| 2025年12月中 | 8県 | – |
| 2026年1月 | 4県 | 福島・徳島・熊本・大分 |
| 2026年3月 | 2県 | 群馬(3月1日)・秋田(3月31日) |
つまり2025年度は、10月1日ちょうどに新しい額が有効になったのは栃木県だけでした。最も遅い秋田県は2026年3月31日。東京都(2025年10月3日)と比べると、ほぼ半年の差があったことになります。
なぜこれほどズレるのか
地域別最低賃金は、地方最低賃金審議会の答申を受けて都道府県労働局長が決定・公示し、そこから一定の期間を置いて発効します。答申の時期は地域によって異なり、さらに公示後には異議申出の期間が設けられます。加えて、引き上げ幅が大きい年は、中小企業が支払い体制を整える時間を確保するために発効日を後ろへ倒す判断がされやすくなります。実際、2025年度に発効が年明けにずれ込んだ6県のうち5県(福島78円、群馬78円、秋田80円、大分81円、熊本82円)は引き上げ額が特に大きい県でした。
働く側・雇う側が確認すべきこと
- 自分の県の発効日は都道府県労働局のサイトで確認を。「◯◯労働局 最低賃金」で検索すれば、答申額と発効日が公表されています。
- 発効日より前に新額を支払う義務はありませんが、発効日以降は1円でも下回れば違法です(最低賃金法違反には罰則があります)。
- 2025年度に発効が遅かった県は、2026年度も遅くなる傾向があります。前章の表の「現行額の発効日」を目安にしてください。
5. 「106万円の壁が2026年10月に撤廃」は本当か
最低賃金の話題とセットで語られるのが「年収の壁」です。ネット上には「2026年10月に106万円の壁が撤廃される」という説明があふれていますが、公的資料を読むと、この書き方は正確ではありません。
厚生労働省の説明はこうなっている
2025年6月に成立した年金制度改正法により、短時間労働者が社会保険に加入する要件のうち「賃金が月額8.8万円(年収106万円相当)以上」という賃金要件は撤廃されることが決まりました。ここまでは事実です。問題は時期で、厚生労働省は次のように説明しています。
厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」より
- 「撤廃の時期は、法律の公布から3年以内で、全国の最低賃金が1,016円以上となることを見極めて判断します(最低賃金1,016円以上の地域で週20時間以上働くと、年額換算で約106万円となります。)」
つまり施行日は政令で定めることになっており、まだ確定していません。法律の公布から3年以内なので、遅くとも2028年前半までには実施されますが、「2026年10月」と決まった事実はないのです。
ではなぜ2026年10月という日付が広まったのか。同じ改正法で2026年10月1日に施行されるのは、加入拡大の対象になった人の保険料負担を軽減できる支援措置(労使折半を超えて事業主が負担した保険料を制度的に支援する仕組み)です。これが賃金要件の撤廃と混同されたとみられます。
撤廃の「条件」はすでに満たされている
ここで最低賃金の話とつながります。撤廃の判断基準である「全国の最低賃金が1,016円以上」という条件は、すでにクリア済みです。2025年度の改定で最も低い高知県・宮崎県・沖縄県でも1,023円となり、47都道府県すべてが1,016円を上回りました。
ただし前章のとおり発効日はバラバラで、最後の秋田県が1,031円になったのは2026年3月31日。厳密に言えば「全国のすべての地域で最低賃金が1,016円以上になった日」は2026年3月31日だったことになります。2026年度の目安どおりに改定されれば最低額は高知県・宮崎県・沖縄県の1,079円まで上がり、条件はさらに余裕をもって満たされます。あとは政令が日付を決めるだけ、という段階です。
加入拡大のスケジュール全体像
賃金要件の撤廃以外にも、社会保険の加入対象は10年かけて段階的に広がります。厚生労働省の資料をもとに整理しました。
- 2025年6月13日年金制度改正法が成立(衆議院で修正のうえ可決)
- 2026年10月1日加入拡大の対象になる短時間労働者への保険料負担の支援措置が施行
- 時期未定(公布から3年以内)賃金要件(月8.8万円)の撤廃=いわゆる106万円の壁。最低賃金の状況を見極めて政令で決定
- 2027年10月企業規模要件の縮小:従業員36〜50人の企業が対象に
- 2029年10月従業員21〜35人の企業が対象に/常時5人以上の個人事業所が全業種で適用対象に
- 2032年10月従業員11〜20人の企業が対象に
- 2035年10月従業員1〜10人の企業が対象に(企業規模要件が完全撤廃)
最終的に残る要件は「週の所定労働時間が20時間以上」(学生は対象外)です。壁が消えるのではなく、「106万円の壁」から「週20時間の壁」へ引っ越すと理解するのが正確です。判定基準が年収から労働時間に変わるため、時給が上がっても加入義務は発生し続けます。
6. 時給が上がると「働ける時間」が減るという逆説
最低賃金の上昇は、扶養の範囲内で働きたい人にとっては働ける時間の減少を意味します。106万円に達するまでの労働時間を計算してみましょう。
全国平均1,176円 → 1,060,000 ÷ 1,176 = 約901時間
東京都1,280円 → 1,060,000 ÷ 1,280 = 約828時間
全国平均で見ると、時給が55円上がることで働ける時間は年間45時間減る計算です。週あたりにすればおよそ52分。1日8時間勤務なら年間で5〜6日分のシフトが消えることになります。東京都で働く人はさらに厳しく、946時間から828時間へと年118時間も縮みます。
そもそも「金額の壁」は時給の上昇が先に壊した
もうひとつ、重要な事実があります。週20時間×52週で働いた場合の年収を計算すると、次のようになります。
東京都1,280円 → 約133.1万円
最も低い試算額1,079円(高知・宮崎・沖縄) → 約112.2万円
つまりどの都道府県でも、週20時間働けば年収は106万円を超えます。だからこそ厚生労働省は「最低賃金1,016円以上の地域で週20時間以上働くと年額換算で約106万円になる」ことを撤廃の判断基準に置いたのです。金額の壁は、法改正を待つ前に時給の上昇が先に無効化していた――これが2026年の実像です。
残る壁と、なくならない壁
- 130万円の壁は残ります。従業員数の少ない企業などで社会保険の加入対象外の場合、年収130万円以上になると配偶者の扶養から外れて自分で国民年金・国民健康保険に加入することになります。
- 税の壁(所得税・住民税)は「崖」ではなく「坂」です。超えた分に段階的に課税されるため、社会保険の壁のように手取りが急落することはありません。
- 社会保険に加入すること自体は不利ばかりではありません。厚生年金は将来の年金が増え、傷病手当金や出産手当金といった健康保険の給付も受けられるようになります。
7. 自分の賃金が最低賃金を下回っていないか確認する方法
最低賃金は正社員・パート・アルバイト・派遣を問わず、地域内のすべての労働者に適用されます。仮に最低賃金より低い賃金を労使の合意で定めても、その定めは法律により無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとみなされます。つまり差額を請求できます。
時給への換算方法
厚生労働省が示す確認方法は次のとおりです。
| 賃金の形態 | 比較の仕方 |
|---|---|
| 時間給制 | 時間給 ≧ 最低賃金額(時間額) |
| 日給制 | 日給 ÷ 1日の所定労働時間 ≧ 最低賃金額 |
| 月給制 | 月給 ÷ 1か月平均所定労働時間 ≧ 最低賃金額 |
| 出来高払制・歩合制 | 賃金総額 ÷ その期間の総労働時間 ≧ 最低賃金額 |
計算に含めてはいけない手当がある
ここが間違えやすいポイントです。すべての手当を足して割ってはいけません。厚生労働省の例では、通勤手当や時間外手当は最低賃金の計算から除外され、職務手当は除外されないとされています。除外されるのは主に次のものです。
最低賃金の計算から除外される賃金
- 精皆勤手当、通勤手当、家族手当
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
- 時間外労働・休日労働・深夜労働に対する割増賃金
厚生労働省が示す計算例で確かめてみましょう。月給制で基本給15万円、職務手当3万円、通勤手当5,000円、その月の時間外手当が3万5,000円で総支給22万円、年間所定労働日数250日・1日8時間、県の最低賃金が1,000円というケースです。
(180,000円 × 12か月)÷(250日 × 8時間)= 1,080円 > 1,000円 → 最低賃金以上
もし計算して下回っていた場合は、都道府県労働局または最寄りの労働基準監督署に相談してください。派遣で働いている場合は、派遣元ではなく派遣先の事業場が所在する都道府県の最低賃金が適用される点にも注意が必要です。
8. まとめ:確認すべきは「金額」より「発効日」
2026年度の最低賃金は、目安どおりなら全国加重平均1,176円(+55円・4.9%)。地方のBランク・Cランクは目安を上回る答申が出やすいため、本記事の試算表は最低ラインとして読むのが実践的です。
そして最も誤解されているのが「いつから」です。2025年度に10月1日から発効したのは栃木県だけで、秋田県は2026年3月31日でした。ニュースの「10月から」を自分の県に当てはめないこと――これが働く側にとっても雇う側にとっても最も実害の出やすいポイントです。
「106万円の壁」についても同じことが言えます。撤廃は決まっていますが日付は未定で、2026年10月に施行されるのは保険料負担の支援措置のほうです。一方で、撤廃の条件である「全国の最低賃金1,016円以上」はすでに満たされ、週20時間働けばどの県でも年収は106万円を超える状態になりました。壁は消えるのではなく、金額から労働時間へ引っ越す。この構造を理解しておけば、秋以降の報道に振り回されずに済むはずです。
よくある質問(FAQ)
Q. 2026年度の最低賃金はいくらになりますか?
A. 目安どおりに改定された場合、全国加重平均で1,176円(現行1,121円から+55円、4.9%の引き上げ)になります。都道府県ごとの引き上げ目安はAランク54円、Bランク56円、Cランク56円で、自分の県の試算額は本記事の一覧表で確認できます。実際の金額は各地方最低賃金審議会の答申で決まります。
Q. 新しい最低賃金は10月1日から適用されますか?
A. 全国一律ではありません。2025年度は10月1日から発効したのは栃木県のみで、10月中の発効が20県、11月が13県、12月が8県、年明けが6県でした。最も遅い秋田県は2026年3月31日発効です。自分の県の発効日は都道府県労働局の公表資料で確認してください。
Q. 目安より高い金額になることはありますか?
A. よくあります。2025年度は47都道府県のうち39県が目安を上回りました。とくにCランク13県はすべてが目安超えで、熊本県は目安64円に対して82円の引き上げでした。一方、東京都や大阪府などAランクは目安どおりに決まる傾向があります。
Q. 106万円の壁は2026年10月に撤廃されるのですか?
A. 撤廃されること自体は決まっていますが、時期は確定していません。厚生労働省は「法律の公布から3年以内で、全国の最低賃金が1,016円以上となることを見極めて判断する」と説明しており、施行日は政令で定められます。2026年10月1日に施行されるのは、加入拡大の対象者の保険料負担を軽減する支援措置のほうです。
Q. 賃金要件が撤廃されたら何が基準になりますか?
A. 「週の所定労働時間が20時間以上」(学生は対象外)が主な基準になります。企業規模要件も2027年10月から2035年10月にかけて段階的に撤廃されるため、最終的には週20時間以上働けば勤め先の規模にかかわらず社会保険に加入することになります。年収ではなく労働時間で判定される仕組みへの転換です。
Q. 自分の給料が最低賃金を下回っていたらどうすればいいですか?
A. 最低賃金を下回る賃金の定めは法律により無効となり、最低賃金額と同額の定めをしたものとみなされるため、差額を請求できます。まず月給を1か月平均所定労働時間で割って時給換算し、通勤手当・家族手当・精皆勤手当・賞与・割増賃金を除いて比較してください。下回っていた場合は都道府県労働局または労働基準監督署に相談しましょう。
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参考・出典
- 厚生労働省:令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について(2026年7月28日)
- 厚生労働省:報道発表資料(目安はAランク54円、Bランク56円、Cランク56円)[PDF]
- 中央最低賃金審議会:令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)[PDF]
- 厚生労働省:地域別最低賃金の全国一覧(令和7年度の額・発効日)
- 厚生労働省:最低賃金制度と目安制度の概要[PDF]
- 厚生労働省:最低賃金額以上かどうかを確認する方法
- 厚生労働省:社会保険の加入対象の拡大について(賃金要件の撤廃時期)
- 厚生労働省:年金制度改正法が成立しました
- 都道府県別の試算額(現行額+ランク別目安額)および2025年度の目安超過・発効日の集計は、上記の公表資料をもとに筆者が作成
※本記事は2026年8月24日時点で公表されている資料をもとに作成しています。都道府県別の試算額は目安に基づく筆者の試算であり、確定額ではありません。実際の地域別最低賃金額および発効日は、各地方最低賃金審議会の答申を経て都道府県労働局長が決定・公示します。最新の情報は厚生労働省および各都道府県労働局の公表資料をご確認ください。


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