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バイナンス1兆円流出の手口|6月の侵入から偽の採用面接まで時系列
結論
- バイナンスは11月3日の報告書で、約63億4,000万ドル(約1兆円)の流出は単発の侵入ではなく、6月から段階的に進んだ攻撃だったと説明しました。
- 入り口は2つです。6月にAIコーディングツールを入れるつもりで落とした改ざん版Homebrew、9月に偽の採用面接で渡された課題コードでした。そこから社内AIツールを足がかりに、10月29日に署名サービスへ到達したとされます。
- 採用試験を装う手口は、2024年のDMM Bitcoin事件(約482億円)で警察庁などが公表した内容とよく似ています。対象は取引所の社員に限らず、仕事を探すエンジニアにも関係します。
金額と件数はバイナンスの報告書を伝えた報道によります。報告書の原文は当サイトでは確認できていません。
6月から10月29日までの時系列
| 時期 | 起きたこと | ポイント |
|---|---|---|
| 6月 | ウォレットの開発運用を担当するエンジニアが、人気のAIコーディングツールを入れようと検索し、改ざんされたHomebrewをダウンロード | バイナンスは検知して端末を交換し認証情報を更新。ただし本人とチームの役割は攻撃者に知られた状態に |
| 9月 | 別のエンジニアに、求人サイトでプロジェクトディレクターを名乗る人物が接触。人事担当者、架空企業のCEOと面接が続く | CEO面接の終盤に、課題のコードを業務用PCへ落とすよう指示された。マルウェア入りだが当時の端末向け製品では検知されず |
| 10月20日 | 攻撃者が社内AIツールを足がかりに、ウォレット部門のエンジニア2人の端末を制御 | 1台目の侵害が、別の人の端末へ広がった段階 |
| 10月29日 | 社内のウォレット署名サービスへ不正にアクセスし、資産を流出させた | 1人目から盗んだ認証情報を、2人目の端末から使ったとNBCが報道 |
時系列はCoinPostとNBC Newsの報道を合わせたものです。日付はバイナンスの報告書の表記で、流出の開始は日本時間では10月30日早朝にあたります(当サイトの解説)。
報道で表現が違う点
6月の入り口を、CoinPostとCNBCは検索で見つけた改ざん版と伝え、NBCはコーディングツールの広告がきっかけと伝えています。補填率も、Fox Businessは約90%、CNBCは98%と差があります。CNBCは報告書が公表された11月3日付で「影響資産の98%を補填」としており、時点の違いの可能性があります。
2024年のDMM Bitcoin事件とどこが同じか
| 比べる点 | DMM Bitcoin(2024年) | バイナンス(2026年) |
|---|---|---|
| 被害額 | 約482億円 | 約63億4,000万ドル(約1兆円) |
| 当局の見方 | 警察庁・FBI・DC3が連名でTraderTraitorと特定 | FBIがTraderTraitorと特定。北朝鮮は否定(NBC) |
| 近づき方 | SNSで企業幹部などを装い、技術者に接触 | 求人サイトで採用関係者を装って接触 |
| 実行させたもの | GitHub上の「動かないプログラム」の不具合調査など | 面接の課題として渡されたコード一式 |
| その後 | 認証情報やセッションクッキーを盗み、本人になりすます | 社内AIツールを足がかりに同僚の端末、署名サービスへ |
DMM Bitcoinの列は警察庁・NISC・金融庁の注意喚起が示す手口例とFBIの発表をもとにした整理です。同じグループが同じ型を2年後も使っていることになります(比較は当サイトによるものです)。
新しいのは「社内AIツール」
面接を装う部分は以前からある手口です。今回新しいのは、侵入後に社内のAIツールが足がかりになった点です。CNBCによると、バイナンスは侵害されたウォレット基盤と社内AIツールを作り直しました。AIツールに広い権限を持たせている会社には、同じ確認が必要になります(当サイトの見方)。
エンジニアと転職中の人が確認したいこと
- 採用課題のコードを業務用PCで動かしません。9月の事例は業務用PCで実行されました。私物PCでも、隔離した環境の外では動かさないのが安全です(当サイトからの一般的な案内です)。
- 開発ツールは公式サイトの手順で入れます。検索結果や広告のリンクを信じません。Homebrewの公式はbrew.shです。
- 相手の実在を別ルートで確かめます。警察庁の注意喚起は、SNSで接触されたらビデオ通話を求めることを挙げています。ただしバイナンスの事例では面接まで進んでおり、通話だけでは安心できません。会社の公式サイトや代表窓口から確認してください(当サイトの見方)。
- 「不具合を直して」「課題を解いて」に注意します。警察庁の公表資料は、不具合調査を頼むプログラムの実行を手口例に挙げています。
- 触ってしまったら、すぐ会社に報告します。認証情報とトークンの無効化、端末の交換は、バイナンスも実施した対応です。
バイナンスの利用者への影響
CNBCによると、バイナンスは顧客の損失を全額補償するとしており、準備金から影響資産の98%を補填しました。バイナンスやテザー、サークル、リップルなどにより約30億ドルが凍結されたとも報じられています。
CoinPostによると、バイナンスは11月3日、出金の再開を広げ、時間あたりの入金が出金を上回ったと発表しました。11月1日午後3時以降の純流出は52億7,600万ドルです。
便乗詐欺に注意
大きな事件のあとは「返金手続き」「出金再開の確認」をうたう偽サイトや偽メールが出やすくなります。リンクは開かず、公式アプリか公式サイトから確認してください(当サイトからの一般的な案内です)。
暗号資産の売買を勧める内容ではありません。
バイナンスの手口のよくある質問
Q. バイナンスのハッキングはどう始まりましたか。
A. 報道によると、6月にエンジニアが改ざんされたHomebrewを入れたのが始まりで、9月には別のエンジニアが偽の採用面接で渡されたコードを業務用PCに入れました。
Q. 流出額はいくらですか。
A. 約63億4,000万ドル、円で約1兆円と報じられています。過去最大とされてきた2025年のBybit事件(約15億ドル)を上回ります。
Q. 犯人は誰とされていますか。
A. FBIは北朝鮮のサイバー攻撃グループTraderTraitorによるものと特定しました。NBCによると北朝鮮は否定しています。
Q. 日本の利用者の資産はどうなりますか。
A. Binance Japanは事件当初、国内の顧客資産への影響は確認されていないと発表しました。詳しくは当サイトの事件解説をご覧ください。
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出典・参考資料
- CoinPost:バイナンスが明かす、1兆円流出の手口に偽の採用面接
- CNBC(2026年11月3日)/NBC News/Fox Business/The National
- 警察庁:TraderTraitorによる暗号資産関連事業者を標的としたサイバー攻撃について(2024年12月24日)
- FBI:DMM Bitcoinからの窃取についての発表(英語)
バイナンスの報告書の原文は確認できておらず、報告書の内容は上記の報道に基づきます。アイキャッチ写真:Simon Hattinga Verschure/Wikimedia Commons(CC0)。明るさ調整・文字入れあり。


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